千代建、米LNG事業追加費用で赤字転落-自己資本急減49億円に
(ブルームバーグ): 千代田化工建設は26日、受注した米液化天然ガス(LNG)プラント事業の合弁相手企業の経営破綻に伴う追加費用を計上した影響で、前期(2024年3月期)は150億円の営業赤字となったと発表した。
千代建の発表資料によると、前期の決算を確定させるため、現時点で存在している合意文書を踏まえた契約金額に加えて十分な費用を考慮したことで純損益ベースでは従来計画比370億円の押し下げ要因となった。3月末時点の自己資本は49億円と前の期末の222億円から大きく低下した。
米テキサス州の「ゴールデンパスLNGプロジェクト」で輸出基地の建設などを受注した共同企業体(JV)に千代建などと加わっていたザクリ・インダストリアルが5月21日に米連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請したことなどを受けた顧客との協議が継続していることから今期(25年3月期)業績予想は公表を見送った。業績予想の開示が可能になった時点で速やかに開示するという。
再び赤字転落 | 米LNG事業の追加費用で24年3月期は150億円の営業赤字に
多くのLNG輸出プロジェクトが計画されている米国では物価高や人手不足に伴う人件費高騰によるリスクが問題となっている。千代建は19年3月期にも米ルイジアナ州のキャメロンLNGプロジェクトで人手不足などによる遅延が発生したことなどで赤字を計上して経営危機に陥っており、改めて大型LNGプロジェクトのリスクを浮き彫りとする形となった。
千代建の太田光治社長は同日のオンライン説明会で、過去の失敗を踏まえゴールデンパスでは建設を合弁相手に任せ、自社ではリスクを取らない枠組みとしたが、長い開発期間の中で「工事の費用が想定を超えた形で上昇」したことでザクリが破綻し、「連帯責任という形でわれわれにも降りかかってくる形になった」と説明した。
千代建が25日の発表で、前期営業損益予想を従来の210億円の黒字から150億円の赤字に引き下げたことを受け、同社の株価は26日の取引で3.5%安の303円と5月30日以来の下落率を付けた。
みずほ証券の伊藤辰彦アナリストらは25日付のリポートで、同日発表された内容に関する「印象はニュートラル」とした上で、直近の株価下落によって24年3月期損失見通しの影響はおおむね織り込まれていたと考えられるとした。ただ、「自己資本比率はかなり低い水準にとどまると考えられ、本件および他の案件で追加費用が生じた場合、債務超過に陥る可能性が高い」とも指摘した。
千代建は25日の発表で、ザクリのプロジェクトからの離脱の可能性に伴う今後のプロジェクト完工に向けて必要と見込まれる十分な費用を見積もったとした。また、現時点で約1000億円程度の手元現預金を持っており、業務運営に支障はないという。
千代建によると、ザクリの離脱後に顧客と残りの合弁相手企業と速やかに短期的な遂行計画や完工までの長期的な計画に合意することとなっている。顧客との契約交渉の進展を図るとともに、24年7-9月期以降に合意内容を踏まえ採算の見直しを実施し、自己資本の回復を目指すとした。
太田社長は、今回引き当てた370億円はプロジェクトのコスト超過分を顧客が一切負担してくれないという保守的な前提に基づいており、同費用については「基本的には全額取り戻すつもりで交渉していく」と述べた。資金繰りには問題ないこともあり、前回の経営危機時に支援した三菱商事などから再び財務支援を受ける考えは現時点でないと明言した。
千代建の米子会社などのJVは19年、カタール国営石油会社のカタールエナジーと米エクソンモービルのJVが進めるゴールデンパスプロジェクトの設計、調達、建設業務を受注したと発表。千代建によると、契約当初の為替レート換算でプロジェクト総額は約1兆円とされていた。
太田社長は、現時点で想定されるプロジェクトのコストは合弁相手企業が計算している最中なため具体的な金額については言及を控えるとした。チャプター11を申請したザクリが担当していた工事の大部分については再開許可が裁判所から出ておらず、プロジェクトの工期は遅れる見通しであるとし、今後顧客といつまでの完工を目指すか協議を進めていくと述べた。
関連記事:
千代建、24年3月期は360億円の営業赤字に-米LNGで引当金千代建:総額1800億円の資金調達、三菱商と三菱UFJ銀が支援 (2)千代建:三菱商と協議中、現時点合意ない-疑義消えず、株価一転下落
(会見内容を追加して更新します)
More stories like this are available on bloomberg.com
©2024 Bloomberg L.P.