「ヒグマとツキノワグマの悪魔合体が起きている」…!いま秋田の猟師たちが恐れる「最凶のハイブリッド熊」の正体

前編記事『「警察官の鼻が半分もげて、めくれあがり」…秋田のクマ出没現場にいた目撃者が振り返る、エグすぎる「襲撃の瞬間」』より続く。

「稀グマ」の存在

高橋さんは、声を上げる余裕もないまま一目散に逃げだした。記憶に残っているのは、後方から聞こえる「助けて」という警察官のか細い声と、自分を追い越して逃げる消防隊員たちの姿だ。

「消防隊員たちと車に戻って息を整えていると、血だらけになった若い警察官が戻ってきたんです。右耳から顎までが割れていて、鼻の半分はえぐれてなくなっていた。あまりにも凄惨な状態だったもので、脳裏に焼きついてはなれません。

その後、中年の警察官が身体を引きずるようにして歩いてきました。『腕に力が入らない』と口にしたのを覚えています。腕を攻撃されて神経を損傷したのでしょう。すぐ2人は救急車で搬送されました」(高橋さん)

その後、クマに襲われないよう重機で遺体を搬送することになり、林道を広げる工事を行った。ようやく遺体を回収できたのは、死亡から1週間が経った22日のことだ。

「ヒグマとツキノワグマの悪魔合体が起きている」…!いま秋田の猟師たちが恐れる「最凶のハイブリッド熊」の正体

Photo by gettyimages

「佐藤さんは、山菜やタケノコを売ったわずかな稼ぎと、身体が不自由な奥さんの障害年金でギリギリの生活をしていました。佐藤さん自身も手に障害を持っていて、ずっと定職に就くことができなかった。つい先日、『もう身体が言うことを聞かないから山に入るのが厳しくなった』と話していた矢先の出来事なので、本当に切ないです」(佐藤さんの友人)

この事件を受けて、県は発令中のツキノワグマ出没警報を延長。佐藤さんを襲ったクマについては、県の緊急対策会議で「人そのものを『食べ物』と認識して攻撃する個体」の可能性があるという衝撃的な分析が出された。まだ佐藤さんを襲ったツキノワグマは見つかっていない(5月29日時点)。

狩猟文化研究者の田口洋美氏はこう解説する。

「元来、ツキノワグマはブナやドングリなどを主食とする草食に近い雑食性の動物です。臆病で警戒心が強く、めったに人や動物を襲うことはない。積極的な攻撃性を持つヒグマよりは、人間との遭遇を察知して回避することを選択する動物です。

人を食べ物だと認識するクマは、猟師の間で『稀グマ』と呼ばれるほど珍しい存在なのです」

「K」の遺伝子は残った

県が佐藤さんを襲ったのが「稀グマ」であるかのように考えたのはなぜか。それは、本州史上最悪の獣害として知られる「十和利山クマ襲撃事件」を起こした、「スーパーK」を思い出さざるを得なかったからだろう。

十和利山クマ襲撃事件とは、'16年の5月中旬から6月にかけて、同じ十和田大湯エリアの山中に入った4人が死亡、4人が重軽傷を負った事件だ。すべての遺体が食い荒らされ、枯れ葉や土が覆うようにかけられていた。

当時、主犯と目されていた雄グマにつけられた名前が「スーパーK(鹿角市の頭文字)」だ。この事件について、鹿角市の地元住民はこう語る。

「人間を襲撃し、食害したクマは主に2頭いました。1頭は、3人を食い殺したスーパーK。そして、もう1人を食い殺したのがスーパーKの母親。120キロ級と大型で、赤毛の雌グマです」

同年9月にスーパーKは箱ワナで捕獲され駆除される。ところが母グマは、様々なワナをかいくぐって生き残った。

それから8年後、同じ十和田大湯エリアで人を殺し、枯れ葉で遺体を隠すツキノワグマが現れた。こうした経緯が、関係者の間で「佐藤さんを殺したクマと、スーパーKは関係があるのでは」と言われている所以だ。

つまり、「逃亡したスーパーKの母グマが、次々とスーパーKのような『人食いグマ』を産んでいる」という説だ。

「ヒグマとツキノワグマの悪魔合体が起きている」…!いま秋田の猟師たちが恐れる「最凶のハイブリッド熊」の正体

Photo by gettyimages

「この十和田大湯の地域には、人間の味を覚えたスーパーKの系統が幅広く生息していると考えられます」(高橋さん)

また、本来は草食性のツキノワグマが、肉を食べるようになった原因を前出の田口氏が推測する。

「'70年代後半に環境庁は、減少傾向にあったニホンジカやカモシカの保護政策をとりました。すると両者は爆発的に増殖。個体数が増加したカモシカを、ツキノワグマが捕食するようになったのだと考えられます。人間の味を覚えたのは、山中に入った行方不明者などの死体を漁るようになったからかもしれません」

