「もし爆発物だったらタダではすまんかったはずや…」不肖・宮嶋、中国の不審飛行体に“狙われた”超巨大空母「R.レーガン」に乗艦撮!
約9年間、横須賀の主に君臨していた米海軍の空母「ロナルド・レーガン」が帰国の途に就いた。ただの空母ではない。米軍唯一の前方展開空母である。「前方展開」すなわちアメリカ本国から遠く離れた敵の前方でもある日本を事実上の母港とした空母なのである。
しかも原子力動力、今回のアメリカ帰国もその核燃料の積み替えも含めた大幅なオーバーホールのためであり3、4年はかかるといわれている。横須賀出港前、「R.レーガン」の飛行甲板上ではラーム・エマニュエル駐日米大使による「R.レーガン」乗員に対する祝辞や記者会見や「R.レーガン」艦長ダリル・D・カードーン大佐と第5空母打撃群司令官グレゴリー・D・ニューカーク少将とのインタビューも行われた。
海上自衛隊横須賀基地に停泊中の実質空母改修予定の護衛艦「いずも」。中国のドローンにはここに停泊中に上空に侵入され盗撮された ©宮嶋茂樹
もしアメリカ海軍の主力空母をウクライナ戦争に派遣したら…
2018年には不肖・宮嶋もハワイの真珠湾と西太平洋上で乗艦したこともあるが、この動く空軍基地と化した「スーパー・キャリアー」の巨大さに圧倒され、また「世界で最も危険」と言われる飛行甲板でのFA-18スーパーホーネットの発着艦訓練のド迫力に腰を抜かしたもんやが、この第40代アメリカ合衆国大統領の名を冠するだけに、艦内には昭和天皇や中曽根元首相との記念写真が飾られていたのも印象的であった。
米海軍の空母といえば、昨今のトム・クルーズ主演の映画「トップガン マーヴェリック」の舞台ともなったが、この「R.レーガン」は映画「トップガン」にも登場した「セオドア・ルーズベルト」と「エイブラハム・リンカーン」と同じ「ニミッツ級」空母の9番艦である。この空母1隻で「トップガン」で主役をつとめたFA-18戦闘攻撃機スーパーホーネットを含めた航空機最大75機を運用でき、満載排水量は実に10万トン超、全長333mは同じ横須賀を母港とする実質、空母改修中の護衛艦「いずも」より80mもながく、乗員は航空要員も含めると6,000人である。
もうこのニミッツ級空母1隻でヨーロッパの1国分の空軍力に匹敵するのである。それはそんな空母1隻を現在の黒海に派遣するだけで、ウクライナ侵攻中のロシア軍はうわつき、ロシア黒海艦隊は自滅し、地上部隊もロシアに逃げ帰っていくとまで言われるくらいである。そんな不沈アイランドで最高速度が30ノット以上、これら原子力動力のおかげである。原子力のメリットはそのパワーだけやない。煙が出ない、イコールその図体の大きさからでも敵に目視では発見されにくい。
航空燃料は別やが、燃料の補給も必要ないし、真水も原子炉の熱を利用し無尽蔵にできる。そして空母機能の命ともいえるカタパルトの動力の蒸気やリニア(電磁式)でも充分まかなえる。まあ当たり前や、艦内に原発あるんやから。
もちろんええことずくめの訳はない。
いくら最強の戦闘機部隊を搭載しているとはいえ、このどんがらである。敵からしたら、大きいイコール目標になりやすい、故に空母単艦では怖くて動けない。
それで対空目標に対する複数のイージス艦や、敵潜水艦に対し原潜まで従えた空母打撃群として行動するのである。さらにこれまた当然高価である。それもとてつもなく高くつく。最新式の電磁式カタパルトを有する空母「ジェラルド・R・フォード」に至っては130億ドルである。円安のこのご時勢では1兆いや2兆円を超える。
強大で高価な空母を狙う中国のドローン
アメリカはこんな原子力空母を11隻も保有しているのである。
あの侵略国家ロシアまでがもてあましたほど高価でその運用が難しいのである。それは国家のプレゼンス(存在感)を誇示できるほどにである。事実日本国憲法がなくても別に日本は変わらんかったやろけど、「米空母」や米軍基地が日本になければ、とっくに北海道はロシア領に沖縄本島は中国の「太平洋州」になっていたはずである。
しかしそんな高価な空母も「戦艦」「巡洋艦」同様、時代遅れと言われるようになってきた。現に空母の何万分の1にもならん中国製のドローンに「R.レーガン」も、同じく横須賀を母港とする実質、空母改修予定中の護衛艦「いずも」も、低空でオントップ(直上侵入支配)を許してしもうたんのである。もしヘルファイヤーミサイルや爆発物が搭載されてたり、自爆型やとしたら「R.レーガン」も「いずも」もただではすまんかったはずである。
直ちにこんな不審飛行体に対し撃墜するなり、破壊工作に対する対抗策をたてなあかんちゅうに、我が国には反スパイ法すらなく、それゆえアメリカをはじめとした諸外国から信用を失くすばかりか、敵国からはなめられっぱなしである。現に民放が接触に成功したこの画像を撮影しインターネットにさらした中国人は堂々と中国大陸に帰国し再び何食わぬ顔で訪日しても、逮捕もできんのである。
「R.レーガン」は、2011年3月に発生した東日本大震災発生直後には在日米陸海空軍、海兵隊とともに「トモダチ作戦」にも参加。その巨艦に物言わせ、大量の支援物資や人員を被災地に届けてくれたのを日本人は忘れはしない。また第7艦隊の主力艦として海上自衛隊とも訓練をつづけながら、インド洋や西太平洋上までの広大な海域で警戒監視任務を続け、南シナ海での中国による一方的な力による現状変更に対する「航行の自由」作戦にも参加してきた。
「R.レーガン」が残した最後の人文字
そんな「R.レーガン」は16日10時20分、3,000人の乗員の家族らに見送られながら横須賀基地を煙もたてず出航した。「みんな愛してる」「パパ、寂しくなるよう」子供らが掲げる手作り感丸出しのプラカードに無情にも雨が打ち付ける。
「R.レーガン」はアメリカへの帰路も警戒監視パトロール任務を帯び航海をつづけ、ワシントン州ブレマートンの海軍造船所でしばし長い休暇をとることになる。その間、前方展開空母の日本不在はあえて名を出さんが日本周辺の敵国に列島侵略の機会を与えるだけである。後任には「R.レーガン」と同じくニミッツ級の6番艦「ジョージ・ワシントン」通称「GW」が核燃料積み替え等の改修を終え、すでにアメリカを発ち、横須賀に向かって航行中であるという。
「R.レーガン」が浦賀水道をぬけるころ、その広大な飛行甲板ではクルーが人文字を作って日本人にメッセージを送ってくれた。そこにはひらがなで、いつもの「さよなら」でなく「ではまた」とあった。
撮影 宮嶋茂樹
(宮嶋 茂樹)