“昼の高速バス”の素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない
昼行高速バスの魅力
高速バスでの旅行と聞くと、夜行バスのイメージが強いが、昼行高速バスもしっかり活躍している。というか、平日昼間の高速バスターミナルもかなり混雑しており、人気の高さがうかがえる。
【画像】えっ…! これが40年前の足立区「竹ノ塚」です(計19枚)
別に旅行しなくとも、高速バスターミナルにふらっと出掛けるだけでもう旅をした気分になれる。
・ディーゼルエンジン特有の排ガスの香り/エンジン音
・高速バスの案内板や時刻表
・到着/出発したバスの行き先表示
・乗車券をチェックする乗務員
・車体下部のトランクへの荷物の収納
など、萌えポイントをいくらでも挙げられる。
実際に昼行高速バスを利用するとさらに気分が高揚するのはいうまでもない。
高速乗合バスの魅力
クレアライン。中国ジェイアールバス(画像:Tokatsu kokubu)
国土交通省の資料によると、高速バスは正確には高速乗合バスといい、
「市町村の区域を越え、かつ、その長さが概ね50kmを超える路線」
とある。もちろん、50km未満であっても高速道路を通る路線バスはある。
例えば、広島と呉を結ぶクレアラインは実車距離で30km程度であるが、朝の通勤時間帯はなかなかの盛況ぶりだ。広島から呉に向かう7時台のバスは6本もあるものの、補助席も満席となり途中の停留場で積み残しが生じるのは日常茶飯事である。
50km程度の小旅行であれば、都会の景色も郊外の景色も楽しめるつくば号もいい。つくばエクスプレス開業前は、筑波大学への移動といえば高速バス1択だった。当時、東京駅八重洲口のバスターミナルの人の多さもさることながら、メガライナーの大きさに圧倒されてしまった。高速バスで筑波大学に向かうだけで、ここまで興奮できるのはなかなかのやばさだろう。
余談はこれまでにして、筆者(ネルソン三浦、フリーライター)がやばい!と思うポイント「コスパ・景色・設備・サービスエリア(SA)」について語っていこう。
やばいポイント1「適度な遅さと値段」
高速バス(画像:写真AC)
ひとつ目の昼行高速バスのやばいポイントは、適度な遅さと値段だろう。新幹線や特急と比較して所要時間はかかるかもしれないが、許容できる範囲内にあるし、なんといっても安い。
例えば、大阪から松本に向かう場合を比較してみよう。
●鉄道:大阪駅~松本駅
・所要時間:約3時間20分
・運賃:1万1980円(のぞみ・しなの指定席利用)
●バス:大阪~松本バスターミナル
・所要時間:約5時間50分
・運賃:5500円~(アルピコ交通・時期による変動あり)
さすがに所要時間では鉄道に勝てないが、2時間30分の違いでこの運賃ならば十分といってもいい。もちろん、高速バスが圧倒的に優位になる路線もある。大阪駅~徳島駅を見てみよう。
●鉄道:大阪駅~徳島駅
・所要時間:約3時間30分
・運賃:1万1200円(のそみ・マリンライナー・うずしお指定席利用)
●バス:大阪駅~徳島駅
・所要時間:約2時間45分
・運賃:4100円(阿波エスクプレス大阪号)
全国屈指の高速バス激戦区だけあって、所要時間も運賃も高速バスの方が圧倒的に優位だ。運賃に至っては半額以下であり、各種割引を利用するか事業者を選べばさらに安くなる。
昼行高速バスの適度な遅さと値段は、何よりも代えがたい魅力に違いないし、時間に余裕がありふらっと旅をするにはちょうどよいやばい交通手段といえよう。
やばいポイント2「高い視点での景色」
首都高速(画像:写真AC)
高速バスのやばいポイントのふたつ目に景色を挙げたい。
高速バスは、
・ハイデッカーの車両が使用されていて高い視点で景色が見える
・速すぎず遅すぎずの速度で景色が流れる
のがやばい。都市部の雑踏を高い視点で見下ろしながら街に別れを告げて段々と郊外に抜けていく感覚は、高速バスでしか得がたいものがある。都市や郊外を抜けて山間部に入ると、四季折々の景色だけでなく、夕暮れ時など空と雲と光が織りなす光景が楽しめる。
景色を楽しむという理由で、羽田空港から新宿などの都心部へ向かう際は、リムジンバスの利用をおすすめしたい。空港リムジンは、距離こそ長くはないが立派な高速道路を走るバスだ。
筆者の場合は、景色を見るといっても、前寄りの席に座って
「首都高速の全面展望」
を楽しんでいる。視点の高さから優越感にひたれるのがいいし、そもそも座っているだけなので景色に集中できるのもいい。
このほか、車窓の景色とスマホの衛星利用測位システム(GPS)位置情報や地形図を照らし合わせながら妄想にふける、あるいは並走するトラックのキャビンを観察するのも、昼行高速バスのやばいポイントといえる。
やばいポイント3「車内設備」
グランドリーム号(画像:中国ジェイアールバス)
三つめの高速バスのやばいポイントは設備だ。
シートのよさは、高速バスの推しポイントといえよう。事業者や便によって、昔ながらの4列シートということもあるかもしれないが、逆に設備のグレードが高い夜行バスの折り返し車両を昼行高速バスに使用している場合もある。
例えば、京都・大阪と広島を結んでいるグラン昼特急広島号は、
・独立した3列シート
・余裕たっぷりのリクライニング
・レッグレスト
と至れり尽くせりでやばい。片道4000円台から、ゆったりとした座席で過ごせてかつ景色を堪能できるなら、約5時間の所要時間であっても苦痛を感じるどころかウエルカムといっていい。また、長距離便の多くはトイレも備え付けられているので、万が一の場合も安心といえる。
昼行高速バスの設備は、事業者や路線あるいは便によって大きく異なるので、いろいろと乗り比べてみてもよいだろう。
やばいポイント4「立ち寄るSA」
地方のSA(画像:写真AC)
最後の昼行高速バスのやばいポイントとして、途中に立ち寄るSAを挙げたい。
SAがやばいというと、一時期インターネット上でにぎわいをみせた
「客の置き去り」
のことかと勘違いされそうだがそうではない。乗務員の交代や休憩、あるいは旅客の休憩のためにSAやパーキングエリア(PA)に立ち寄る便もあるが、筆者はその立ち寄り先を期待してわざわざ昼行高速バスを選んでいるといっていい。
休憩するといっても10分か15分程度であり、がっつり食事をとったりするのは難しく、時間を誤ると本当にやばいことになる。せいぜい
・用を足す
・お土産を買う
くらいが関の山かもしれないが、それでも立ち寄れたことに満足してしまうやばさがある。乗車時に立ち寄り先のアナウンスを聞いてどのようなところか楽しみにしたものの、こざっぱりとしたPAでガッカリしたこともある。この
「ガッカリも楽しめるような余裕」
が、昼行高速バスを極めるには必要なのかもしれない。
昼行高速バスの真価
高速バスの座席イメージ(画像:写真AC)
これまで「コスパ・景色・設備・SA」について述べてきたが、いかがだっただろうか。
そもそも、旅行に行かなくても、高速バスターミナルに行くだけで、すでに旅行に行った気分になれるのだ。
昼行高速バスの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない。皆さんが感じる“やばさ”や、ぜひ乗るべきというような推しがあったら聞かせてほしい。