14年ぶり火入れの大堀相馬焼、職人が地元小中学生に歴史を伝授
半谷貞辰さん(左)から粘土で焼き物を作る方法を教えてもらう児童ら=2024年6月14日、福島県浪江町、大久保泰撮影
福島県浪江町の大堀地区に伝わる国指定伝統的工芸品「大堀(おおぼり)相馬焼」の職人が14日、同町立なみえ創成小・中学校の子どもたちに300年以上の歴史や作り方を伝えた。東京電力福島第一原発事故で窯を離れ、4月に14年ぶりに火入れができたばかりで、伝統継承への思いを込めた。
半谷貞辰さん(右)から粘土で形の作り方を教わる児童、生徒ら=2024年6月14日、福島県浪江町、大久保泰撮影
講師は大堀相馬焼協同組合の理事長で、「半谷(はんがい)窯」16代目の半谷貞辰(ていしん)さん(71)。大堀相馬焼は江戸時代中期から作られ、走る馬の意匠や青いひび、二重構造という特徴がある。「湯が冷めにくく、手に持っても熱くない使いやすい焼き物」と紹介した。
子どもたちは作る工程も体験。1~2年生は陶器専用パステルで小皿に魚や花の絵を描き、3年生以上と中学生は粘土で茶わんやスープ入れを形作った。半谷さんの窯で焼き、秋には子どもたちに届けられる。中学1年の小野寺美香さんは「大堀相馬焼は初めて知った。焼き上がった作品は日用品として使いたい」。
組合によると、原発事故前は約20軒の窯元があったが、大堀地区は帰還困難区域に指定された。昨年3月末、文化発信施設「陶芸の杜(もり)おおぼり」と各窯元が避難指示解除となったが、居住はできない。
今年4月、半谷さんは14年ぶりに階段状に連なる登り窯に火を入れた。ただ、ほとんどの職人は地区を去り、いまは半数ほどが県内に新たな窯を持って活動している。半谷さんも福島市内に新しく家と窯を構え、創作を続ける。大堀の自宅や作業場は解体された。
「浪江には素晴らしい焼き物があると知ってもらいたい。離ればなれになっても私たちが活動を続けることが伝統をつなぐことになる」と話した。(大久保泰)