1日違いで大きな差!失業手当を最大額もらえる退職のタイミングとは?【社労士が解説】
写真はイメージです Pic: Dall-E3
失業手当とは、雇用保険に加入していた人が、退職後に失業状態にあるときにもらえるものです。ということは、定年退職後にも失業手当がもらえるということになります(64歳まで)。この失業手当の金額が退職のタイミングによって変わることをご存じですか?また、65歳以上で仕事を辞めた場合はどうなるのでしょうか。定年前後の働き方にまつわる情報を掲載する本連載。今回は、退職前に知っておきたい、給付金の計算の仕方を解説します。(社会保険労務士 佐佐木由美子)
*本記事は、佐佐木由美子『1日1分読むだけで身につく定年前後の働き方大全100』(自由国民社)を再編集したものです。
失業手当の賢いもらい方は?
失業手当(雇用保険の「基本手当」)は、雇用保険に加入していた人が退職後、失業状態にあるときにもらえるものです(原則として離職前2年間に12か月以上の被保険者期間があることが必要)。雇用保険の加入期間と離職理由によってもらえる額が変わります。たとえば、60〜64歳で退職し、雇用保険の被保険者期間が20年以上ある場合は150日分の基本手当日額がもらえます。この基本手当日額は、離職直前の6か月にもらっていた給与(賞与や退職金を除く)に基づき算定した賃金日額の45〜80%となります。
ただし基本手当日額には上限があり、1日当たり約7294円(60〜64歳の場合。2023年8月時点)となります。
失業手当は65歳になる前に退職した人を対象としています。ひとつ注意したいのは、特別支給の老齢厚生年金や老齢年金の繰上げ受給をする場合。ハローワークで求職の申込みをすると、老齢年金の支給が全額ストップしてしまうからです。そう考えると、失業手当を最大額もらうには、64歳11か月で退職するのがベストタイミングと言えます。65歳以降に仕事を辞めると、「高年齢求職者給付金」がもらえますが、給付日数がだいぶ減ってしまいます(次ページで解説)。ただこれはあくまでも給付金を考えた場合の話。退職日はよく検討してください。
1日違いで大きな差。退職のタイミングは重要
【10秒チェック!】60~64歳で退職すると失業手当が支給されますが、65歳で退職すると失業手当ではなく高年齢求職者給付金が支給されます。
65歳以上で仕事を辞めたらもらえる給付金とは?
『1日1分読むだけで身につく定年前後の働き方大全100』 (自由国民社)佐佐木由美子 著
失業手当の対象となるのは64歳までに退職した場合。では65歳以上で仕事を辞めたらどうなるのでしょうか?
この場合、失業手当に代わって「高年齢求職者給付金」が支給されます。支給要件は、(1)離職日以前に雇用保険の被保険者期間が6か月以上あって、(2)失業の状態にある場合。金額の算定方法は失業手当と基本的に同じで、離職前6か月間の賃金日額の50〜80%です。給付日数は、雇用保険の被保険者期間が1年未満の場合は基本手当日額の30日分、1年以上の場合は50日分。
失業手当を受け取る場合、繰上げ受給や特別支給の老齢厚生年金等については支給停止されていました。しかし、高年齢求職者給付金についてはそうした調整はないため、老齢厚生年金と一緒に受け取ることができます。また、年齢の上限や受給回数の制限もないため、仕事を辞めて条件を満たすたびに何度でも受け取ることができます。長く働くことを考えると、心強い制度と言えるでしょう。
高年齢求職者給付金はハローワークで手続きをしますが、自己都合退職の場合、7日間の待期期間に加え2か月の給付制限があります。離職日翌日から1年の受給期限を過ぎてしまうと打ち切りになってしまうので忘れずに手続きをしましょう。
高年齢求職者給付金の支給要件
【10秒チェック!】高年齢求職者給付金は、お住まいを管轄しているハローワークで手続きをします。退職するときは離職票を早く交付してもらえるように会社に伝えておきましょう。