【新NISAからの投資初心者へ】優待株150保有の“優待弁護士”が注目する6月確定の銘柄と選択基準
新NISAがスタートしたこともあって、投資を始めようと考える人が増えている。しかし、いったい何に、どれくらい投資すればいいのか、選択肢の多さに迷う人は少なくない。そんな人に「投資初心者には優待株がおすすめ」と語るのが、「優待弁護士」とも呼ばれる秋法律事務所の澤井康生弁護士だ。澤井さんは、優待株だけで約150銘柄を保有する。6月確定の優待株の特徴やおすすめ銘柄について聞いた。株主優待とは、企業が株主に対して商品や金券などを贈る制度のこと。優待を実施している企業の株式を「優待株」という。初心者には優待株が向いている理由を、澤井さんは次のように説明する。
「優待株は、保有することで優待を受けようと考える投資家が多いので、長期保有型の投資家が多く、株価の変動が少ないのです。いわゆる半導体銘柄などの景気敏感株に比べて株価が大きく変動することが少なく、安定している。投資初心者にとっては、安心して保有しやすい銘柄といえるでしょう。新NISAでは、優待や配当金には課税されないこともメリットです」(澤井さん、以下同)
初心者が株のデイトレードで稼ごうとしても、売り時や買い時の見極めは難しく、テクニカルな指標なども使いこなすのもハードルが高い。ならば初心者は、まずは安定して長期保有したくなる優待株から始めたほうが無難というワケだ。
優待を受けようと思ったら、権利確定日の2営業日前に株主である必要がある。この6月という時期は、優待株を買うタイミングとしてはどうなのだろうか。
「優待株は月によって多かったり少なかったりしますが、権利確定が6月という株は比較的多いほうです。人気の高い銘柄が多く、始めるにはよいタイミングではないでしょうか。特徴としては、日本マクドナルドホールディングスやすかいらーくホールディングスなどの誰もが知る外食チェーン、飲食系が多いですね。お店がどこにでもあって、優待を使いやすいというメリットがあります」
有名チェーンは商品やサービスが身近なので、そういう意味でも投資初心者にはおすすめだろう。では、そんな「6月の優待株」で澤井さんが注目しているのは具体的にどれなのだろうか。
「先ほども挙げたすかいらーくはレストランの種類も店舗数も多く、使いやすいのでおすすめです。優待券の金額は保有株式数によって違いますが、最低投資単位の100株だと年間で4000円分もらえますよ。身近な『食』といえば、築地魚市場も注目です。水産加工品の詰め合わせがもらえます。優待品はお肉系が多く、水産系は貴重ですね
食品を扱う企業ではないものの、不動産会社のトラストホールディングスは九州の会社で、明太子や馬刺しなど、九州地方の特産品が8000円分もらえます。実は、今年優待を開始したばかりなんです。一般的な優待券は3000~5000円くらいの価格帯が多いので、8000円となるとかなりいいものがもらえるんじゃないかと期待してしまいますね」
不動産系の「エリアクエスト」では、1000株以上の株主を対象に3000円相当のQUOカードが贈呈される。お得感ではトラストホールディングスに及ばないが、QUOカードはコンビニやドラッグストアで利用できるため、かなり使い勝手がいいといえるだろう。不動産金融・ホテル経営の「ウェルス・マネジメント」では、グループで運営しているホテルで使える優待券をもらえる。宿泊だと人によっては利用機会が限定されてしまいそうだが、おすすめする理由があるという。
「ウェルス・マネジメントは、ホテルが大阪、京都、札幌など地方に散らばっていて、旅行や出張で使いやすいです。さらに、コロナ禍以降、ホテルを利用しづらい人向けに農産物詰め合わせや運営ホテルで取り扱っている商品を選ぶこともできるようになりました。権利確定も年に3回なので、そのたび優待を受けられます。私のイチオシ優待株ですね」
このように、6月は魅力的な優待株が多いものの、注意すべき点もある。「権利確定前」は株価が高くなりやすい傾向があるからだ(権利確定は主に月末)。
「当たり前ですが、権利確定前は買いが集中しやすい。結果として高く買ってしまってはいくら優待を受けられるといっても、魅力が半減です。そういう意味では、あえて権利確定月を外して購入することも一つの手。少し価格が下がったタイミングで購入して、長く優待を受け続けるのもアリだと思います」
重要なのは、優待サービス自体が自分にとって使いやすいかどうか。外食チェーンなら自宅近くや生活圏にお店があるかどうかなどを確認してから購入したほうがいい。逆に、普段使っているお店の企業情報を調べてみて、優待があったらその銘柄を買うのもいいだろう。
「私はスーパーマーケットの株をいくつか持っていますが、自宅近くの普段使いできるスーパーにしています。普段使っているお店だと、商品やサービスがわかっているので、信頼できる会社かどうかも自分の目で判断できますよね」
株式投資は長期保有したいと思える銘柄を買うのが基本のキ。投資は自己責任で行うものなので、優待を含めて、自分が心から応援したいと思える企業の株を探してみてはどうだろうか。
※投資は投資者自身の判断と責任において行うのが原則です。
さわい・やすお 秋法律事務所パートナー弁護士。早稲田大学政治経済学部卒業後、警察官僚、警視庁刑事を経て2003年に旧司法試験に合格。もともとは国内不動産投資信託(J-REIT)専門の投資家だったが、株主優待の魅力にハマる。優待株だけでも現在約150銘柄を保有。楽天証券とうしる連載中。弁護士活動の傍ら、早稲田大学大学院でファイナンスMBA(経営学修士)も取得。現在早稲田大学大学院法学研究科博士後期課程に在学し刑事法を専攻。東京都出身。