日本人が「絶滅」する前に…「30代以下の若者だけが住む都市」をつくるという「大胆提案」
日本人が「絶滅」する前に…「30代以下の若者だけが住む都市」をつくるという「大胆提案」
人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。
100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。
※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです。また、本書は2021年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。
「ユースシティ構想」の最大の目的
私は『未来の地図帳』(講談社現代新書)において、各地に人口を集積させた「王国」を建設するよう提言したが、30代以下の若者たちの「王国」づくりもまた、日本を救う切り札となるかもしれない。第3の切り札は、「30代以下のみが住む都市」の建設だ。
人口規模は、5万~10万人程度を想定している。こうした「ユースシティ(Youth city)」を全国に数ヵ所建設するのである。
総人口に占める若い世代の割合が年々少なくなっていくからこそ、若い世代は塊をつくることで存在感をアップする必要がある。若者を散り散りにしてはならない。
ユースシティ構想の最大の目的は、若い世代が「社会の老化」の波に呑み込まれないようにすることにある。いわば、超高齢社会における「出島」である。といっても、住民をここに缶詰めにしようということではない。ユースシティの外との往来は自由である。対象外の年齢の人が訪問するのも支障はない。住民の年齢に上限を設けるだけである。
ユースシティは、30代以下限定の都市なので、40歳の誕生日を迎えたら引っ越して出ていかなければならない。そこで、どこかの地方自治体をユースシティとして作り変えるのではなく、多くの民間企業の共同出資による運営会社を設立して建設し、運営管理もその運営会社が担う形とする。
民有地に建つ"民間物件"となるので、入居者に条件をつけても問題は生じない。40歳になったら退居を要請するので原則として賃貸とし、個別契約で年齢制限を設けることとする。企業が社宅のような形で補助することを想定している。
建設地は人里離れた広大な原野に一から建設することは想定していない。また、新たな自治体を作ろうということでもないので、既存の地方自治体の上に、民間の運営によるユースシティが覆いかぶさるように広がる様子を想像してもらいたい。場合によっては、複数の自治体にまたがることもあるだろう。
多摩ニュータウンなどをイメージすれば分かりやすいかもしれない。さまざまな行政サービスは、所在する地方自治体に任せる。既存のニュータウンと異なるのは、住民の年齢に制限があり、将来にわたって「オールドタウン」にはならないことだ。
立地としては、大阪市や名古屋市、福岡市といった政令指定都市の一角でもよい。そうした大都市の近郊で中心市街地にアクセスがよいところも選択肢になりうる。候補地を勝手に想定するならば、東京圏は相模原市や町田市、つくば市あたりだろうか。大阪圏は京田辺市や三田市あたり、名古屋圏ならば一宮市や長久手市といったところが思い浮かぶ。もちろんこれら以外にも魅力的なエリアはいくつもある。
「コネクティッド・シティ」の要素を加味する
ユースシティで生み出されるさまざまなアイデアやイノベーションの芽、文化、ブームといったものが停滞する日本の起爆剤や起死回生策となるだろう。
中高年の入居を認めないので、新型コロナウイルスのような感染症が再び蔓延することになったとしても、ユースシティ内にいる限りは、行動の制限をそれほど受けることにはならないだろう。感染症に対する"シェルター"の役割を果たすことにもなる。
感染症は今後も幾度となく日本を襲うことが予想される。そのたびに若い世代の行動に制限がかかったのでは、日本社会の衰退は早まるばかりだ。
ポイントは、単に集まり住むだけでなく、住民同士のコミュニケーションが進むよう交流の場を仕掛け、機会を設けることである。
すでに個々の企業レベルでは、異業種が集まって多くの大企業の若手・中堅有志社員が業種の垣根を越えて草の根の活動として交流する「ONE JAPAN」のような組織も登場している。いくつかの企業が共同で社宅を運営して人脈の拡大を図る事例も見られるが、これを「都市」として大規模に行おうということだ。
時おり集まるのでなく、アクティブな年齢層が生活をともにすることになれば、日本社会に与えるインパクトは桁違いに大きくなる。若い世代が寄り集まるので、独身者にとっては生涯の伴侶が見つかることになるかもしれない。
出資する企業のメリットも大きい。若手社員が異分野の若手と交流する場として活用できるだけでなく、若い世代の消費動向やニーズに関するデータを収集することが可能となる。トヨタ自動車が、静岡県裾野市にあらゆるモノやサービスがつながる実証都市「コネクティッド・シティ」(Woven City)の建設を進めているが、各社の新商品や新製品を使ったハイテクな実験都市としての要素が加味されたならば、イノベーションは進みやすくなり、新たなカルチャーの発信基地となる。新たな成長産業も生まれよう。
若い世代が集まっているので、ユースシティに進出する店舗は多いだろう。子供の数も他エリアと比べれば多くなるので、子供向けのサービスや商品を扱う企業も多くなるだろう。医療機関も産科や小児科が進出しよう。アンテナショップの出店も想定される。
中高年の「しがらみ」に縛られないために
ユースシティに暮らす人は、原則、ユースシティ内で仕事をする。テレワークで本社などとつながって仕事をするのでもよい。出資する企業が30代以下だけのサテライトオフィスを設ける形でもよい。一方、リアル店舗や子供が通う学校の教員などは、できる限り30代以下が望ましいが、難しい業種もあるので年齢制限は設けないこととする。
人口減少社会においてユースシティが求められるのは、一般的に大勢で競い合ったほうが才能は磨かれやすいからだ。少子化の影響で年々若い世代が減っていくと、それがままならなくなるからだ。どの業種や企業も優秀な若者を確保しようと囲い込みに走るため、さらに若い世代は分散することになる。これではあらゆる分野で層が薄くなってしまう。
ただでさえ他国に比べて若い世代の比率が低いのに、中高年の「理屈」を押し付けられ、「しがらみ」に縛り付けられたのでは、せっかくの"若さ"が台無しとなる。
若い世代らしいアイデアは、若者同士で自由闊達に意見交換をしたり、率直な考えをぶつけ合ったりすることの中でこそ生まれる。さまざまな分野の若い世代が仕事だけでなく、趣味やプライベートで人間関係を築くこととなれば、彼らが中高年になって以降の大きな人脈、財産ともなるだろう。
つづく「日本人はこのまま絶滅するのか…2030年に地方から百貨店や銀行が消える「衝撃の未来」」では、多くの人がまだまだ知らない「人口減少」がもたらす大きな影響を掘り下げる。