クマ牧場の杜撰な管理体制

人間の肉を食べるようになったと考えられる背景は以上の通りだ。だが、ここでひとつの疑問が残る。前述のとおり、ツキノワグマは臆病で警戒心が非常に強い。弱っている人や遺体ならまだしも、スーパーKや佐藤さんを襲ったクマのように、積極的に人を襲う個体が現れたのはなぜなのか—。

その疑問に答えてくれるような証言を、本誌は地元住民から得た。

「10年以上前の冬に、八幡平のクマ牧場から逃げ出したヒグマがいたっていうのは地元では知られた話だ。そのヒグマが、ここらのツキノワグマと交配して子供を大量に作っているんだろう」(鹿角市の土木業者社長)

八幡平のクマ牧場とは、秋田県鹿角市にあった「秋田八幡平クマ牧場」を指す。この牧場は、'12年に起きた大事故によって閉鎖に追いやられた。

「牧場から6頭のヒグマが脱走して、従業員2名を殺したのです。4.5メートルの高さがあるコンクリート塀に囲まれていたため、普通は逃げられません。ただ、積もった雪が雪かきで一角に集中して投棄されていた。その雪が壁の上部から約1メートル下にまで達していたことから、ヒグマは雪を登って逃げ出したことがわかりました」(地元新聞社社会部記者)

「ヒグマとツキノワグマの悪魔合体が起きている」…!いま秋田の猟師たちが恐れる「最凶のハイブリッド熊」の正体

Photo by gettyimages

駆け付けた地元猟友会によって、逃亡した6頭はすべて射殺されている。そしてその後、牧場の杜撰すぎる経営が取り沙汰されるようになった。

このクマ牧場は、飼養管理台帳の作成を怠り、飼育頭数を把握していなかったことが明らかになったのだ。最盛期には約130頭いたクマは事件当時30頭あまり。すべて死亡していたと仮定しても、クマの死骸をどう処理したのか示す記録が残っていなかったという。

こうした管理体制を把握していた地元住民たちは、「報道されていないだけで、逃げ出したヒグマは他にもいる」とかねてから話題にしていた。

恐怖の「ハイブリッド個体」

佐藤さんの遺体の第一発見者である高橋さんは、こう語る。

「何年も前から、一般的なツキノワグマの倍ほどもある大型の個体を見たと、山の仲間たちは話していました。私たちは、ヒグマとツキノワグマが交配して誕生したであろう彼らを『ハイブリッド個体』と呼んでいます。

ヒグマの体格と獰猛な性格を受け継いだ個体が、秋田の山の中をウロウロしていると思うと、恐ろしくてたまりません」

スーパーKやその母グマ、そして佐藤さんを襲ったクマが「ハイブリッド個体」であれば合点がいく。いずれもヒグマ特有の「積極的な攻撃性」を持っているからだ。

「ヒグマとツキノワグマの悪魔合体が起きている」…!いま秋田の猟師たちが恐れる「最凶のハイブリッド熊」の正体

Photo by gettyimages

ただ、クマとはいえ種の違う動物同士が交配を重ねることはありうるのか。動物研究家のパンク町田氏は、こう解説する。

「ヒグマとツキノワグマが交配する可能性はあります。そう考えると、今回の事件を起こしたクマにはヒグマらしい性質が2つあります。

1つは、捕獲した獲物に対する執着心が異様に強い点。もう1つは、積極的に走って人を襲った点です。このクマは、異なる種が交配をしたことで、ヒグマの攻撃力とツキノワグマの立体的な敏捷性という両者の特性を併せ持っている可能性も否定できません」

スーパーKの遺伝子を継いだ「ハイブリッド個体」が、本州全土に出没する日は近い。

「週刊現代」2024年6月8・15日合併号より

・・・・・

つづく記事『「遺体はすでに硬直し、足は曲がったままで…」秋田でクマに襲われ死亡した男性の「第一発見者」が明かす「恐怖の現場」』では、現地で起きた“悲劇の深層”について、より詳しく報じています。

OTHER NEWS

1 hour ago

今田美桜、橋本環奈、浜辺美波、広瀬すず…Z世代が注目する女性俳優ランキング 1位は?

1 hour ago

〈鹿児島県知事選〉政治不信、都市部との格差…課題山積の県政かじ取り、だれに託す? 有権者は「独自色」や「市民感覚」を厳しく見極め

1 hour ago

石橋貴明 佐々木朗希の2度の抹消に「吉井監督がずっと言っていたのは“タカさん、本格化するのは…”」

1 hour ago

ド軍指揮官 山本由伸、ベッツら故障者続出も好調のチームは「順調だ。明らかに翔平の状態は良い」

1 hour ago

北極圏に40年放置の秘密基地 ステルス戦闘機用で復活 ウクライナ戦争が影響か

1 hour ago

黒猫にタキシード猫がぞくぞくと現れた…さすが紳士の街ロンドン

1 hour ago

小さな子猫が『大きなドア』をこじ開けようとした結果…予想外の結末が凄すぎると4万6000再生「可愛くて賢い」「とにかく健気」

1 hour ago

TWICE、7月に開催される日産スタジアム公演のライブビューイングが決定!

