元阪神・高山、元広島・薮田らは難しい? 二軍の新規参入球団から「NPB復帰が可能」な選手いるか
今年のプロ野球で昨年までの大きな変更点と言えばオイシックス新潟アルビレックスBC、くふうハヤテベンチャーズ静岡のファーム2球団が新規参入したことである。両チームとも現在最下位に沈んでおり(5月21日終了時点)、苦しい戦いが続いているが、その中で存在感を示している選手はいるのだろうか。今回はNPBでプレー経験があり、復帰を目指す選手の現状について探ってみたいと思う。
まず最も注目度が高い選手と言えるのが昨年まで阪神でプレーしていた高山俊(オイシックス)だ。明治大では東京六大学で歴代最多となる131安打を放ち、ドラフト1位で阪神に入団。1年目には136安打を放ち新人王に輝いたが、それ以降は成績を落とし、昨年限りで自由契約となり、オイシックスでプレーを続けることとなった。ここまでの成績を見てみると、35試合に出場して31安打、1本塁打、10打点、打率.267という数字となっている。いずれもチーム内では上位ではあるものの、何かが突出しているわけではなく、強いインパクトを残すことができていないというのが現状だ。今年4月で31歳となり、年齢的にもNPBが獲得するのであれば当然即一軍での活躍が求められるだけに、ここからよほど状態を上げて打ちまくることができなければ、今シーズン中のNPB復帰は難しいと言えるだろう。
陽岱鋼(元巨人など、オイシックス)、福田秀平(元ロッテ、くふうハヤテ)の2人もNPBでの実績は申し分ないが、いずれも目立った成績を残すことはできていない。強いて言えば倉本寿彦(くふうハヤテ)が限られた出場機会の中で3割を大きく超える打率をマークし、さすがの打撃技術を見せているものの、33歳という年齢を考えるとNPB復帰の可能性は高くはないだろう。また、実績はないものの、抜群の強肩が関係者の間で話題となっていた谷川唯人(くふうハヤテ)は度重なる無免許運転が発覚し5月2日に退団となった。若手捕手不足の球団もあっただけに、何とももったいない話である。
一方の投手で最も結果を残している選手と言えば田中健二朗(元DeNA、くふうハヤテ)になるだろう。ここまでリリーフで14試合に登板してチームトップの3セーブをマークし、防御率0.00を記録しているのだ。ストレートは140キロ前後と速さはないものの、サウスポーらしいボールの角度と走者を背負ってからの粘り強い投球は健在だ。今年9月で35歳と完全にベテランであり、NPB復帰へのハードルは高そうだが、左のリリーフは需要が高いだけに、この投球を続けていけば獲得を検討する球団が出てくる可能性もありそうだ。
投手でもう1人活躍を見せているのが薮田和樹(元広島、オイシックス)だ。プロ入り3年目の2017年には15勝3敗で最高勝率のタイトルを獲得。しかしそれ以降の6年間で4勝に終わり、昨年オフに自由契約となった。オイシックスではここまでチームトップとなる56回1/3を投げて1勝3敗ながら、防御率は2.56とまずまずの数字を残している。ストレートはまだ140キロ台後半をマークすることも珍しくなく、小さく変化するツーシームやカットボールも悪くない。35四球と課題のコントロールは解消されているとは言い難く、今年で32歳と若くないだけにNPB復帰は簡単ではなさそうだが、今後の投球次第ではまだ可能性は残されているのではないだろうか。
その他の投手ではオリックスをわずか1年で自由契約となった西濱勇星(くふうハヤテ)も積極的に起用されているものの、防御率は4点台と結果を残すことはできていない。まだ若いだけに、将来性をアピールできるかが重要になるだろう。
こうしてまとめてみると、現時点で有力なNPB復帰候補は不在という印象は否めない。ただシーズン中に思わぬ故障で長期離脱となった選手が出てきた時に、調査の対象となる選手が出てくることは可能性はあるはずだ。ここからさらに調子を上げて、さすが元NPBというプレーを見せてくれる選手が出てくることを期待したい。(文・西尾典文)
西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。