新NISA開始3カ月で「実際に」買われた投資信託ベスト30! 毎月の積立金額も発表【生データ入手】
新NISAスタートの今年1〜3月の3カ月間に「買い付け金額」が大きかった投資信託ベスト30を発表。ネット証券5社からのデータ(通常非公開)を得て集計した。
(本記事はアエラ増刊「AERA Money 2024春夏号」から抜粋しています)
新NISAのつみたて投資枠で買える投資信託(以下、投信)は全280本(東証ETF除く/2024年4月25日現在)、成長投資枠で買える投信は1895本(同4月3日現在)もある。
この中から、新NISAスタートから3カ月間にで買い付け金額が多かったのはどれだ?
■1位は全世界株式オルカン
本誌が独自集計した新NISAの人気投信ナンバーワンに君臨したのは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」、通称「オルカン」。
2位は「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」。
5月1日時点の純資産総額(規模)は全世界株式が3兆円超、S&P500はそれを上回る4兆円超だ。
新NISAでは、S&P500よりも幅広く世界全体に投資する全世界株式のほうが人気が高いことがわかった。
3位に「SBI・V・S&P500インデックス・ファンド」。海外ETFの「バンガード・S&P500ETF」を丸ごと1本買う形のインデックス型投信である。
4位と6位に食い込んだのは、楽天投信がeMAXIS Slimシリーズに対抗して(推測)設定した低コストインデックス型投信「楽天・プラス」シリーズの2本。
「楽天・S&P500」は「eMAXIS Slim 米国株式」、「楽天・オールカントリー株式」は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」と中身も運用方法もほぼ同じだ。
楽天証券でしか買えないのにベスト10入りしているところに、同社の販売力の強さを感じる。5位の「楽天・全米株式」はド定番だ。
まず、ネット証券で預かり資産トップのSBI証券の執行役員常務・上原秀信さんに取材した。
「全世界株式やS&P500といった定番人気を除くと『インド』『半導体』といったキーワードが見えてきます。中〜上級者が成長性を見込んで買っているようです」
■15倍になった半導体
22位の「野村世界異業種別投資シリーズ(世界半導体株投資)」は野村アセットマネジメントの運用で、2009年設定と歴史が古い。
信託報酬1.65%(年率、税込み)と高めだが、5月1日現在の基準価額が14万5263円。つまり設定初日に買っていたら分配金を除いても約15倍になっている計算だ。
過去1年、5年、10年とどの期間を見てもS&P500のリターンをはるかに上回っている。ネット証券ではSBI証券のみの取り扱いだが、今後も残高が伸びそう。
編集部注:その後、主要ネット証券では楽天証券でも取り扱いがはじまりました
次に、大人気のeMAXIS Slimシリーズを運用する三菱UFJアセットマネジメントの執行役員・吉田研一さんに話を聞いた。
「年明け初日の2024年1月4日、『eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)』の申し込みが1日で1000億円を超え、社内でも驚きの声が上がりました。
オルカンの1〜2月の買い付け総額は前年同期比で見ても7.2倍。これまでの資金流入は相場の好不調が少なからず影響していましたが、新NISAでは従来とは違う動きが見られます」
■増加率1位は日経平均
日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新したことで、新NISAの資金は日本株のインデックス型投信にも向かっている。
「1〜2月の前年同期比で買い付け額増加率を見ると、当社の1位はeMAXIS Slimシリーズの『日経平均』。8.3倍の348億円です。
2位は『TOPIX』(東証株価指数)で7.8倍。増加率ではオルカン(全世界株式)やS&P500を上回っています」
ランキングでは「iFreeNEXT FANG+インデックス」が8位。米国の精鋭10
銘柄だけを組み入れた投信だ。
3月13日には「一歩先いくUSテック・トップ20インデックス」(米国のテック〈テクノロジー〉株20銘柄にETFを通じて投資)が登場。
3月22日には「米国大型テクノロジー株式ファンド」(マイクロソフト、アップルなど米国株7銘柄のみに投資)も出た。
さらに5月16日には「Tracers S&P500トップ10インデックス(米国株式)」も。こちらはS&P500の採用500銘柄から時価総額上位10銘柄を組み入れ。
いずれも「eMAXIS Slim 米国株式」などよりもハイリターンを狙う人に好まれるが、危機感はあるか? 吉田さんはこうコメントした。
■初心者を導くのは間違い
「より高いリターンを求めると、行き着く先はレバレッジを高めるか、投資先を絞り込んだ集中投資になります。
でも、背負ったリスクに対するリターンはどうかという効率面で考えると、銘柄数は多いほうが望ましい。
過去の高リターンに注目する投資を否定はしません。
ただ、投資初心者をそこに導くのは間違いだと思います」
■不安にさせては本末転倒
一方で、eMAXIS Slimシリーズに対抗した低コスト投信が数多く設定されている。競合他社の追い上げが気になる?
「低コスト投信を乱立させて資金フローを高めたとしても、運用体制が追いついていない、または会社の経営面が揺らいで投資家を不安にさせてしまっては本末転倒です。
eMAXIS Slimシリーズは、低コストでありながら運用面で高いクオリティーを提供することを愚直に実行していきます」
最後に、新NISAの2大人気ネット証券であるSBI証券、楽天証券それぞれの買い付け金額ベスト10も画像で発表しておく。それぞれ自社専売の投資信託がランクインしており、興味深い。
取材・文/向井翔太、中島晶子(AERA編集部)
吉田研一〈よしだ・けんいち〉三菱UFJアセットマネジメント 執行役員。投資信託などを通じた資産運用を一般に根付かせるため奔走してきた。現在は商品マーケティング企画部長も兼務
編集/綾小路麗香、伊藤忍
※『AERA Money 2024春夏号』から抜粋