「初めまして! 徳仁です」 天皇陛下のオックスフォード時代はパブで気さくに、自転車通学も
国賓として英国を訪問している天皇、皇后両陛下は28日、それぞれが留学していたオックスフォード大学を訪問された。皇室番組の放送作家のつげのり子氏によると、天皇陛下が雅子さまとの訪問を強く望まれていたオックスフォードは、お気に入りのパブに通い、テニスを楽しみ、「いち留学生」としての自由な時間を過ごした思い出深い場所なのだという。
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「遠くない将来、同じオックスフォード大学で学んだ雅子とともに、イギリスの地を再び訪れることができることを願っている」
英国での留学経験をまとめた天皇陛下の著書『テムズとともに――英国の二年間』が、2023年に学習院創立150周年の記念事業の一環として新装復刊された際、陛下が「復刊に寄せて」につづった言葉だ。
天皇陛下はオックスフォード大のマートン・カレッジに、雅子さまはベイリオル・カレッジにそれぞれ留学経験がある。今回の訪英で帰国の途につく前に、それぞれの地を訪れ、陛下の「願い」が実現したのだった。
皇室番組の放送作家、つげのり子氏は言う。
「留学していた時期は異なりますが、だからこそ逆に、それぞれの思い出話で盛り上がるのではないでしょうか。当時、陛下がオックスフォード大学に自転車で通学していた小径もまだ残っているそうです。昔の路地が残る大学付近の街をおふたりで歩かれたら、懐かしい思い出にひたることができることでしょう」
■パブで「徳仁です!」
つげ氏は、天皇陛下と同時期にオックスフォード大に留学していた日本人男性に、当時の様子を取材したことがある。
男性によると、オックスフォード郊外にある老舗パブに行くと、留学中の陛下が店内にいらっしゃった。視線を向けると目が合ったので、緊張しながら近づいて自己紹介すると、
「初めまして! 徳仁です」
と、気さくにあいさつを返してくれたのだという。
「陛下は同じテーブルに誘ってくださり、どんな勉強をしているかなど、ざっくばらんに気さくにお話ししてくださったそうです。900年以上の歴史がある『ザ・トラウト・イン』というパブで、陛下はそのお店の雰囲気がお好きだったそうで、その時はウイスキーをお飲みになり、よくいらしていたそうです」
大学構内のテニスコートで一緒にテニスをしたときも、陛下は周囲の仲間たちを気遣い、気さくな様子だった。
陛下はボールがコートの外に出るたびに何度も小走りで拾いに行き、何事もなかったように笑顔を見せていたという。
■プリンスは珍しくない
留学当時の映像には、天皇陛下が自転車に乗って通学したり、クレジットカードで買い物したりする様子が収められている。陛下は「いち留学生」として、普通の生活を過ごされていたようだ。
というのも、オックスフォード大には他にも“プリンス”たちが通っていたからだと、つげ氏は説明する
「日本人の感覚ですと、大学構内を陛下が歩いていらっしゃったら『日本のプリンスだ!』と大騒ぎになるのではないかと思ってしまうのですが、同じ時期に中東の国の王子やヨーロッパの王族の子弟も留学しているなど、“プリンス”と呼ばれるような立場の人は珍しいことではなかったそうです。
だから陛下も騒がれることなく、ひとりの留学生として過ごすことができて、自由な空気の中で青春を謳歌できたのではないかと思います」
天皇陛下と雅子さまとは、留学していた時期が5年ほど異なるが、それぞれが見ていた街並みや風景について語り合い、そして帰国されてからは愛子さまも交えて思い出話に花が咲くことだろう。
(AERA dot.編集部・太田裕子)
つげのり子/放送作家、ノンフィクション作家。2001年の愛子さまご誕生以来皇室番組に携わり、テレビ東京・BSテレ東で放送中の「皇室の窓」で構成を担当。皇室研究をライフワークとしている。日本放送作家協会、日本脚本家連盟会員。著書に『天皇家250年の血脈』(KADOKAWA)、『素顔の美智子さま』『素顔の雅子さま』『佳子さまの素顔』(河出書房新社)、『女帝のいた時代』(自由国民社)、構成に『天皇陛下のプロポーズ』(小学館、著者・織田和雄)がある。