38年ぶり円安、弱気派にぎわうオプション市場-下げ加速で介入誘発も
(ブルームバーグ): 円相場が対ドルで約38年ぶりの安値を更新し、ドル・円のオプション市場ではさらなる円安を見込む取引が活発だ。行使価格を超えて進めば、円売りのスピードも加速し、かえって日本の通貨当局による為替介入を誘発するリスクがある。
米証券保管振替機関(DTCC)によると、26日のドル・円のオプション出来高は304億ドル(約4兆8900億円)に膨らみ、日本時間早朝に円買い介入があったと市場でみられている5月2日以来の高水準となった。円が対ドルで約38年ぶりの安値更新したことを受け、多くのオプションが取引された。
ドイツ証券外国為替営業部の小川和宏ディレクターは、26日に160円を超す円安が進んでから一段のドル高・円安を見込むオプション取引が増えていると説明。それまでのオプションは「161-162円を想定した程度だったが、全体的にドル高・円安方向にスライドしている」と言う。
ドル・円のオプション取引高推移 | 約2カ月ぶりの高水準
円安進行はエネルギーや食料品などの輸入価格の上昇を通じて家計に打撃を与え、国内個人消費の重しとなっている。同時に、追加の利上げタイミングを探る日本銀行から見ても物価の上振れ要因となるため、市場では日銀が7月の金融政策決定会合で政策金利を引き上げるとの観測が徐々に高まっている状況だ。
DTCCによると、26日から28日にかけて取引されたドル・円のオプションのうち、7月中に権利行使期限を迎えるものでは行使価格165円50銭までに多くの取引が集中。最も円安水準の行使価格は170円だった。低金利の円より高金利のドルに対する需要の強さから、市場では比較的早期の170円到達説も出ており、足元のオプション動向はこうした見方を裏付ける。
170円も視野に、市場介入リスクにも動じない為替トレーダー
28日には円は対ドルで161円台前半とさらに下落。政府・日銀は4月末に円が160円台を付けた後、過去最大となる9兆8000億円規模の為替介入を実施したが、既に介入効果は消え、円の先安観と新たな介入警戒感が高まっている。ドイツ証の小川氏は「163円を超えた水準からオプションに絡む取引で円売りが加速しやすい形になっている」と指摘した。
日本時間今夜には、米金融当局がインフレ指標として重視する個人消費支出(PCE)価格指数が発表される。結果は米国の利下げ見通しを左右するため、発表後の相場の急変動と円買い介入の可能性に対し市場の警戒感は強い。
円買い介入はPCE発表後か、性急な行動にはリスク-市場関係者
More stories like this are available on bloomberg.com
©2024 Bloomberg L.P.