「ドイツ人」と「フランス人」が見た目にビビった「日本食」の「意外な正体」
増加するインバウンドと「コト消費」
人気観光地では、外国人観光客が引きも切らない。2024年に入って、4月までの4か月で日本に訪れた訪日外国人客数はすでに1000万人を超えている。JTBは昨年12月に2024年の年間旅行動向の見通しを過去最高の3310万人になると発表しているが、順当にいけば過去最高は達成されるだろう。
政府は2030年までに訪日外国人旅行者数6000万人、消費額15兆円を目指しており、現在のインバウンド需要の盛り上がりを見るかぎり十分実現可能な数字のように思えるが、その一方で、インバウンド需要に追い付かず、オーバーツーリズムに苦しむ観光地のニュースもたびたび目にする。増えすぎた観光客をどうするか、その対策は急務だ。2024年の観光庁の予算は前年度比1.6倍となり、また地方自治体でもインバウンド対策を強化する動きが各地で見られる。
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また、宿泊業界や飲食業界でもインバウンド受け入れは進んでいる。観光庁の調査を見ると、訪日外国人旅行客の2023年の旅行消費額は過去最高の5兆3065億円を記録している。内訳を見ると、最も多いのが宿泊費の34.6%、次いで買い物代が26.4%、そして飲食費の22.6%が続く。コロナ禍前の2019年と比較して、買い物代は減少しているが、宿泊費と飲食費は増加している。一時期は来日した中国人観光客の「爆買い」が流行語大賞に選ばれるほどであったが、今インバウンド消費は爆買いの「モノ」消費から、体験を重視する「コト」消費にシフトしているようだ。
注目の日本食YouTubeチャンネル「Momoka Japan」
さまざまな体験の中でも、日本での魅力的な食体験を求め、食べることを旅のメインに据えて日本を訪れる観光客も多い。それを見込んで訪日外国人旅行客の取り込みに意欲を見せる飲食店は増加傾向にあり、今ではSNSでの情報発信が集客に欠かせないツールとなっている。中でも注目を集めているのが、日本食YouTubeチャンネル「Momoka Japan」だ。道行く外国人観光客や在日外国人に日本食を体験してもらう同チャンネルは、2024年6月現在、チャンネル登録者数88万人を超える人気ぶりを見せている。
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「Momoka Japan」の魅力は、何といっても自然体のやりとりにある。チャンネルを運営するMomokaさんは、仕込みも台本もない一発撮りをモットーとしており、インタビュイーである外国人の素直なリアクションが視聴者の共感を呼んでいる。日本食初体験の外国人観光客がその味に感動する様子は、日本人視聴者の目から見て新鮮であり、日本人にとっては当たり前だった日本食の魅力を再発見する機会にもなっている。動画コメント欄には「あなたの番組で何度も涙が溢れてしまった」「MomokaさんのYouTubeを毎回楽しみに拝見しています」といった動画を楽しみにする声も見られ、固定ファンも多い。
この記事では、600本以上ある「Momoka Japan」の動画の中から、347万回以上も再生された人気動画「初来日!初めての日本食に観光客が大感激!」を紹介する。
この動画でMomokaさんのインタビューを受けたのは、今回初めて来日して、この日は2日目の滞在だというドイツ出身のビクターさんと、フランス出身のルナさん。これまでに食べた日本食はラーメンにそば、そしておにぎりだけだというふたりを、Momokaさんは「居酒屋 肴とり」に案内した。
「マグロ」以外の魚の多様さに驚き
まずは、初めてだという日本のビールで乾杯。ビール大国ドイツ出身のビクターさんの評価はまずまずで、「日本のビールいける」と笑顔。そして、おつまみのお通しの枝豆、銀杏にと、彼らにとってなじみのない食べ物が並ぶ。銀杏をおそるおそる口に運び、「ほっくほく。ポテトみたいなホクホクさ。こりゃいい」とふたりとも好感触だ。
ふたりとも日本食を一番の楽しみに訪れたそうで、これまでに食べたコンビニのおにぎりにすら感動の様子だ。日本食の期待値が上がっているところに、刺身の盛り合わせが運ばれてきた。まずは、初めて飲む日本酒を一口。ルナさんは「日本酒って甘いのね!」と一言。ビクターさんも日本酒の飲みやすさに驚く。そしていよいよ刺身へ。ビクターさんはマグロを食べて喜色満面で、ルナさんも「ただの魚のはずなのに!」と感動の声を上げる。続いては、ブリだ。マグロの知名度に比べ、ブリを知っている外国人観光客は少ない。ふたりともブリの名前を聞いたのもこれが初めてだそうで、味を吟味しながら無言で味わっていた。
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続いて運ばれてきたうなぎとなすの天ぷらには、「うなぎがこんなにおいしいなんて知らなかった。なすとうなぎがとろける」とビクターさん。ルナさんは言葉こそ少ないが、「このおいしさを下手に食レポするのは野暮」「作った人天才」「無口でごめんね、おいしいと食べることに集中しちゃう」と、目の前の食べ物に夢中な様子が伝わってくる。コメント欄にも、「女性の方が一口ごとに、何かすごく考えながら味わっているのが印象的です。食べているときの目が真剣です。真面目に日本の味を味わってくれている感ありますね」と、ルナさんが食べる様子に感じ入るコメントが見られた。
えびしんじょのれんこんのはさみ揚げを食べたビクターさんは、「こんなの初めて食べた。ふわふわさがオムレツに似てる」と食感が気に入ったようだ。そこにぶりかまが運ばれてくると、魚の頭にビビった様子のふたりは「まだえびしんじょを食べていたい……」と言いつつ、Momokaさんの勧めで挑戦してみる。実際に食べてみればそのおいしさがよくわかったようで、「塩で焼いただけでこのうまさ」「皮の部分も超おいしい」と箸が進んでいるのがわかる。
海の幸を中心とする居酒屋メニューを味わった後、最後のデザートはルナさんも大好きだという抹茶のアイスクリーム。あんこと白玉と一緒に味わう抹茶アイスは絶品のようだ。ビクターさんは「正直、ドイツで食べる日本のスイーツは嫌いだった」と言い、日本で食べるスイーツのまさかのおいしさに驚きの様子を隠せないようだった。この日の食事を振り返りながら、「あなたのおかげで最高の一日だ」「超うれしい」「日本食は奥が深いなあ」と、言葉が尽きなかった。
あまりにも幸せそうに食べるふたりの姿を見て、コメント欄は「『あなたのおかげで最高の一日です』って言われるのが最高に嬉しいですよね」「言葉を失う美味しさを素直なリアクションで感じてくれて嬉しいですね!」「この2人は凄く美味しそうに食べてくれるから別に自分が作った料理でもないのに嬉しくなってしまう」といった視聴者の温かいコメントで溢れていた。
さらに連載記事<カナダ人が「日本のトンカツ」を食べて唖然…震えるほど感動して発した一言>もぜひご覧ください。