女子100メートルで小針陽葉が連覇…どん底からの復活にのけぞりガッツポーズ…東海高校総体
女子100メートルで優勝した小針(左)と2位に入った佐野がゴール前でデッドヒート(カメラ・塩沢 武士)
◆陸上◇東海高校総体(15日・長良川競技場)
女子100メートル決勝で、小針陽葉(富士市立3年)が向かい風3メートルの中、12秒02で2位・佐野釉梨(静岡市立3年)に0・03差で競り勝って連覇を達成した。男子100メートル決勝では、土屋太陽(富士見3年)が10秒59でV2。女子800メートル決勝は、遠藤瑞季(富士市立3年)が大会記録にあと0・12秒に迫る2分8秒52の好タイムで初優勝を飾った。
後ろに倒れそうになるぐらいのガッツポーズで、喜びを爆発させた。女子100メートルで、故障続きだった小針が連覇を達成だ。「うれしいの一言。最後どっちか分からなかったけど、自分の名前がアナウンスされて優勝って分かった」。高1の全国総体では短距離2種目で銀メダルを獲得したスプリンターが完全復活した。
予選では11秒94の好タイムをたたき出した。「向かい風(マイナス1・7メートル)で11秒台が出たのは収穫だった」。決勝でもマイナス3メートルの中、12秒02でまとめた。「風がなければ11秒7ぐらいは出たので、合格点です」と、手応えをつかんだ。
昨年は地獄を味わった。5月の静岡国際の200メートルで高校歴代3位の23秒52をマーク。東海総体では、短距離2種目と走り幅跳びの“3冠”を達成。しかし好調から一転、同7月の県選手権で右太ももを痛めてから故障が続いた。夏の全国総体400メートルリレーで左太ももを負傷。秋に同じ箇所を痛めると、今年の1月には右太もも痛を再発させた。
当初は高2時に全国総体で3冠を達成し、今年はパリ五輪を狙うプランだった。だが、けがですべてが崩れた。「陸上を辞めたいと思う時もあった」。心の支えは家族だった。ナショナルトレセンにリハビリに通うため、母親に何度も車で送ってもらった。
ただ挫折を経験したことで、精神面も含めて一回り大きくなった。「けがして良かった。自分の走りを見つめ直せることができた」。27日からはU20日本選手権に出場予定。「U20世界ジュニアの出場権も懸かるし、全国総体の前哨戦にもなると思う」。復活した小針が再び、世界を見据える。(塩沢 武士)
◆小針 陽葉(こばり・あきは)2006年12月19日、沼津市生まれ。17歳。小1から沼津陸上で競技を始める。沼津原中から富士市立高に進学。家族は両親と姉、兄。163センチ。
〇…男子100メートルで連覇が決まると、土屋は右手を突き上げて喜んだ。「うれしくてガッツポーズが出ちゃいました」。予選は「まずまず」だったが、準決勝の走りは不満が残った。決勝前に、自己ベストの10秒47をマークした東部総体の動画を見てフォームをチェック。「スタートでの前傾姿勢が少しおかしかったので、修正した」。昨年、東海王者として臨んだ全国総体は雰囲気にのまれ、力を出せないまま予選敗退。「一度経験しているので、今年は平常心で臨んで、優勝を目指したい」と、力を込めた。
〇…女子800メートルは遠藤が自己記録を更新する2分8秒52で初優勝を飾った。一度も先頭の座を譲ることなく、予選、準決勝、決勝と3本を走り切った。「ベストを出して優勝が目標だった。ただ、もう少しで大会記録(2分8秒40)だったので、そこはちょっと悔しい」。わずか0・12秒及ばなかったことを残念がった。「決勝前のサブトラックのアップ中に、陽葉ちゃんが優勝したというアナウンスを聞いて、よし自分も優勝しようと思った」。けがで苦しむ姿を見続けてきたチームメイトとの“アベックV”を喜んだ。