毎週「クレジットカード1枚分」のプラスチックが体内に…少しでも減らせる「5つの方法」
熱で溶け出して体内へ
約5g――たった1週間で、人間の体内に入り込むマイクロプラスチック(以下MP)の重さだ。2019年にオーストラリアのニューカッスル大学が行った研究によると、私たちは毎週、クレジットカード1枚に相当するプラスチック粒子を摂取しているという。
ペットボトルやビニール袋、ストローなど、現代社会はプラスチック製品であふれている。至る所で発生したMPやナノプラスチック(MPよりさらに微細なプラスチック。以下NP)が、食べ物や空気、さらには皮膚を通じて体内に侵入しかねない。
しかしちょっとした工夫を凝らすだけで、その量を格段に減らすことができる。脳卒中などの疾患リスクを下げるためにも、今日からすぐに実践できるアイデアを紹介していこう。
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前章からも明らかなように、ペットボトルを買う頻度を減らすのがもっとも近道だろう。東京農工大学教授の高田秀重氏も、その知恵を実践している一人だ。
「もうかれこれ10年くらい、ペットボトル飲料を飲んでいません。会議などで出されても飲まなくていいように、つねにマイボトルに飲み物を入れて持ち歩くようにしています」
また食品を包装するプラスチック容器が劣化すると、MPはもちろん有害な添加剤まで溶け出していく。
「プラスチック容器に入ったお惣菜やお弁当は、時間が経つにつれて中身にMPが混入することが予想されます。加えて脂っこい食べ物は、容器に含まれている化学物質を吸収しやすいという性質がある。
仮に買ったとしても、容器に入れたまま加熱するのは避けたほうがいいでしょう。プラスチックは熱に反応しやすく加熱すると大量のMPが溶け出るので、お店の電子レンジで温めてもらうなどもってのほか。自宅でお皿に移してからチンすると安心です」(高田氏、以下「 」内は同)
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同じくカップ麺の容器も、熱に反応することでスープや麺にMPが混ざりかねない。
「だから私はずいぶん前から、カップ麺を食べるのも控えています。手間はかかりますが、自宅でラーメンを食べたければインスタント麺を鍋で茹でて、どんぶりに入れて食べていますね」
プラスチック容器が使われている食品はリスクが目につきやすいが、意外と見落としがちなのがティーバッグだ。ティーバッグのフィルター部分は紙でできているように見えるものの、ほとんどの商品ではプラスチック製のため、お湯につけると熱でMPが溶け出していく。代わりに茶葉から淹れることで、体内への侵入を防げる。
マスクから吸い込んでいる
食品に含まれるだけでなく、MPやNPは空気中にも漂っている。
「大気汚染の原因として知られるPM2.5とNPは、大きさがそう変わりません。そのため肺に入るとPM2.5と同じく、ぜんそくなど呼吸器疾患を引き起こすことが懸念されています。
たとえば不織布のマスクのフィルターは、ポリプロピレンというプラスチックでできている。綺麗な空気を吸うためにマスクを着けたにもかかわらず、実は直接MPを吸い込んでいたというケースがいくつも報告されています」
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呼吸によって入ってくるMPの中でも高田氏がとりわけ懸念しているのは、洗剤や柔軟剤などに使用されている「マイクロカプセル」だ。
「多くの合成洗剤や柔軟剤はMPでできたカプセルの中に香料を閉じ込めて、衣服に付着させています。それが時間とともに破裂すると、香料が少しずつ飛び出して香りが長続きする仕組みになっている。
しかし同時にカプセルも破裂するので、MPが空気中に飛び散ってしまいます。カプセルが入っていない製品を使うべきでしょう」
ほかにもポリエステルやアクリルなど化学繊維でできた洋服やカーテン、カーペットがこすれたり、空気中の酸素や紫外線によって劣化したりすると、MPやNPが少しずつ空気中に飛散していく。可能な限りこういった素材の製品を避けて、麻や綿のものを選ぶといい。
「MPは屋外でも飛散しているものの、実は屋内のほうが空気中により多く浮遊しているという研究結果があります。そのためPM2.5対策と同じように、空気清浄機を使うのも有効だと考えられますね」
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こういった工夫を実践しプラスチック製品から少し距離をとって暮らしてこそ、自分の体も社会もより「持続可能」になるはずだ。
「週刊現代」2024年6月22日号より
さらに関連記事『ペットボトル飲料が脳卒中、がん、肝硬変などのリスクを高める? その「驚きのメカニズム」』では、MPやNPがおそろしい疾患を引き起こすリスクについて解説している。