国会閉会へ…自民不記載事件で改憲論議進まず 「閉会中審査」が焦点
衆院本会議で内閣不信任決議案が否決され起立、一礼する岸田文雄首相(右)と閣僚=20日午後、国会(春名中撮影)
衆院憲法審査会は20日、今国会最後の定例日だったが、立憲民主党による内閣不信任決議案の提出が影響し、開催が見送られた。今国会では自民党が衆院憲法審で改憲案を取りまとめる動きを見せたものの、立民などのほか、派閥パーティー収入不記載事件を受けた政治資金規正法改正を優先させた参院自民がブレーキをかけた。今後、閉会中審査が実現しなければ、改憲を党是に掲げる自民の信頼は地に落ちかねない。
自民党憲法改正実現本部の加藤勝信事務総長は20日の党会合後、記者団に「衆参両院の憲法審の状況について(与党筆頭幹事から)報告があった」と説明した。自民幹部は「改憲案の国会提出を見据え、今後は改憲本部で衆参両院のコンセンサスをつくる」と語る。
背景には憲法を巡る衆参両院間の溝がある。
今国会初の衆院憲法審が開催されたのは4月4日。不記載事件の影響で、昨年に比べて1カ月ほど遅れた。それでも緊急時に国会議員の任期延長を可能にする必要性を共有していた自民と公明党、日本維新の会、国民民主党などは改憲案の取りまとめを模索した。
だが、改憲に否定的な立民の斎藤嘉隆参院国対委員長が今月6日、自民が改憲案の条文化作業を強行する場合、参院側で全法案の審議に応じない意向を表明するなど、逆風が強まった。
岸田文雄首相(自民総裁)は19日の党首討論で、法案審議を人質にとる立民の戦略を激しく批判したが、改憲に消極的だったのは参院の自民と公明も同じだった。
参院公明は山口那津男代表が終始、「国民の関心は低い」などと慎重姿勢を崩さなかった。単独過半数を持たない参院自民は立民と公明を刺激することを避け、規正法改正などの成立を優先。改憲案の起草作業に関しては「衆院だけで勝手に進められても困る。頭の片隅にもない」(参院自民幹部)との立場だった。
自民の「政治とカネ」が招いた改憲論議の遅れを取り戻すべく、維新や国民民主などは閉会中審査の開催を要求。自民も20日の会合で閉会中審査を求めていくことを確認した。改正規正法が成立した後も閉会中審査が実現しなければ、改憲を主張してきた自民の「言行不一致」が厳しく問われることになる。(内藤慎二)