「そんな、うちの子が…」夏休みは要注意!探偵が素行調査で暴いた中2の“危険な外出先”
家族が寝静まった深夜、中2男子が2階の窓から部屋をこっそり抜け出し、黒塗りのワゴンに乗り込み向かった先とは(写真はイメージです) Photo:PIXTA
筆者は、吉本でお笑いコンビ「オオカミ少年」で活動する傍ら、探偵事務所の代表を務めています。私の探偵歴十数年の中で、さまざまな調査の相談を受けました。毎年6月の後半くらいから増える相談があります。それは非常に深刻であり、多くの家庭が悩みを抱える中高生の非行問題に関する調査です。今回は夏休みに向けて増加する非行調査についてお伝えいたします。(探偵芸人 オオカミ少年・片岡正徳、登場人文はすべて仮名)
中高生が非行に走りやすくなる夏休み
犯罪に手を染めるケースも
夏休みが近づくにつれて、中高生が非行に走りやすくなるにはさまざまな要因があります。私が受けた相談の中からまとめると要因は以下のように分類されます。
○家庭
両親の不和、離婚、経済的困窮などが原因で、子どもがストレスを抱え非行に走るケースは少なくありません。特に、親が忙しくて子どもと過ごす時間が少ない場合、子どもは愛情や注意を他の場所で求め、悪い友達や非行グループに引き込まれることが多いです。
○学校
学校でのいじめや孤立感や学業のプレッシャーから逃げるために、子どもは非行に走ることがあります。友人の影響も非行に走る大きな要因になります。
オオカミ少年・片岡正徳
○インターネットやSNS
インターネットやSNSを通じて、暴力的なコンテンツや犯罪行為を美化する情報に触れることが増えています。これにより、非行に対するハードルが下がりやすくなっています。
○地域
犯罪率の高い地域で育つ子どもたちは、非行に走るリスクが高くなります。
これらの要因は相互に絡み合うことも多く、その結果非行がエスカレートすることによって、深夜の徘徊(はいかい)やプチ家出、援助交際や、大麻や覚醒剤などの違法薬物所持などの事件を繰り返し、非行グループや暴力団関係者などと接点を持ち、凶悪な犯罪に手を染めるケースは後を絶ちません。
犯罪に加担するようになればなるほど、親の気持ちや親子の絆は希薄になります。
「子どものありのままの姿を知ること」が
安心と解決に向けた最初の一歩
非行や犯罪によって、学校や警察に親が呼ばれた時は、大半の方が「うちの子に限って!?」や、「うちの子は悪い友達に巻き込まれただけだ!!」などと、自分の子どもの非行事実を現実として受け止められないのです。
子どもの素行不良を把握することなく、子どもと向き合うことができず、警察沙汰になって初めて知る子どもの行いに「もっと子どもと話していれば……」と後悔する親はとても多いのが現実です。
親の知らない時間帯に、子どもの行動が心配になったり、素行や生活や友人関係に不自然さや不安を感じたりした時は「子どものありのままの姿を知ること」が、安心と解決に向けた最初の一歩となります。
【非行の兆候チェックリスト】
・帰宅時間が急に遅くなった
・部屋の中を見せたがらない
・学校を時々休むようになった
・電話をしても通じないことが多い
・友人関係や交際相手について話したがらない
・体に傷やアザがある
・夏休み、お盆、連休になっても、田舎に一緒に帰省しなくなった
・大金を持っていることがある
・高価な持ち物が増えた
・プチ家出をすることが増えた
・喫煙するようになった
チェックリストに該当するようであれば非行の兆候、もしくは真っ最中と認識してください。
中2の息子の様子がおかしい
母親からの依頼で素行調査をすることに
増永美枝さん(37歳、女性)は息子の翔君(中学2年生)が最近非行に走る兆候を見せ始めたことから相談してきました。
美枝さん夫婦は共働きで仕事の忙しさから、翔君と一緒にご飯を食べたり話したりする時間もほとんどなく、行動に気を配れていませんでした。
学校から成績の急激な低下や教師への反抗的な態度などの連絡があり、夜遅くに徘徊していることを近所のうわさで聞きました。家庭内でも反抗的な態度が増え、財布からお金がなくなっていたこともありました。
問題解決の糸口を見つけるために、私は翔君の素行や交友関係を洗い出すことを提案して、調査に取り掛かりました。
まずは、翔君が学校から出た後の行動を調査することにしました。
通っている中学校から2人の友人と出てきた翔君は、そのうちの1人の家に直行しました。立派な戸建ての2階にある友人の部屋でゲームをしたり、お菓子を食べて談笑している様子が伺えました。
2時間ほどした19時頃に家を出た3人は、歩いて10分ほどの小さな公園に入りベンチに座りました。その後、人けのない公園で3人は慣れた手つきでたばこを吸い始めました。見た目からは普通の中学生に見えた3人の行動に私は少々驚きましたが、証拠として顔がはっきりわかるように撮影しました。
30分ほどたばこを吸いながら談笑した後、3人は別れて、翔君は20時過ぎに帰宅しました。増永さん夫婦はまだ帰宅していないようで、レースカーテン越しに一人で用意されていたご飯を食べる翔君の姿が見えました。
22時過ぎに増永さん夫婦が帰宅した頃には、翔君は戸建ての2階にある自室に入っていました。
23時前に翔君の部屋の電気は消え、午前1時頃には家の全ての電気が消えました。
黒塗りのワゴンに乗って
出かけた先とは?
