5連敗で勝率2割、指揮官激怒の「魔の火曜日」 逆転Vへ防御率2.27の村上を援護せよ 「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記
火曜日の先発を任されている阪神の村上頌樹。今季は打線の援護に恵まれず、苦しい投球が続く=11日、京セラドーム大阪(沢野貴信撮影)
〝岡田激怒の火曜日〟をどう改善するのか? 逆転連覇を達成するための最大の鍵ですね。岡田彰布監督(66)率いる阪神は65試合消化時点で31勝30敗4分けの貯金1。首位・広島に3ゲーム差の2位につけています。21日から交流戦明けの後半戦に突入しますが、同じタイミングで38勝24敗2分けの貯金14あった昨季と何が違うのか。今季は10勝2敗と好成績の日曜日に比べ、週の頭の火曜日は5連敗中の2勝6敗2分け。日曜日以外の成績は21勝28敗4分けです。指揮官激怒→チームのムード最悪→その後に引きずる…の負のスパイラルです。先発ローテ改編か、2024年型のV打線完成しか改善策はないですね。
16日のソフトバンク戦で両リーグ単独トップの8勝目を挙げた阪神の才木浩人。今やチームの絶対的なエースだ=みずほペイペイドーム(渋井君夫撮影)
才木が投げる〝花の日曜日〟
一回、前川のプロ初の満塁本塁打で4点を奪うと、今や絶対的エースの才木が強力なソフトバンク打線を抑えて4-1の快勝です。16日のソフトバンク戦(みずほペイペイ)は左翼席から三塁側スタンドを埋め尽くした虎党が留飲を下げる試合でした。試合後の岡田監督も満足そうな表情で「なぁ、やっぱり大きいよなぁ。満塁いうたらなぁ」と前川の一発を褒めたたえていました。
7回1失点の才木は、これで自己最多に並ぶ8勝目(1敗)。防御率も1・20となり、リーグトップの大瀬良(広島)に続く2位。12試合投げて3完投=3完封ですから、指揮官も全幅の信頼をもってマウンドに送り出しています。
今季の日曜日の戦績は10勝2敗。貯金が8つもあります。ここまで貯金1(16日現在=31勝30敗4分け)ですから、もし〝花の日曜日〟がなかったらと思うとゾッとしますね。一方で日曜日以外は21勝28敗4分けの借金7なんですね。もうブルブル…ですよ。
火曜は2勝6敗2分け
交流戦は18日に雨天延期となった日本ハム戦(甲子園)の1試合を残すだけです。交流戦で6勝11敗と大苦戦した阪神はいよいよ、21日のDeNA戦(甲子園)から連覇を目指し、後半のペナントレースに突入するわけです。「球団史上初の連覇を目指して戦う」-と岡田監督が宣言した今季も残り78試合。首位・広島に3ゲーム差の2位につけている状況下、どうすれば逆転Vで連覇達成となるのか…。
5月14日の中日戦で、捕手・坂本からの送球を落球する阪神の佐藤輝=豊橋市民球場(水島啓輔撮影)
ネット裏の評論家や球団関係者たちは異口同音にこう話します。
「週の頭の火曜日の勝率を改善しないといけない。火曜日に勝てないから、ずっと重い空気で1週間が過ぎてしまう」
〝花の日曜日〟と表現しましたが、同様に表現するならば〝魔の火曜日〟です。今季の火曜日は2勝6敗2分けで、現在は5連敗中。最後に勝ったのは4月30日の広島戦(マツダ)です。
思い起こしても、火曜日はロクな記憶がありません。佐藤輝の痛恨エラーで敗れた中日戦(豊橋)も5月14日の火曜日でした。当然ながら、岡田監督が試合後に激怒するのも火曜日の夜。指揮官のご機嫌が最悪となり、チームもお通夜状態に。翌朝のスポーツ各紙には『岡田怒』の見出しが並び、チームの隅々まで沈痛なムードに包まれます。まさに負のスパイラルなのですが、ここを改善していかないと連覇の2文字は遠くにかすんでしまいます。
先発ローテ再編のリスク
優勝した昨季も交流戦終了時点まで火曜日の成績は5勝5敗でした。週の頭は両軍ともエース同士の投げ合いで厳しい試合展開が多いのですが、それでも昨季はトータルで14勝8敗。交流戦明けから火曜日の戦績は9勝3敗で大きく改善され、Vゴールに飛び込んだのです。今季、阪神が目標とするリーグ連覇を達成するためには、火曜日の勝率を上げていかなければならないことは昨季の戦いが示しています。
4月30日の広島戦で完投勝ちし、捕手の坂本(左)と喜ぶ阪神・村上頌樹。昨季のMVP右腕はこの試合を最後に勝利から遠ざかっている=マツダスタジアム(根本成撮影)
では、どうする? 今季の火曜日の先発は村上に託されています。相手エースと投げ合う試合を担っている右腕は現在、2勝5敗です。チームが勝てないのだから成績も良くないですよね。では25日の火曜日、中日戦(倉敷)から先発ローテを改編すべきなのか。考え方の一つとして、絶好調の投手を先発にする案もあるでしょう。例えば開幕から一貫して日曜日を任されている才木を火曜日に回すプランも浮上するのか。
ある阪神OBはこう指摘しました。
「才木を火曜日に変えるのは大ばくちやで。才木が日曜日に確実に勝っているから、これだけ投打の歯車がかみ合わなくてもチームは上位にいる。もし、才木を火曜日に変えて勝てなくなったら元も子もない。才木を火曜日に回して大型連勝を目指す考えがあっても不思議ではないけど、リスクもかなり高いぞ」
確かに指摘通りです。〝サンデー才木〟が機能しているからこそ、リーグ最低のチーム打率2割2分1厘でも2位でとどまっているのです。日曜日に勝てなくなる危険性を冒してまで、才木を火曜日に持っていくのは相当なばくちといえます。そして村上の防御率2・27は決して悪い数字ではなく、決して週の頭を任せられない状態ではないことは明白ですね。
打線の活性化策
では、〝岡田激怒チューズデー〟から脱出する方法は何か。答えは一つです。
「結局は打線やで。打てないから村上に負担がかかって競り負けるんや。村上だって相手を3点以内に抑えているのは数字が示している。要は打つこと。打線が上向かないとダメなんだ」とは阪神OBの話です。
これは火曜日に限った話ではないでしょう。不動の4番だった大山が打撃不振で5日に2軍落ちし、ノイジーやミエセスもサッパリ。佐藤輝や森下も打撃内容は好不調の波が大きい。さらに昨季は〝恐怖の8番〟と恐れられた木浪も、左肩甲骨骨折で16日に出場選手登録を抹消されました。光明は前川の成長だけ?の打線を活性化させてこそ、〝魔の火曜日〟から脱出でき、全体の勝率も一気に上昇するわけですね。他に知恵はありません。
打てば勝てる-。では沈滞ムードの続く打線をどうやって打てるようにするのか。方法論としては、①パ・リーグ球団とのトレードで野手を獲得する②新外国人野手の獲得③現有戦力の中で調子を上げさせる…などなどですね。
プンプン怒ってばかりでも状態は改善しません。岡田監督がこれからどういう手を打つのか…。今季の残り試合はもう「78」です。
【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て特別客員記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。