【日本市況】株式は約2カ月ぶり大幅安、仏政治リスク-債券先物上昇
(ブルームバーグ): 17日の日本市場ではフランスの政治混迷に対する懸念が広がり、リスク資産の持ち高を減らす動きから株式相場が大きく下げた。日経平均株価は一時800円以上安くなり、下げ幅と下落率は約2カ月ぶりの大きさ。一方、債券相場は先物や短い年限の現物債が買われ、円の対ドル相場は157円台前半で小動きとなった。
マクロン仏大統領は前週、欧州議会選挙での惨敗を受けて6月30日と7月7日の2段階に分け国民議会(下院)選挙を実施すると表明。世論調査でポピュリストのルペン氏率いる極右政党・国民連合(RN)が高い支持率を集めており、フランスの財政・金融システムや欧州全体の政治リスクに発展する可能性が警戒され、14日の取引で仏CAC40指数は大幅続落し、ユーロは対ドルや対円で下げた。
東海東京インテリジェンス・ラボの平川昇二チーフグローバルストラテジストは、フランスでポピュリズムが優勢となると、財政拡張的な政策で財政赤字が膨らみ、ユーロ安になることが懸念されていると指摘した。
東証株価指数(TOPIX)の終値は前週末比1.7%安の2700.01日経平均株価は1.8%安の3万8102円44銭日経平均の下落幅(712円)と下落率は共に4月25日以来の大きさ、一時は864円(2.2%)安まで売られた |
長期国債先物9月物の終値は前週末比16銭高の144円08銭新発10年国債利回りは変わらずの0.930%新発30年国債利回りは3ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇の2.120% |
円は対ドルで前週末比0.1%高の157円25銭-午後3時23分現在 |
株式
東京株式相場は大幅反落。日経平均は一時、5月30日以来となる3万8000円を割り込む場面があった。フランスの政治危機に対する警戒からリスク資産の株式の持ち高を減らす動きが強まり、輸送用機器や精密機器など輸出セクター、石油や鉱業、商社を含む卸売など資源セクター、不動産などを中心に東証33業種は医薬品を除く32業種が安い。
TOPIXに採用される2139銘柄中、下落は1608、上昇は455。指数を最も押し下げたのはトヨタ自動車で、売買代金上位では欧州売上高比率の高いマツダやソニーグループなども下げた。輸出セクターは、円相場が先週の日本銀行の金融政策決定会合後の安値から反発したこともマイナス材料となった。
アセットマネジメントOneの浅岡均シニアストラテジストは、フランスの政治情勢への懸念から投資家が安全資産に逃避し、世界的に景気敏感株が売られていると指摘。「日本の株式市場は世界的な景気敏感株の代表格だ」と述べた。
日経平均株価の日中チャート
債券
債券相場は先物と短中期債が上昇。フランスの政治懸念からリスク回避が広がり、米国の金利が低下した前週末の流れを引き継いだ。一方、日銀が14日の金融政策決定会合で国債買い入れ減額の具体案を先送りしたことによる不透明感が相場の重しとなっており、超長期債は下落した。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介シニア債券ストラテジストは、グローバルなリスクオフで日本でも金利低下圧力が生じているが、減額規模の不透明感から現物債は「伸び悩んでいる印象」だと指摘。超長期債については需給不安に加え、先週の金利低下の反動もあり、売られたと言う。
新発国債利回り(午後3時時点)
0.285% | 0.505% | 0.930% | 1.740% | 2.120% | 2.280% | |
前週末比 | -1.0bp | -1.0bp | 変わらず | +0.5bp | +3.0bp | +5.5bp |
債券先物9月物の日中推移
外国為替
東京外国為替市場の円相場は1ドル=157円台前半と前週末のニューヨーク終値付近で小動き。フランスの政治リスクを懸念したリスク回避による株安が円買い戻しを誘う一方、仏極右派のルペン氏が市場の懸念を和らげる発言を行ったことが円の重しとなった。
ドイツ証券外国為替営業部の小川和宏ディレクターは、シンガポール市場が祝日休場であるほか、フランスの政治リスクの不透明感が残っており、円相場は方向感を欠いたと指摘。「日米の金融政策が共にすぐに動かないことが確認された」ことも動意薄になる一因になっていると説明した。
ドル・円相場の過去2営業日の推移
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--取材協力:佐野日出之.
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