スピード違反防止装置、米国の半数以上のドライバーが「受け入れる」
スピード違反防止装置、米国の半数以上のドライバーが「受け入れる」
最近行われた調査で、米国の多くのドライバー(60%以上)は、自分のクルマにインテリジェントスピードアシスタンス(ISA)と呼ばれる装置が搭載されていたら、それを受け入れると答えた。ISAとは、ドライバーが制限速度を超過すると警告を発して速度違反を防止する技術だ。また、約半数のドライバーは、制限速度を超えるとアクセルペダルが踏み込みにくくなったり、自動的に速度を抑える技術が搭載されても構わないと答えた。
これは、米国の保険業界が出資して設立した非営利団体「米国道路安全保険協会(Insurance Institute for Highway Safety, IIHS)」から6月12日に発表されたもので、ドライバーのISAに関する意識調査の主な結果だ。
「これらの調査結果は、米国のドライバーがこの国の道路をより安全にするために運転の仕方を変えようとしていることを示唆する、非常に興味深いものだ」と、IIHSのデビッド・ハーキー会長は声明で述べている。「従来の常識では、速度を制限する技術は、この国の自動車中心の文化の中では、けっして受け入れられないだろうと考えられてきた」
IIHSによると、米国における交通事故の4分の1以上は、常にスピードの出し過ぎが原因で起きているという。2022年には1万2000人以上が速度超過に関連した事故で死亡した。
「現在の技術を使えば、実質的にすべての速度超過を抑止し、おまけに速度違反切符も撤廃することが可能だ」と、今回の調査を考案・指揮したIIHSの上級調査研究者であるイアン・レーガンは声明の中で述べている。「だが、ドライバーが望めば時速90マイル(約145km/h。もちろん速度違反)に速度を固定することさえ可能なアダプティブクルーズコントロールや部分的自動運転システムなど、我々はまったく別の方向に進んでいるようだ」。
ISAシステムは、GPSと制限速度データベースを利用し、場合によっては道路標識を読み取ることができるカメラも併用して、実際に走行している道路の最高速度を特定し、車両の速度をそれに合わせて制限する。
研究員たちによれば、より強固なシステムでは、ドライバーが制限速度を超過したり、あるいは設定された範囲を超えて速度超過すると、警告音を鳴らしたり、警告ランプを点滅させる。または、アクセルペダルを重くして踏み込みにくくしたり、エンジンの出力を絞ってドライバーがスピードを出し過ぎるのを防ぐシステムもあるという。
欧州連合(EU)は7月から販売されるすべての新車に、最低でも音声や視覚を通してドライバーに速度超過を警告するシステムの搭載を義務付ける。ただし、ドライバーはこのシステムをオフにすることができるようになると、IIHSの研究員は述べている。
米国で採用される見込みのあるISAシステムは、どんなものであれ、ドライバーにオフにする選択肢を与える可能性が高いため、今回の調査結果によれば、人々が受け入れられる範囲でのみ有益になるだろうと、IIHSは述べている。
1802人のドライバーを対象に、3つのグループに分けて行った今回の調査では、車両の速度を制御するために介入するシステムよりも、ドライバーに警告を与えるシステムのほうが好まれる傾向が見られた。
ISAシステムが搭載されたクルマなら、ドライバーがスピードを出し過ぎることはないという根拠に基づき、保険会社が保険料を引き下げるのであれば、全グループの約70%のドライバーが、次に購入するクルマにはISAシステムを搭載してほしいと答えた。
その他、今回の調査では以下のようなことがわかった。
・頻繁にスピード違反をするドライバーは、たまにスピード違反をするドライバーや、滅多にスピード違反をしないドライバーに比べて、ISAを受け入れる可能性が20%低かった。このことは、ISAを最も必要とするドライバーが最も利用しない可能性があることを示唆している
・全体として、アクセルペダルを踏み込みにくくするシステムと、介入して速度を制御するシステムについて、それぞれ尋ねられた2つのグループでは、約半数が頻繁にこの機能を無効にするだろうと答えた
・連邦政府がISAシステムの搭載を義務化すれば、抵抗を克服できる可能性がある
・ドライバーは、他のほとんどのクルマにISAが搭載されていれば、自分もそれを受け入れると答える傾向が強かった。過去の調査では、自分がゆっくり走ると他のドライバーをイライラさせるのではないかと心配していることが示されていた
・高速道路や州間幹線道路では制限を緩和し、スクールゾーンなど歩行者や自転車の多い場所では厳格にするシステムであれば、ドライバーは速度超過防止技術をより受け入れやすくなるかもしれない
「このテクノロジーは、過去にはけっして不可能だった微妙な介入を可能にする」とハーキーは続ける。「次の課題は、自動車メーカーとドライバーにこの技術を受け入れるように勧め、人の命を救えるようにすることだ」
この調査に関する詳しい情報は、IIHSのサイトで閲覧できる。
(forbes.com 原文)