貯金神話は崩壊する…「人生100年時代」を「投資で」乗り切るために買っておきたい「2つの銘柄」
人生100年時代という長生きリスク
「人生100年時代」と聞いてあなたはどんなイメージを持つでしょうか。
投資やお金の視点から見た場合、健康で資産がある人にとっては人生を謳歌する機会が増加し、さらに海外に資産がある場合は円安が追い風となり、円換算で資産は大きく増えているはずです。
その一方、資産の少ない人にとって長生きするということは、これまで以上にお金を稼ぐことが必要となります。例えば会社員で65歳で退職したとします。この時点で資産がなければ、引退せずに働き続けなければなりません。
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もちろんお金があってもなくても、働くこと自体が生きがいで幸せだという方もいるでしょう。しかし老後に特別なスキルがない人は単純労働をすることになるので、それほど時給も高くない仕事に就くことしかできないでしょう。
こうした状況下に追いやられた場合、無理せず働かないで、生活保護を受給しようと考える人が今後増加することが予想されます。
また投資を一切せずにコツコツと日本円を貯金していた場合、インフレが長期化すると相対的に資産は目減りすることになります。
「人生100年時代」を生きるということは、生きる時間が長くなる分、必要なお金が増加します。そのための対策のひとつとして資産運用することが必須の時代に突入しているのです。
IMFの世界経済見通しが示唆する未来
今年4月に発表されたIMF(国際通貨基金)の世界経済見通しを見ると、日本は2024年+0.9%、2025年+1%の見通しです。ちなみに世界GDPは2024年+3.2%、2025年+3.2%、米国は2024年2.7%、2025年+1.9%、成長著しいインドは2024年+6.8%、2025年6.5%です。
このように世界経済が成長する中、特に先進国に該当する米国、ユーロ圏、日本などの国で比較した場合、やはり米国経済の強さが際立っていることがわかります。
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また新興国やフロンティアと呼ばれる国よりも経済力が小さい低所得の発展途上国の多くは、コロナ禍以降、経済の回復が遅れていることがIMFのデータから見えてきます。
こうした世界経済の動向を把握した上で、どのように投資戦略や資産運用を決めるべきなのか、客観的に考えることが重要であるといえるでしょう。
シンプルに言えば経済成長を続ける国に投資をすることで、資産を効率的に増加させる確率が高くなるのです。
なぜ分散投資をすべきなのか
先述したIMFの世界経済見通しが示唆していることは、米ドル1強時代がしばらく続くことを意味します。日本では今年から新NISAが始まりましたが、特にオールカントリー(全世界株式)やS&P500などのインデックスファンドが人気の投資先となっています。
実際、インデックス投資はほったらかしで資産運用したい方に向いているだけでなく、実は資産運用のプロと呼ばれる人の80%以上は、長期でみればS&P500を上回るパフォーマンスを出せていません。つまり、ほとんどの方はインデックス投資だけで充分といえるでしょう。また日々のマーケット動向を追いかけずに毎月コツコツ投資(ドルコスト平均法)をしたい方にとっても、この投資手法はとても有効です。
とはいえ、ここで忘れてはならない視点があります。
それは10年に1度は「金融危機」がやってくるということです。
ある日突然、金融危機がやってきた場合、短期間でそれまで築いてきた運用資産が半分以上も下落する場合があるのです。いざ金融危機がやってきたときに、多くの投資家はさらなる下落を恐れて「パニック売り」をすることで暴落が大暴落へと拍車をかけます。
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これはあらかじめ投資の知識として暴落の構造を把握していたとしても、いざ暴落の最中にいると冷静に投資の判断をすることがとても難しいことを物語っています。
こうした「パニック売り」を避けるために必要な考え方のひとつに「分散投資」があるのです。
例えばインデックス投資をベースに個別株や金などの現物資産に投資をする、米国のインデックス投資に日本のインデックス投資を組み合わせる、資産の一部を景気に左右されにくい公共サービスや生活インフラを提供する会社の株に投資をするなど、いくつかの投資方法があります。
このように目先の資産の増大だけでなく、金融危機がやってきた場合でも投資家自身のメンタルを安定させるようなポートフォリオの構築が投資を継続する上でとても重要です。
