巨木巡り、川歩き… 蒜山高原で天職と始めた「道なき道の未知案内」
巨木と金山幸二さん=2024年5月11日、岡山県真庭市、勝亦邦夫撮影
雄大な景色が広がる蒜山(ひるぜん)高原(岡山県真庭市)。「蒜山ツアーデスク」の代表、金山幸二さん(73)は自然を満喫するツアーを催し、じわりと人気を呼んでいる。
赤みを帯び、しわが寄った唇弁が特徴のサルメンエビネ=2024年5月11日、岡山県真庭市、勝亦邦夫撮影
蒜山で生まれ育ち、神奈川県や岡山市などで働いた。父の病気を機に、30代半ばで地元へ。仕事と父の介護を十数年続けたが、無理をしたのがたたって体調を崩し、離職した。
そんなとき、自然ガイドをしていた中学校時代の恩師から「やってみないか」と誘われた。本格的な登山経験はなく、自信はなかったが、一人や家族連れで地元の山をよく登っていたことから引き受けた。すると、お客さんに喜んでもらえるうえ、自分も健康になることなどから「天職」に思えた。2011年には「蒜山ツアーデスク」を立ち上げ、自分で考案したツアーを始めた。
「道なき道の未知案内」を自称し、山に分け入って行程を決める。幹回り5メートルほどのブナの巨木を巡ったり、ラン科の希少種・サルメンエビネを観賞したり。夏には滝が点在する川を上る「リバートレッキング」、冬にはスノーシューで山登りをするツアーを催す。中国地方だけでなく、四国や関西からもツアー客が訪れるという。
蒜山の魅力は、開発の手が入っていない自然と語る。「ここでしかできないことをたっぷり体験してほしい」。ストレスを抱えた参加者がツアー後、見違えるようにすっきりした表情になるのがうれしいという。
週に1回は山に入り、フィールド調査をする。ここ3年ほどでシカの食害で山肌が見えるようになったと感じる。山の保全の必要性を訴える。
「蒜山の自然は真庭の宝。次の世代に引き継いでいきたい」。そのためにも、担い手となるガイドの養成にも力を入れていく。(勝亦邦夫)
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〈蒜山ツアーデスク〉2011年に設立。岡山県真庭市蒜山地区で、川の下流から上流に進むリバートレッキングやブナの巨木を巡るツアー、冬山をスノーシューで歩くツアーなどを展開。17年度には、エコツーリズム大賞(環境省など主催)の特別賞を受賞した。