<ザ・ベストセラー>ミステリー愛好家が注目
(1)地雷グリコ 青崎有吾 著
今、ミステリー愛好家が注目する本があります。それが青崎有吾さんの(1)『地雷グリコ』です。先月、本格ミステリ大賞、日本推理作家協会賞、山本周五郎賞と立て続けに3つの文学賞を受賞。今月13日には直木賞にノミネートされ、話題を集めました。
主人公は勝負事にめっぽう強い女子高生・射守矢真兎(いもりやまと)。ひょうひょうとした外見とは裏腹に、類いまれなる洞察力と推理で次々と強敵を打ち負かしていきます。
この小説が他と違うのは、勝負の仕方。じゃんけんで階段を上がる“グリコ”やだるまさんがころんだなどの他愛のない子どもの遊びに、特殊なルールを追加・変更することで奥深い頭脳戦に仕立てています。これが面白い! 真兎はある秘密を抱えており、後半は予想もつかない怒濤(どとう)の展開へ。将来、ドラマか映画になると確信しました。
(2)不夜島(ナイトランド) 荻堂顕(おぎどうあきら) 著
もう1冊は、同じく今年の日本推理作家協会賞を受賞した荻堂顕さんの(2)『不夜島』です。第2次世界大戦後の沖縄・与那国島。密貿易で栄えるネオン輝く街(シティ)で、台湾人ブローカーの武庭純(ウーティンスン)が巨大な陰謀に巻き込まれる物語。
自らの体を義肢や電脳に置き換えるサイバーパンクと架空の歴史の闇が、独特の世界観を生み出しています。ハードボイルド×SF。骨太の推理をお楽しみください。
(3)AX アックス 伊坂幸太郎 著
最後は伊坂幸太郎さんの(3)『AX アックス』。英訳版が今年の英国推理作家協会賞のイアン・フレミング・スチール・ダガー賞の最終候補に選ばれました。
すご腕の殺し屋でありながら、妻に全く頭があがらない恐妻家の「兜(かぶと)」。引退に必要な金を稼ぐため、仕方なく依頼を引き受けていますが、ある事件から窮地に陥り…。さすがは伊坂さん。泣ける殺し屋小説は初めてでした。
気になる選考結果は7月4日に発表予定。朗報を期待したいですね。 (谷野哲郎)
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