年長者に「好きな音楽は?」と聞かれて素直に答えたくない若者たちの本音 面倒を回避するために選ばれる「ユーミン、スピッツ、サザン」の無難な回答
好きな音楽を聞かれて正直に答えたくない若者たちの心理とは(イメージ)
仕事を円滑に進めるうえで欠かせない社内コミュニケーション。業務効率化や離職率低下につながることもあるだけに、活性化したいところだろう。そうした意識から、上司や先輩社員が社内イベントや雑談などで親睦を深めようと、若手社員に「好きな音楽は?」「最近、何聴いてるの?」などと気軽に質問することもあるかもしれない。一見して無難に思える質問だが、若者の中には、あえて「本当のこと」を答えない人もいるという。なぜなのか。
「どうせ知らないのがわかってる」
メーカー勤務の20代男性・Aさんは、相手によって本当に自分の好きなアーティストではなく、「どの年代でも知っていそうな名前を挙げる」という。
「僕はいわゆるボカロの“歌い手”さんが好きなんです。同世代とかプライベートならいいんですが、職場の上の人には『誰それ?』って言われそうなので、幅広い世代に知名度があり、キライだと公言する人がいなそうな、ユーミン(松任谷由実)や山下達郎あたりを適当に答えます」
Aさんが好きなアーティストをできるだけ語りたくない理由として、「同じように盛り上がれない」ためだという。
「一度、正直に答えたら、『誰それ?』『なんでそんなの好きなの?』とかいろいろ聞かれて、ものすごく面倒でした。僕のことを知ろうとしてくれるんだったら、自分で調べろと思いましたけど(笑)。しかも、『今の子ってそういうの好きだよね』とか、一般化しようとしてるのも不満で、正直に答えたことを心底後悔しました。
そもそも、職場で趣味の話をしたくないですよね。みんなで盛り上がれる話題でもないし、必ずしも好きな音楽がない人だっているのに、“自分がよく知っているアーティスト前提”で聞かれるのがいろいろ苦痛です」(Aさん)
「自分自身が“査定”されている気がして怖い」
「他人から評価される感覚がある」という人もいる。IT企業勤務の20代女性・Bさんは、「自分自身が“査定”されている気がして怖い」と嘆息する。
「好きな音楽って、どういう人間か勝手に判断されるきっかけになるので、相手にどう思われるのか警戒します」
そうした観点からBさんは、職場で「好きな音楽は?」と聞かれたら、一貫して答えてきたアーティストがいるという。
「スピッツです。私にとっては音楽の教科書に載っていた人だし、『名探偵コナン』の映画の主題歌の人でもあります。好きな音楽を聞かれたら、迷わず『スピッツとか』と答えていますが、どの年代でも『スピッツいいよねー』と言ってくれます。
ただ、正直そんなに詳しいわけではないんです。何の曲が好きかと突っ込まれたら、『曲名はわからないんですけど…』と逃げています。本当はゲームのアイドルソングの方が好きなんですが、相手を戸惑わせないための思いやりです」(Bさん)
「最近、○○が気になっている」と返すように
金融機関勤務の20代女性・Cさんは、「安易に“好き”を公言するのはリスク」と話す。
「基本的にサブスクで聴くので、そのアーティストだからというより、幅広く聴くなかで、なんとなく“この曲いいな”という感じ。そんなスタイルなので、特定のアーティストのライブに参加したり、個別に楽曲を買ったりなどお金をかけることはあまりありません。
一度、職場の40代ぐらいの人にどんな音楽が好きか聞かれて、なんとなくいいなと思っていたアーティストを答えたら、『じゃあライブとか行くの?』とか、『あのグループのファンって地方遠征までしてすごいよね』などといろいろ言われて困りしました。ライブに行かないと好きとは言えないのかなと」
そのためCさんは「好き」を語るのではなく、「最近、気になっている」と言い直すようになったという。
「最近よく使うのは、『父親の影響でサザン(サザンオールスターズ)を聞くようになり、気になっています』という感じです。“父親の影響で”をつけないと『なんで好きなの』という質問始まってしまうので、それを回避する術です。相手の世代に合わせてあげているんだということをわかってもらいたい(笑)」(Cさん)
聞かれて戸惑う方も相手のことを考えそれなりの対応をしているようだ。(了)