新興国債券の上昇に黄信号、インフレ再燃で中銀のタカ派姿勢強まる
(ブルームバーグ): 新興国市場の債券の上昇を後押ししてきた金融緩和局面は終わりを告げようとしている。新興国・地域の中央銀行は今やタカ派的な姿勢を強めている。
新興国市場の現地通貨建て債券のリターンはドル建て債券を下回っており、その差はここ2年間で最大となっている。インフレ再燃を受け中南米や東欧で追加利下げ観測が後退していることが背景にある。一方、アジア新興国・地域の中銀は、米金融当局よりも先に政策を緩和することに一段と消極的な姿勢を示している。
EM Dollar Bonds Outperforming Local-Currency Notes
日興アセットマネジメントのファンドマネジャー、ロバート・サムソン氏は「イージーマネーは間違いなく終了したと思う」と指摘した。
今年初めには「一世一代」のチャンスともてはやされた新興国債券の買いも、タカ派姿勢の再燃で一変しつつある。利下げ観測の後退で投資家の熱意が冷めただけでなく、ドル高も新興国通貨の押し下げ要因となっている。
ブルームバーグの指数に基づくと、新興国市場の現地通貨建て債のリターンは今年はこれまでマイナス1%となっている。2023年はプラス6%強だった。一方、ドル建て債の指数は昨年12月末からプラス2.5%のリターンを記録している。
新興国での金融緩和の可能性を縮小させているのは、米金融当局の「より高くより長く」金利を維持する方針だ。
GAMAアセット・マネジメントのグローバルマクロ・ポートフォリオマネジャー、ラジーブ・デ・メロ氏は「米金融当局は年後半の進展にとって大きな逆風だ」と指摘。「新興国市場以外でも、世界各国・地域の中銀は、米連邦準備制度が利下げという当初の計画を守ることで、ある意味自分たちを助けてくれると期待していた」と分析した。
新興国でタカ派的な兆候が強まっていることは、既に投資家の売りを招いている。ブルームバーグ集計のデータによると、新興国債に連動する世界最大規模の上場投資信託(ETF)「ヴァンエック・JPモルガンEM現地通貨建て債券ETF」はここ3カ月に資金純流出となっている。
原題:Emerging-Market Bond Rally Threatened as Hawkish Flags Multiply(抜粋)
--取材協力:Marcus Wong、Carolina Wilson.
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