「これは一発回答では」パリ五輪の左WGは斉藤光毅で決定? “45分”で別格認定…三戸舜介とのコンビも良好「しゅんちゃんとは良い関係築けてる」
“最終テスト”のアメリカ戦で存在感を発揮した斉藤光毅(22歳)。横浜FC時代の2018年に16歳でJデビュー、三浦知良との35歳差2トップで話題を集めた
今さら説明することでもないのだが、サッカーの試合はチームとしての勝敗はつくものの、個人の評価に直結するスポーツではない。採点競技ではないし、陸上や水泳のようにタイムがはっきり出るものでもなければ、柔道やレスリングのように強者と弱者がその場で明らかになるものでもない。
何が言いたいかといえば、サッカーのメンバー選考の行方を考えるのは簡単ではないということだ。
サッカーU-23日本代表は、6月上旬にアメリカ・カンザスシティで合宿を行った。大岩剛監督が率いるこのチームとしてはパリオリンピックに臨む18人を発表する前の活動であり、これ以降発表まで自チームの活動のない海外組にとっては最後のアピールチャンスとなった。
合宿最終日に行われたアメリカ戦、日本は2−0で勝利したが大岩監督はそもそも「この合宿に来られなかった選手にもチャンスはある」と明言しており、選考は最後の最後まで横一線であることを強調している。このチームでの活動以降、それぞれの所属チームでの活動を監督は視察し続けるそうだ。
記者を唸らす「これは一発回答では?」
とはいえ、どれほど指揮官が“選考中”であると言い張っても、素人目には明らかに突出して見える選手はいる。このアメリカ戦の場合、斉藤光毅(こうき)がそれだった。ともに試合を観戦、取材した報道陣と「これは一発回答では?」と口を揃えるしかなかった。
斉藤はこの試合、4-3-3の左ウィングで出場。右サイドにはオランダ1部のスパルタ・ロッテルダムのチームメイト三戸舜介が入った。前半4分、相手GKが大きく蹴り出したボールを中盤で荒木遼太郎がヘディングでカットし、これを拾った斉藤がドリブルでボックスに侵入、右足クロスをあげる。中央には逆サイドから三戸が詰めていたが、三戸に届くことはなく寄せてきた相手DFブライアン・レイノルズの右手にあたり、PKに。これを藤尾翔太が落ち着いて決め、6分という早い時間帯の先制点となった。
「しゅんちゃん(三戸)が見えたんでしゅんちゃんに普通に出したんですけど当たったっていうだけです」
笑いながら斉藤は振り返った。
三戸との関係性は今年に入りクラブで築いてきたものであり、それがこのプレーにつながったと言う。
「(三戸が)スパルタに来る前よりは、遥かにやりやすくなってる。逆サイドなので、あまり関わらなかったですけど、しゅんちゃんはこう来たらこうするっていう理解が多少あるので、より良い関係を築けてると思いますし、これからもっともっと築いていきたいなと」
アジア予選に行きたいと直談判も…
昨年後半、怪我に苦しんだ斉藤は10月から今年1月下旬まで試合に出場することができなかった。U-23代表では11月のアルゼンチン戦に出場しているものの、その後の招集はなし。怪我は治ったものの、今度はクラブに必要とされる存在になったことで今年3月の国内合宿も、4月後半からのアジア最終予選も招集されたなかった。
予選に関しては「行きたいとクラブに言ってはみたんですけど」願いは叶わなかったそうだ。ただ、その分オランダリーグでは左ウィングとして存在感を強めた。左からの鋭いドリブルはスパルタの武器の一つになったし、シュート、クロス、時には味方にパスをつけるなど豊かなバリエーションも身につけた。
本来は「フォワードかトップ下的な選手」と言い得点への執着も口にするが、左ウィングで磨ける武器は磨いてきた。
大岩監督も、その成長ぶりを高く評価する。久々の招集となった斉藤と三戸への評価は、という質問にこう答えた。
「あれくらいのパフォーマンスは当然だと思うし、彼らも当然だと思っていると思う。この遠征前にも言いましたけれども、選手も刺激をくれて、チーム力が上がっていくと思うので、彼らが良かったがゆえに、そのまわりの選手たちに影響を与えてくれていると思うので、それも含めて、オリンピックへの………、活かしたいなと思うんですよね」
オリンピックのメンバー選考の材料として活かしたいのか、本番で活かしたいのか、レコーダーを聞き返してもノイズでよくわからなかったのだが、ともかく高く評価していることが伝わる。
“たった45分”でも一発回答
斉藤自身はアメリカ戦でのパフォーマンスについては一長一短あったとしている。良かった部分は突破からのチャンスクリエイトができたこと。
「突破などは出していかないといけないと思って、僕の特徴として。そこを出せたのは良かったと思います」
一方でこの試合は45分での交代となった点はマイナス要素だ。
「もうちょっとやりたかったなとすごい思いました。ちょっと悔しかったです。監督から?『お疲れ』って言われました(笑)」
だが、この45分のみの出場こそが、メンバー選考の材料としてはもう十分というサインにも見えたが、果たしてどうなるのだろうか。
パリオリンピックに臨む18人は、7月3日に発表される。