健康長寿は“脚”次第!専門家が教える効果の高い運動法『かえる足スクワット』『パチパチもも上げ』『ひざ伸ばし体操』をイラストでわかりやすく解説
人生100年時代を死ぬ瞬間まで健康に生き抜くためにはどうすればいいか。病気を予防、視力や聴力を維持、質のよい睡眠も大切だが、実はなによりも優先すべきは「脚」を鍛え、健脚寿命を延ばすことだった。専門家に聞いた高い効果が期待できる運動法を紹介する。
脚を鍛えて「100年歩ける人」を目指そう
教えてくれた人
戸田佳孝さん/戸田整形外科リウマチ科クリニック院長
笹原健太郎さん/リーフはりきゅう整体院代表
約3000万人が変形性膝関節症に悩んでいる
年を重ねるにつれて、“経年劣化”する脚。階段を上り下りするには手すりが必要、立ち上がるときにひざが痛む、少しの距離でも歩いていると脚や腰に負荷がかかるなど、次々と現れる不調は避ける方が難しい。
歩行時にひざに痛みの出る変形性膝関節症に悩む人は、自覚症状のない潜在患者を含め3000万人いると推計される。患者のうち65才以上が55%を占め、女性の方が男性よりも多いという。更年期以降、ホルモン変化の影響で骨格構造が崩れやすくなり、痛みや不調を抱えやすい女性にとって脚とひざの健康はなにより注力して取り組むべき問題だ。
戸田整形外科リウマチ科クリニック院長の戸田佳孝さんが話す。
「年齢とともに脚に痛みが出るのは、筋肉量が低下するからです。脚の筋肉は上半身よりも年齢の変化を受けやすい。また、曲げる筋肉よりも伸ばす筋肉の方が加齢の変化は起きやすい。だから何もせずにいると、どんどん脚が曲がっていきます。結果として、ひざや股関節など脚にかかる負担が大きくなるのです」
歩けなくなることは万病のもと。脚が痛いと負のスパイラルに
脚に痛みを感じて歩く頻度や距離が減ると、筋肉量はさらに減少する。サルコペニアやロコモティブシンドロームなどの運動障害を引き起こすばかりか、がんや生活習慣病などのリスクも高まり認知機能の低下にもつながるなど、歩けなくなることはまさに万病のもとなのだ。
リーフはりきゅう整体院代表の笹原健太郎さんが言う。
「運動量が減ると股関節や腰まわり、骨盤まわりが硬くなります。硬くなると動きが悪くなるので、それをカバーするようにひざなどほかの部分を酷使して、座骨神経痛や膝関節痛などが起こりやすくなってくる。関節痛になってしまうと、ますます歩く量が減って負のスパイラルに陥ります」
100年歩くための脚とひざ作りは、思い立ったいまから始めること。
「脚の筋肉は何才になってもトレーニングをすれば太くなります。アメリカでは80代や90代の超高齢者がジムで熱心に筋トレをしています。1990年代にはすでに96才以上でも鍛えることで筋肉は太くなるという研究結果も報告されている。いくつになっても始めるのに遅いということはありません」(戸田さん)
笹原さんも重ねる。
「寝たきりや認知症になってしまってからでは、脚を鍛えるのはとても難しい。むしろ40~60代で痛みが出るというのは、“いまから正しくトレーニングすれば寝たきりにならないよ”という体からのSOSであり、アラートです。いま脚やひざに痛みを感じているならば、100年歩ける脚を作るいいタイミングだと思ってください」(笹原さん・以下同)
しゃがむだけで関節が伸びて筋肉も自然に動く
筋肉や運動量の低下が脚の老化を引き起こすとすれば、まず毎日の習慣として取り入れたいのが運動だ。
といっても、いきなりウオーキングをしたり、体に負荷をかける筋トレをする必要はない。
