論点がズレる人とはどう会話をすればいい? 中野信子が回答する“対処の5パターン”
みなさまのお悩みに、脳科学者の中野信子さんがお答えする連載「あなたのお悩み、脳が解決できるかも?」。今回は、「会社での先輩の行動」という難題に、中野さんが脳科学の観点から回答します。(全3回の1回目。 #2 、 #3 を読む)
中野信子さん ©文藝春秋
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Q いつも論点がズレる人とはどう会話をすればいいのでしょうか─39歳女性・会社員(自動車メーカー)からの相談
――職場の同僚の中にいつも話がかみ合わない、論点がズレる人がいます。イラッとするので話をするのを避けてきたのですが、中野さんと兼近大樹さんとの共著(『笑いのある世界に生まれたということ』)を読んで、それはその人のせいではなく、その人と私は違う“山”の住人だから話が通じなくても仕方がないのだと腑に落ちました。
ただ私は管理職になり、その人が直属の部下になるため、話がかみ合わないでは済まされなくなってしまいました。論点がズレる人とは、どうしたら会話が成り立つようになるでしょうか。
おっしゃることがとてもよく分かるように思います。というのも、私の場合はそれが自分の家庭内で起きていることで、ずっと見ないようにしてきたとはいえ、この先ずっとこのままでいいのかと悶々とする時も定期的にやってくるのです。
閑話休題。私の話ではなくあなたのお話でしたね。同僚の方とどのように話がかみ合わないのか、ご相談の文面から点と点をこちらで勝手につないで推測するしかなく、もしかしたら私の推測にズレを感じてイラッとされてしまうのではないかと若干緊張もします。そこで、いくつか話がかみ合わない、ズレる相手のパターンを提示し、それぞれの対処法を考えてみたいと思います。
察してちゃんには、いつでも逃げられる態勢を整えてから発動
(1)言葉尻をとらえて論破しにかかってくる(論破系)
このタイプは余裕のあるときならよき手合わせ相手として楽しいのですが、さすがに毎日となるとウザいですよね。この際、「はい論破!」と言って皆から疎まれるイヤミ課長(木下ほうか演)の写真をその人のデスクにこっそり置いて、自覚を促してやりましょう。
(2)こちらの言っていることを奪って自分語りをしてくる(自分語り系)
同僚の方はこのタイプではないだろうと思いつつも一応記しておきます。世間にはこういう人も一定数いますね。私は面倒なので「今はあなたの話を聞く時間ではないのですが」とはっきり伝えることにしています。これで100%黙ってくれます。上司によるハラスメントだと言われないよう、念のためやり取りを記録しておくほうがよいかもしれません。
(3)腹の底に言いたいことがあるのに自分からは言わず、こちらが察してあげるまで外堀を巡り続ける(察して系)
“察してちゃん”は本当にキモいですよね。このタイプについても私の個人的な対処法で恐縮ですが、「察して」の裏側にある、本人がひた隠しにしている欲求を晒してあげると一撃で黙ります。この方法は逆恨みされるかもしれないので、使い時を吟味して、いつでも逃げられる態勢を整えてから発動するようにしてください。
早とちりタイプは、あなたのよき右腕になってくれるかも
(4)そもそも理解力が不足気味で仕事にならない(能力不足系)
このタイプが最も厄介ですね。人柄としては悪い人ではないのでしょう。もしも相手がこのタイプに該当するのであれば、あなたがカサンドラ症候群のような状態に悩まされてしまう恐れがあります。カサンドラ症候群とは、コミュニケーションをとるのが難しい相手の近くにいる人が心身に不調を来してしまうことをいいます。真面目で責任感があって面倒見がよく忍耐強い人ほど、この落とし穴にはまってしまいます。
その人の能力が水準に達していないなら、責任を取るべきは本来、その人を採用した人事にあるはずなのですが、そうも言えない……と真面目な人は飲み込んでしまうと思います。でも本当にあなたのせいではないし、残念ながら大人になってからは身長を伸ばすことができないのと似て、今から高い理解力を身につけさせることはできない、つまり相手の方は絶対に変わらないので、あなたにはできる限りうっすい関係をつくる努力をしてほしいと思います。たとえ部下であっても、テキトーな関係をチャラく構築することができたとき、この問題から卒業できるのではないでしょうか。
(5)僅かな手がかりからあれこれ察し過ぎて自爆する(早とちり系)
このタイプは、使い方さえ間違えなければ、実は超仕事のできる人でもあります。ちょっと面倒ではありますが、情報を小出しにすると早とちりしてマイウェイを行ってしまいますから、一気にすべてを明かして指示しなければなりません。それさえうまくできれば、この人は必ずあなたのよき右腕となってくれますよ。
ご健闘をお祈りいたします!!
text:Atsuko Komine
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〈 「2児の母」「3児の父」という単語にモヤモヤ…プロフィールに“子どもの数”は必要か 〉へ続く
(中野 信子/週刊文春WOMAN 2024春号)