IMALU「スカートを履くのが苦手だった」離島ライフで考えた”違和感”の正体
2022年8月、東京と奄美大島の二拠点生活をスタートしたタレントのIMALUさん。コロナ禍でリモートワークが進み、サラリーマンであっても勤務地に縛られずに住みたい場所に住むことが夢ではなくなってきた昨今。実際に都会から拠点を移したIMALUさんの離島ライフを、ご本人に綴っていただきます。(以下、IMALUさんによる寄稿です。毎月1回更新予定)
天井からヘビ
先日、突然リビングの天井からコードのような物が出ていることに気づきました。「何かのコードが出てきちゃった……?」と首を傾げながら近づいてみると、まさかのヘビが顔を出していました(笑)。すぐ島の友達に写真を送るとアカマタ(島の言葉では”マッタブ”)というヘビだということが判明。ハブではないので毒はないが、噛まれる可能性はあるとのこと……。そこからどうしたらいいか分からず、いつもお世話になっている島のおじちゃんにSOSの電話をするとすぐにうちに来てくれました。
ヘビを捕まえるため、ハブ取り棒を片手にヒーローのようドアを開けて入ってきたおじちゃん。すると突然の来客に愛犬バルーがビックリして「ワンワンワン!」と吠えた瞬間、アカマタはシュッと屋根裏に首を引っ込めてしまいました……。みんなで少しだけ静かに待ってみたのですが、その後は出てきてはくれず。どうすることもできないのでおじちゃんに「わざわざ来てくれたのにごめんね」と、うちにあったビールをお気持ち程度の手土産として渡し、帰っていただきました……。
アカマタというヘビはハブの天敵でもあるようで、アカマタがいたらハブが来ないとも言われているそうです。今までうちの庭でハブを見たことがないのもアカマタいるからなのでしょうか……?
島に来てから、地元の人にしょっちゅう「ハブには気つけなさいよ!」と言われるため、”草むらは歩かない””車を降りるときは足元を確認する”など自分なりに気をつけているのですが、このクセが体に染み付いてしまい、東京でも車を降りる時、足元を確認する自分にハッとする時があります。「こんなコンクリートジャングルにハブがいるわけないだろ……」と脳内で自分にツッコみ、島暮らしがかなり体に馴染んでいることに気付かされます。
島に来て2年。近所では「ハブがあそこで死んでた」「ここは絶対ハブが出るぞ」などハブ情報はよく聞くものの、近所で野生のハブを見ることはありませんでした。が、天井からひょっこりアカマタさんを見た数日後、飲み会の帰りに運転代行のお兄さんと車内でお喋りをしながら自宅まで送ってもらう途中、家に近づき「私まだ近所でハブ見てないんですよね〜」とハブの話をした瞬間、大きなハブが道路のど真ん中にドーンと突如現れたのです……! 近所でハブを見たのはこれが初めて。なぜかヘビが目の前に現れる日々……これは何かのメッセージ!?とも思ってしまいますが、ヘビ年の私は縁起のいい物として受け止めています。ちなみにアカマタさんはあの日以降顔を出すことはなく、捕まえることもできず、どこかに消えていきました(たまに生活を覗かれているのかしら……)。
梅雨明け前の奄美。(写真/著者提供)
「女の子だから○○」への違和感
話は変わりますが、先日世界経済フォーラムが各国の男女格差を表した「ジェンダーギャップ指数」を発表しました。146ヵ国のランキングも出て、上位になればなるほどジェンダーギャップの格差が”少ない”ということなのですが、日本は118位というかなり低い結果でした(G7の中では当然の最下位)。数年前から友人とやっているPodcast番組「ハダカベヤ」でも女性特有の悩みやジェンダー問題などをよく話しているのですが、そもそもなぜこういった問題を取り扱おうと思ったのか、自分で考え直してみると小さい頃から感じていた”違和感”が1つの理由だと気づきました。
私は小さい頃、スカートを履くのが苦手でした。幼稚園の時習っていたバレエもチュチュを着るのが嫌でやめたり、小学校の入学式ではスカートを履きたくなくてパンツスタイルで行くと、女子でパンツを履いているのは私だけびっくりしたのを覚えています。「女の子なんだから〇〇しなさい」「女の子なのに〇〇なんだね」などの言葉がすごく嫌だったのですが、大人になり、ジェンダー問題について学んでいくと、私は社会が作っている”女の子”になることが嫌だったんだということに気づき、色々と腑に落ちたのです。
小さい頃から聞く言葉や目にするメディアには、「女の子はピンクが好き」「女の子は料理できた方がいい」「女の子の幸せは結婚」というようなイメージが潜在的にたくさん散りばめており、ものすごく息苦しさを感じるものだったな〜と今になって思います。校長先生や政治家など、”偉い人”はみんなオジさん。もし女性でもリーダーになれると分かっていたら……昔の女の子たちの将来の夢は変わっていたのかな〜。そう思うと、男女格差をなくすことは今の子供達にとっても大切なことだと思うのです。ちなみに日本は今のペースで行くとジェンダー平等が達成されるのが134年後と言われていて、かなり絶望的なのですが(笑)、私が感じていた”違和感”を、将来の子供達が感じないためにもできる事はやっていきたいなと思っています。
現在34歳。「結婚しないの?」「子供欲しいの?」などの質問は常に聞かれています(笑)。東京にいると価値観がアップデートされている人は少しずつ増えてきていると感じるのですが、「ハダカベヤ」などの番組をやっていると、地方住まいの方から「生きづらさを感じる」というメッセージをたまにいただきます。実際、私が島で集落の集まりに参加した時のこと。楽しくお酒を飲んでいると、酔っ払った島のおじちゃんに、「酒なんか飲んでる場合じゃねぇ!早く子供作れ!」と言われたことがありました。あまりにも衝撃すぎて、心の声は思い切り顔に出ていたと思いますが、過去に番組へメッセージをくれた方達が言っていることを体感できた瞬間でもありました。
と同時に、以前この連載でも書かせてもらいましたが、集落に子供がいないのは深刻な問題なのも分かるのです。子供がいなければ学校もなくなってしまう。祭りの歌や島唄など、島の文化を受け継ぐ人もいなくなる。おじちゃんの言葉はデリカシーが全くもってなかったと思いますが、言いたくなってしまった気持ちは理解できるのです。昔の価値観のままの人ばかりだと生きづらさを感じる……。色んな理由があると思いますが、実際島を出てまた戻ってくる島人は女性が少なく、男性の方が多いなんてことも聞いたことがあります。
Podcast番組「ハダカベヤ」。(写真/著者提供)
とはいえ島は男女格差など蹴り飛ばせそうなぐらい、強くて元気な女性がいっぱいです。今のおばあちゃん世代までは子育てをしながら世界三大織物である大島紬を自宅で作り、昔から働く女性がたくさんいたそうです。お父さんは昼、畑仕事をして夜はお酒を飲む。お母さんは子育てをしながら、ひたすら紬作りをしていたなんて話も聞いたことがあります。今でも誰かのお家に行くと女性がキッチンに立っていることをよく目にします。実際に私の家も親戚がたくさん集まると、働いているのは女性ばかりです。今の子供達には、これが当たり前ではないと伝えていきたいなと思います。まずはジェンダー平等達成は134年後という数字を縮めて、私が生きてるうちに平等な世界が見られるよう頑張っていきたいです(笑)。