私は翌日が土曜日で学校が休みのため、まだ動きがあるかもしれないと思い、もう少しだけ様子を見ることにしました。
すると30分ほどして翔君が2階の部屋の窓から、手慣れた様子で雨どいを伝って下りてきました。
そのまま足音を殺して家の敷地を出て、数分歩いた先の公園に停車していた黒塗りのワゴン車に乗り込みました。
ワゴン車は30分ほど走行して、キャバクラや風俗店やラブホテルが立ち並ぶ一角の月決め駐車場に停車しました。
車からは翔君と一緒に遊んでいた2人の友達と、10代後半から20代前半のTシャツから出た肌にはびっしりとタトゥーが入った男性2人が出てきました。
その後駐車場の向かい側の3階建ての雑居ビルに入っていきましたが、商業施設ではなさそうで潜入は控えました。3階の部屋の開いている窓からは大音量の音楽とそれに負けない笑い声や叫び声が聞こえましたが、何をしているのかは全くわかりませんでした。
数人の男女の出入りはありましたが、翔君の姿は確認できませんでした。その後3時間ほどして翔君と一緒に入った全員が出てきて車に乗り込み、翔君を自宅の前に降ろしてどこかへ走り去りました。翔君はまだ薄暗い中、雨どいを伝って自室に入り就寝したようでした。
私はいったん帰宅して仮眠をとった後、翔君が入って行った雑居ビルについて近隣に聞き込み調査を開始しました。その結果どこかの会社の持ちビルで事務所として登記されているようでしたが、商業活動は行われていないようで、夜な夜な不良たちが集まって騒いでいる場所ということが分かりました。そこに集まる不良たちの多くが半グレ集団のメンバーらしく、窃盗や薬物使用にも手を出しているようで、近隣の住人も夜は近寄らないようにしているそうです。
翔君の深夜徘徊が近所のうわさになるほど雑居ビルへ頻繁に出入りしていることと、近い将来、半グレ集団のメンバーになるであろうことはたやすく想像できました。
まとめた報告書を見た美枝さんは、翔君が危険な道に進んでいることを悟りました。
探偵の仕事としては終わりましたが、その後の経緯を美枝さんから聞きました。
探偵の調査を受けて
すぐに動いた夫婦
報告書を見たその夜に夫婦間で話し合った結果、まずは翔君と話し合うことにしたそうです。翌日は仕事を早めに切り上げ食事の準備をして、家族全員で食べ始めました。翔君も何か違和感があったのか、静かな緊張感が漂う中、美枝さんが口を開きました。「翔、最近どこで何をしているのか、正直に話してくれない?」
最初ははぐらかしたり、無視したり、「うるさいな! 関係ないだろ!」と反発したりした翔君でしたが、やがて両親の真剣なまなざしと説得に折れ、自分が半グレ集団のたまり場に遊びに行っていることを打ち明けたのです。ただゲームをしたり話したりするだけで、たばこは吸ったけど犯罪になるようなことは一切していないとのことでした。
増永さん夫婦は、すぐに行動を起こしました。まず、カウンセリングの専門家に相談し、翔君の更生のために具体的な手段を教えてもらいました。それは、翔君には適切なサポートと導き、そして人間関係の環境を変えることが必要だとのアドバイスがありました。
親子である以上、
遅すぎるということはない
増永さん夫婦の決断は早いもので、新学期を待つことなく翔君を新しい学校に転校させることを決めたのでした。
翔君はもちろん戸惑いや抵抗を見せましたが、増永さん夫婦の粘り強い説得により、このままでは危険なことに巻き込まれたりするかもしれないことを理解して、受け入れてくれたそうです。
さらに、増永さん夫婦は翔君との時間を増やすことに努めました。仕事を調整して、朝と夜のご飯は必ず家族全員で食べ、休日には映画や遊園地やキャンプに行って、家族の楽しい時間を増やして絆を強めたのでした。
翔君は拒んだりもしましたが、だんだん「次の週末は山に登ってみたい!」などと新たな計画をするようになったそうです。
新しい学校での慣れない環境や友達作りに、最初は不安を感じ、いら立つ様子もありましたが、1週間もすれば友達を家に連れてくるようになりました。
美枝さんからは「調査していただいて、すぐに行動できたことが本当によかった」と連絡をもらい、本当にうれしく思いました。
もしも、子どもが間違った道を歩もうとしているとしたら、進むべき道へ軌道修正できるかもしれません。子どもが危険に見舞われる可能性があるとしたら、未然に防げるかもしれません。
やむを得ず離れて暮らしている子どもの状況に不安があるとしたら、その要素を取り除くためにも素行調査はとても有効です。
親子である以上、遅すぎるということはないと思います。違和感や不安を覚えた時、遅かったとあきらめる前に、まずは探偵に一度ご連絡ください。
「子どもの非行防止のために素行を調査する探偵」。点と点が線になる探偵トークでした。
※本稿は実際の事例に基づいて構成していますが、プライバシー保護のため個人名は全て仮名とし、一部を脚色しています。