そのため、あらかじめ分散投資を検討することが投資家としてのリスクヘッジにつながるはずです。
新興国、フロンティアに対する考え方
ここまで米国経済の強さや分散投資の重要性について解説してきましたが、分散投資をする際に参考になる投資の考え方に「コア・サテライト戦略」があります。
これはポートフォリオのコア(守り)とサテライト(攻め)を組み入れて構成することで、リスクを分散する投資手法です。割合の目安としてはコア70ー80%、サテライト20ー30%ぐらいが一般的な目安となるでしょう。
例えばポートフォリオのコア部分にオールカントリー、S&P500のどちらかを組み入れたとします。この場合、サテライトに個別株や新興国、フロンティアと呼ばれる国々に投資をしても面白いでしょう。
なぜなら、直近のIMFの世界経済見通しが示しているように、新興国と発展途上国の経済成長は2024年+4.2%、2025年+4.2%とインドには及ばないものの、高い経済成長を続けています。
また分散投資の観点から、一国への投資ではなく、経済の見通しが明るい国々にまとめて投資をした方がリスクヘッジにもつながります。
そのためETFや投資信託を利用してまとめて投資することも検討の余地があるでしょう。
なかでも筆者が注目しているのが下記のETFと投資信託です。
(1)【FM / iシェアーズフロンティア・セレクトEM ETF】
フロンティアに該当する国は新興国よりも経済マーケットが小さい国です。
FMは以下の構成国比率(2023年9月末時点)で形成されており、このETF1本でフロンティアの国々にまとめて投資することが可能です。
・ベトナム 構成比率28.29%
・ルーマニア 構成比率10.61%
・モロッコ 構成比率10.15%
・アイスランド 構成比率8.58%
・ルーマニア 構成比率8.42%
その他24カ国(バングラディッシュ、スリランカ、クロアチア、エストニア、ヨルダン、コートジボワール、ナイジェリアなど)
執筆時点の分配金利回り3.34%、経費率0.80%です。
経費率は高いものの、S&P500をアウトパフォームする確率が高いことを考えた場合、検討の余地があるといえるでしょう。
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(2)【eMAXIS Slim 新興国株式インデックス】
新興国へまとめて投資する1本として紹介したい投資信託です。
構成国比率(2024年2月末時点)としてはインド17%、台湾15.7%、新興国15.3%、ケイマン諸島13.8%、韓国12.0%、中国10.00%、ブラジル5.3%、サウジアラビア4.2%、メキシコ2.5%、その他4.2%です。
執筆時点の管理費用(信託報酬含む)0.1518%です。
経費率という観点から考えれば魅力的な1本と言えるでしょう。
とはいえ、今後の経済成長を考えた場合、より高成長が期待されるのはフロンティアであることは念頭に置いておくべきですが、特にS&P500をコアにした場合のサテライトとして新興国投資を組み入れることも妙味を感じます。
おわりに 貯金神話の崩壊 二極化していく日本人
今回は「人生100年時代」における基本的な投資の考え方について解説してきましたが、執筆に至る大きな理由として、今後の日本社会はどこかの時点で貯金神話が完全に崩壊することが考えられるからです。
そのため未来の日本社会では貯金額の多さが真面目な生き方を表す美徳ではなく、投資知識がなく、マネーリテラシーが低いことを表すワードとなる可能性がとても高いでしょう。
そもそも貯金神話が続いた背景として、日本経済におけるデフレの長期化がありました。
デフレとは円の価値が上がり、物価が下がる現象です。デフレの状況下では不動産や株などの価値も下落するので、貯金をしておくことが少なからず資産防衛へと繋がっていました。
しかしインフレがやってくると、貨幣の価値が下がり物価が上昇します。この場合、不動産や株の価格も上昇するので、貯金をしていると相対的に資産価値が目減りします。
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また日本という国はエネルギー資源の約90%を輸入に頼っています。そのため円安によってガソリン価格がさらに高騰する状況も今後想定されるでしょう。
もちろん生活費や学費などのために現金を残しておく必要はありますが、資産の全てを銀行に預けておいてもほとんど意味はありません。
つまり、今後の日本人は投資をする人と投資をしない人で二極化していき、これまで以上に経済格差が拡大する未来が予想されます。
より充実した生き方を選ぶためのツールとして、投資と上手に付き合うことが求められているのです。