「すぐに始められるのが、“しゃがむ”こと。本来、足首やひざや股関節はしっかり動かすように作られていて、これらの関節を動かすことで筋肉も動くようになる。しかし、関節を動かさなければ、前述の通りどんどん硬くなってしまう。しゃがむという行為によって、しゃがんだときにしっかり関節が曲がって、立つときに関節が伸びるという運動が無駄なくできる。昔は畳で生活していたので日常的にしゃがむ動作をしていましたが、現在ではいすの生活が主となりしゃがむことが減って関節が鈍っているといえます」
しゃがみ方にもコツがあるという。
「おすすめは以下で紹介する <『かえる足スクワット』です。脚を開いてしゃがむことで股関節がしっかりと開きます。床に手をつくのが難しければ、無理をせずにまずはできるところまででOKです」
戸田さんが推奨するのは、素早く動く動作で筋肉を鍛えること。
「収縮スピードが速く、瞬時に大きな力を発揮する筋肉を速筋といいますが、20代から萎縮してしまい衰えるのが早い。太ももの前面に位置する大腿四頭筋(だいたいしとうきん)には速筋が多く存在していて、ひざを支える役割も果たしています。この筋肉を鍛えれば、速筋の老化や変形性膝関節症が予防できます。効果的なのは『パチパチもも上げ』。素早く太ももを上げるのがポイントです。65才以上のかたには特に高い効果が期待できます」(戸田さん・以下同)
日常の中で、すぐにできる「ながら体操」もある。
「いすに座って行う『ひざ伸ばし体操』はとても単純で簡単な動きですが、大腿四頭筋をしっかり鍛えられる。テレビを見たり、本を読みながらやってもいいので、無理なく続けましょう。脚を上げたときに、つま先をひねる動作を組み込めばひざがしっかり伸びるうえ、内ももにも効果的です」
“筋トレの王様”とも称され、高い効果が期待できるスクワットも下半身の筋肉を鍛えるには抜群だが、高齢者には負荷がかかりすぎるのも事実。戸田さんは「壁をうまく利用して」とアドバイスする。
「壁の隅にもたれてスクワットをすると、ひざへの負担が軽減されるうえ、ひざを深く曲げなくても筋肉を鍛えられます。体の重心を安定させるためには、四股(しこ)を踏むのもいい。太ももを上げるときに使う腸腰筋(ちょうようきん)という筋肉に効くうえ、股関節もしっかり開きます」
日常的にできる「健脚寿命を延ばす運動法」をイラストで解説
【1】股関節をしっかり開く「かえる足スクワット」
<1>やや広めに脚を開いて立つ。つま先は斜め45度の方向へ向ける。
つま先は斜め45度に開く
<2>つま先とひざは斜め45度の方向に向けたまま、しゃがむ。手が床についたらすぐに立ち上がる。1セット10回。
つま先とひざは斜め45度に向けたまま
※<2>が難しい人は、できるところまででOK。無理は禁物です!
手が床につかない場合は、できるところまででOK
【2】なるべく早く動かそう!「パチパチもも上げ」
<1>両ひじを体の横につけて立つ。ひじを曲げて両手をまっすぐ前に出し、おへそ付近の高さで固定する。
ひじはしっかり曲げる。二の腕は体の横から離さないように
<2>音がするくらい太ももを素早く持ち上げる。左右交互に行って、1セット50回(左右25回ずつ)。1日2セットを目標に。
太ももを上げた時に二の腕が体の横から離れないように。立っている脚のひざはしっかり伸ばそう
【3】ひざが伸びて太ももを鍛えられる「ひざ伸ばし体操」
いすに座り、片方のひざを伸ばす。10秒間伸ばしたら、2秒間脚を下ろして、これを繰り返す。1セット左右5回ずつ。1日2セットを目標に。
ひざを伸ばしたら10秒キープ!
【4】太ももを狙い撃ち「外もも強化体操」
片手を壁につけて、反対側の脚を斜め後ろにできる限り上げる。そのまま1秒キープ。1セット左右15回ずつ。1日2セットを目標に。
足の甲は外側に向けて
イラスト/ico. 写真/PIXTA
※女性セブン2024年5月23日号