1 hour ago

スズキ「最上級SUV」実車公開! 精悍“3灯”ライトが超カッコイイ! ハイブリッドSUV「グランドビターラ」インドネシアに登場

1 hour ago

韓国「ウクライナ支援リストを考慮」…プーチン大統領の「悪い行動」防ぐカード

1 hour ago

大雨影響で広島や山口のJR在来線の一部運休 芸備、福塩線の一部で終日運転取りやめ 山陽線や可部線は通常運転

1 hour ago

Snow Man・目黒蓮&向井康二&深澤辰哉、杉野遥亮らが対決! 『夏の新ドラマ大集合 THE BET』あす放送

1 hour ago

世界的アーティストが大谷翔平を大胆スケッチ 独特な色彩感 頬にはハートマーク 星をイメージした構図は圧巻

2 hrs ago

<速報>山下美夢有が首位と1差2位でホールアウト 渋野日向子は3差

2 hrs ago

「伏線回収、間に合いそう?」『ワンピース』物語最序盤に残された未解明の謎

2 hrs ago

【広島】大瀬良大地が開幕から無傷4勝 連続無失点は29イニングに 33歳右腕は進化止めず

2 hrs ago

Snow Man宮舘涼太、単独MC番組「黄金のワンスプーン!」第4弾放送決定 SixTONES松村北斗の願い叶える

2 hrs ago

大商大・渡部聖弥、紅白戦で3安打1打点「春先や大学選手権の課題を修正、いい方向に」手応え

2 hrs ago

高橋尚子さん「本当に辿り着くのか心配しましたが、無事到着」

2 hrs ago

岐阜・大垣市の杭瀬川、氾濫危険水位超え685世帯に避難指示

2 hrs ago

片山晋呉が「こんなに集まるのゲキレア!」と集合写真投稿 自身のバッグを担いだくれた面々と白つなぎ姿 SNS「人脈ですね!!」

2 hrs ago

[バイクの仕組みQ&A] 油圧式/ワイヤー式クラッチ、何がどう違うのか?

2 hrs ago

大きな地震もないのになぜ津波? 伊豆諸島最南端「孀婦岩」周辺 海底火山の隆起が原因だった

2 hrs ago

【神戸】滅多に買えない!希少な『Le Pont』の絶品タルト

2 hrs ago

安いのにメチャ明るいウェアラブルな「クッソ明るいベルト付ライト」

2 hrs ago

有毒な果実がたわわに実る中、開花する艶やかな美しい花、注意も必要な花なの?花言葉は「一夜の恋」!

2 hrs ago

【巨人】菅野智之が6勝目へ23日ヤクルト戦先発「当たり前のことをしっかり徹底」今季同戦2戦2勝

2 hrs ago

「中国が日本に負けたのは当然だ」「みんな背低いのに…」 女子バレー日本の世界1位撃破にライバル中国も震撼【ネーションズリーグ】

2 hrs ago

【漫画】トイレに向かった彼氏に魔の手が忍び寄る…【夫の死体が消えている Vol.158】

2 hrs ago

【陸上】北口榛花が64m28!11連勝でストップも今季自己ベストで弾み

2 hrs ago

Snow Man宮舘涼太、SixTONES松村北斗からのリクエストでドラマの撮影現場に手料理を差し入れ<黄金のワンスプーン!>

2 hrs ago

カブス・鈴木誠也 4試合ぶりの打点は先制打

2 hrs ago

猫が動物病院の『診察台』の上で見せた行動…健気な姿に思わず涙してしまうと52万7000再生「怖かったね」「愛と信頼」の声

2 hrs ago

假屋崎省吾、No.1だと思うホテルの朝食を公開「すごい量」「ビックリ」の声

2 hrs ago

櫻井翔総合司会『THE MUSIC DAY』出演者第1弾25組発表 STARTO勢7組、Number_i、ミセス、吉川晃司も

2 hrs ago

クライミング野中がパリへ 五輪予選、スケボー赤間も

2 hrs ago

登山者を悩ませる「ヒル」、実はジャンプできると判明! 100年の疑問を解決する「決定的瞬間」の動画

2 hrs ago

出産したばかりの超名家出身女優 「ジーンズやっと履けた」私服S公開に「完全復活」「スタイル良すぎ」

2 hrs ago

【速報】女子ゴルフは4年ぶりの月曜日決着へ 悪天候で第3ラウンドの再開は13時に

2 hrs ago

父が『筋トレ』をしていたら犬が…まさかの妨害行為が31万再生「優秀なパーソナルトレーナー」「絶対集中できないw可愛いw」と絶賛