【申請不要・無料で利用可】YouTube内に増殖する「ずんだもん」 東北に無関係のコンテンツに登場しても東北支援につながるカラクリ
YouTubeで見かける機会が増えた緑色のキャラクター「ずんだもん」(C)sss
近頃、YouTubeやニコニコ動画で見かける機会が増えた、ライトグリーンがシンボルカラーで枝豆のような角が生えている、女の子のキャラクター。それが「ずんだもん」だ。動画では、彼女が人工音声でさまざまなジャンルの解説をしており、その内容は歴史や経済、サブカルチャーや雑学まで多岐にわたる。6月下旬時点で、「#ずんだもん」が付いたチャンネルは1.1万、動画数は13万本を超え、なかにはミリオン再生を突破している動画もある。
【イラスト】今の感じとはちょっと違う ずんだもんの原案キャラクターと東北ずん子
ずんだもんはどのような経緯で誕生し、どう管理されているのか? ずんだもんコンテンツを手がけるSSS合同会社の代表・小田恭央氏に話を聞いた。
もともとは東北復興のキャラクターとして誕生
そもそも「ずんだもん」というキャラクターはどのように誕生したのかというと、2011年に起こった東日本大震災後、SSS合同会社による東北応援を目的としたプロジェクトとして始まった。
この「東北ずん子・ずんだもんプロジェクト」では、東北6県の企業や団体に対して、ずんだもんをはじめとする東北にちなんだ12種類の自社キャラクターのイラストを、申請不要・無料で商業利用することを許可している。また個人のクリエイターに対しては、商用目的でない限り、やはり申請不要・無料で利用することが可能となっている。
ずんだもんは、それまではいわゆる“萌えキャラ”のみだったプロジェクト関連キャラクターとの差別化を図り、枝豆をすりつぶした東北の郷土料理「ずんだ」をイメージしたかわいらしい見た目の“人型ゆるキャラ”として公開され、人気を博した(公式設定では「年齢の概念なし」)。
SSS代表の小田氏によれば、ずんだもんが流行りだしたのはコロナ禍に入ってからだという。
「2020年にコロナが感染拡大し始めてから、自宅でコンテンツを楽しむ人が増えたこともあって、自社キャラクターの音声合成ソフトの開発に力を入れたんです。ずんだもんの場合、キャラクターイメージを公開した時点で二次創作が生まれるほど話題となりましたが、音声合成ソフト開発によって生まれたキャッチーな声でさらに話題を集め、認知が広がっていった印象です」
この音声合成ソフトの開発と無料配布によって、ずんだもんは多くの個人クリエイターに利用されていき、現在のようにYouTubeをはじめとするコンテンツに頻繁に登場するようになった。
キャラクターが認知されれば東北地域の活性化につながる
ずんだもんが東北復興のシンボルとして生み出されたキャラクターであることはわかった。だが、投稿されている解説動画のなかには、東北と全く関係がない内容のものも少なくはない。これに対して運営側はどう感じているのだろうか。
「特に問題意識は感じていません。というのもこのプロジェクトは、ずんだもんをはじめとする自社のキャラクターが認知されればされるほど、東北地域の活性化につながるような仕組みになっているからです。
キャラクターの知名度が上がれば、東北の企業や団体の方は、キャラクターのグッズやコラボ商品を販売して利益を上げることができます。このような仕組みによって、たとえ東北に関連のないコンテンツが広がったとしても、キャラクターの知名度アップになるので、それが結果的に東北企業の支援につながっているというわけです。
だからこそクリエイターの方々には、特定の人やモノに対する誹謗中傷などの悪質なコンテンツでない限り、キャラクターをどんどん自由に使ってほしいと思っています」
運営側は、ずんだもんを利用して明確な誹謗中傷が行われている悪質なコンテンツに対しては、削除申請をしているという。そもそもキャラクターのイメージが悪くなるような使い方は利用規約に違反する。
同人関連グッズの販売においても収益を透明化
ずんだもんが人気化すれば、それが東北の支援につながるということだが、海賊版商品が発売されるなどのトラブルはないのだろうか。
「今のところ海賊版のような当社のガイドラインに反した商品は確認しておりません。同人誌などへの利用許可はしていますが、同人関連のグッズが販売されたとしても、一部の流通経路ではその利益の一部は自動的に当社に入る仕組みになっています。同人というグレーな部分が多い範囲においても収益を透明化する努力をしています」
──知名度を上げつつある「ずんだもん」。その裏には運営側の東北復興支援に対する思いがある。ユーザー側も善意を持ってこのキャラクターを利用したい。
取材=中田椋・文=瑠璃光丸凪/A4studio