クッシーはあなたのそばに 「住民台帳」登録100体紹介 北海道
クッシー100体の一つで、公園にあるクッシー滑り台=北海道美幌町で2024年6月12日午後1時28分、本多竹志撮影
1973年7月、北海道東部の藻琴山を遠足で訪れた北見市の中学生が、屈斜路湖の水面で巨大生物を目撃した。謎の生物は後に「クッシー」と名付けられ、一大ブームを呼び起こした。あれから半世紀余。屈斜路湖に近接した自治体の一つ、美幌町の美幌博物館で今夏、地域を盛り上げた「クッシー100体運動」に関する展示が企画されている。【本多竹志】
英国・ネス湖のネッシーブームを契機に、国内でも鹿児島県指宿市・池田湖のイッシーとクッシーに話題が集まったのが70年代から80年代にかけてだった。カメラに収めようと探索チームが訪れ、テレビの特別番組が放映されるなど、ブームを巻き起こした。
クッシーブームは、美幌町の町おこしにも一役買った。75年には「クッシーを守る会」が組織され、翌76年には当時駅前で旅館を営んでいた前川市治郎さんが作詞、歌手の田中星児さんが歌った「ネッシーとクッシー」のレコードが発売されるなど、話題は全国区に。屈斜路湖を一望できる美幌峠も観光名所になった。
町内では、クッシーをモチーフにした菓子も土産物などとして人気を博した。ブームに合わせて発売したクッキー「クッシーの里」の人気は今も健在。当時から変わらぬ味と包装で販売する山本菓子舗の先代社長、伊藤寿之さん(92)は「観光客や地元の人に愛されて店の看板商品になった。商店街にはクッシーの歌が流れ、元気があった」と振り返る。
こうした中で生まれたのが、クッシーに関連するさまざまな物を登録する「クッシー100体運動」だ。住民団体「クッシーふるさと会」が募集し、クッシー住民台帳に記録。第1号はクッシーのイラストが入った住民登録証で、張り子みこし、木彫り、風見鶏ならぬ風見クッシー、おもちゃなど住民が製作したさまざまなクッシーが登録されている。70年代後半~80年代には100体に達した。
中には、クッシーの形に剪定(せんてい)した町役場のイチイの木や、公園の滑り台として子供の遊び場となったもの、壁泉に置かれて住民に親しまれたものなどユニークなクッシーも。この50年間に姿を消した「100体」も多い。
写真や情報募集
ロビー展は「すごい標本! すごい資料!」と題して7月6日~10月8日まで開催。地元新聞社が保存していた当時のクッシー住民台帳を中心に、「100体」の実物や写真を紹介する。担当する城坂結実学芸員は「当時の100体が残っていたり、写真があったりすれば情報を寄せてほしい。ロビー展の期間中に展示が増えていくとうれしい」と話している。
ロビー展はほかにトンボ、鳥の巣など五つのコーナーが設置される。観覧無料。