解説|バフェットも投資する5大商社の特徴とはー三井物産がトップに
解説|バフェットも投資する5大商社の特徴とはー三井物産がトップに
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こんにちは、NEKO ADVISORIES 岩倉です。毎週金曜日のNEKO TIMESは話題のニュースを取り上げ、経済・ビジネスのトレンドについて解説しておりますが、本日は普段と視点を変えて「業界(セクター)」に注目をしながら筆を進めていきます。
ウォーレン・バフェット氏が率いるアメリカの投資会社バークシャー・ハサウェイは、三菱商事や三井物産など日本の5大商社株を買い増したことを明らかにしました。これにより各社が保有する自社株を除くと5社の保有比率は平均で8.5%を超えました。
米バークシャー、日本5大商社持ち株比率引き上げ 8.5%超 | ロイター
同氏は2020年から5大商社の株式を各5%以上取得し、22年秋口には6%まで保有比率を高めるています。さらに2023年4月の来日時には7.4%まで買い増していました。今回の発表では最終的に「5社それぞれの株式を9.9%まで保有することを望んでいる」としています。
この間、商社株は東証株価指数(TOPIX)を上回る投資成果をもたらしています。この結果、商社株はこれまで割安銘柄の代表格として株価純資産倍率(PBR)1倍程度を推移してきましたが、株価の急伸により1.3倍付近で推移し15年ぶりの高水準となっています。
セクターとしての商社をみると、上り調子のように見えます。しかしながら、三井物産が24年ぶりに三菱を上回る利益で商社トップとなり、各社で状況が異なるようにもみえます。本日はそれぞれの特徴や強みにフォーカスしながら、業界の理解を進めていくことにしましょう。
ー総合商社業界 売上高ランキング(バフェットコード)ー
<本日のトピック>
・1兆円を超える利益を維持、トップの三井
・組織力で勝負、三菱のネットワークとシナジー
・伊藤忠は「非資源」で独自路線へ
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1兆円を超える利益を維持、トップの三井
三井物産は純利益1兆円を超え、利益額で三菱商事を抜いて商社トップとなりました。不確実性が高まり、また地政学リスクが各地で高まるなか、2023年3月期決算では主力の「金属資源」「エネルギー」領域で収益力を高める結果となりました。
世界でロシア産のエネルギー依存度を下げる方向に向かうなかで、液化天然ガス(LNG)や鉄鉱石の商いが拡大していることが分かります。今年4月には同社と英仏の石油メジャーがアラブ首長国連邦(UAE)で新たに1兆円規模のLNGのプロジェクトを開始することも発表しています。(ロイター)
三井物産
三井物産は呉服店と両替業から商売がはじまりました。明治にはいり両替業を発展させる形で銀行業を立ち上げる傍らで、明治政府の要職者・井上馨と益田孝らによる貿易会社を引き継ぐような形で事業を拡大していきました。この過程で東レ、三井造船、商船三井、三機工業など現代の三井グループも輩出されていきます。(参考:三井広報委員会)
三井物産は「商売」が前に出ることに特徴があり、その商売を大きくしていく人材を抜擢することを重視していると言われています。これに対して、三菱商事は組織を重視すると対比されます。
組織力で勝負、三菱のネットワークとシナジー
三菱商事は利益額で三井物産の後塵を拝しますが、売上高では2兆円に迫り他を圧倒する規模をほこります。同社は三菱重工業、三菱マテリアル、三菱自動車などグループには多くのメーカー企業を抱えながら、さまざまな分野で事業を行っていることがわかります。
三菱商事
例えば、自動車事業領域においてはタイ政府の要望を受けて、組立工場を設立、生産・販売のサプラチェーンを整えました。その後、アフターサービスや販売金融サービスの拡充を進め、顧客のニーズに応えるためのバリューチェーンの構築を成し遂げました。(参考:主力事業の歴史と強み)事業を組み合わせてより強い事業を作り上げていくことは、三菱グループのネットワークを活かす強みと言えるでしょう。
さて、三菱商事の決算においても直近の決算では「天然ガス」「金属資源」が生み出す利益の大きさが目立ちます。トップ2社は事業ポートフォリオにグループ各社の特徴もありな柄も資源分野が強いことがわかります。一方で「非資源」領域に強みがあるのが3番手につける伊藤忠商事です。
伊藤忠は「非資源」で独自路線へ
伊藤忠商事の利益をみると非資源領域が全体の75%を占めています。三井物産や三菱商事は半分以上が資源領域であり、両者と伊藤忠商事の事業構成が大きく異なることがわかります。直近2年間は資源価格の高騰を受けており、三井・三菱の収益に大きく貢献をしていますが、伊藤忠商事はそうでもありません。逆に、繊維や食品など生活に関わるものを扱うことで、安定性が高いと言えます。
情報・金融セグメントでは伊藤忠テクノソリューションズ、ベルシステム24、ほけんの窓口などを融資、2010年から2023年でみると年平均14%の成長を遂げています。また、第8とされるファミリーマート事業については同18%と同社の成長を牽引しています。
伊藤忠商事
住生活分野にはサミットやトモズなどを擁し、伊藤忠商事は川下、消費者目線に強いとも言われています。祖業の繊維領域においては、コンバース、ポールスミス、リーボックやヴィヴィアンウエストウッドなどを取り扱います。ファミリーマートでは「コンビニエンスウェア」として様々な衣料品も取り扱っており、他のコンビニと差別化を図ります。
事業の構成やシナジーの持ち方が商社ごとに異なることがわかったかと思います。他にも丸紅は穀物やインフラに強いとされ、住友商事はグループ関連の金属や建機、そしてメディアに強いとされます。
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編集後記
みなさんこんばんは、猫組長です。
昨日、ドラマの撮影現場である茨城県鹿嶋市へ行ってきました。夜のシーンだったため19時からの撮影でした。この日の撮影は有名俳優4人の他、多数の出演者が登場するシーンだったためスタッフも100人を超えました。
まだ撮影中で情報解禁されていないのですが、俳優陣も豪華でとても面白い作品になると思います。この日の撮影には、私も初めてお会いする超有名な俳優さんが出番でした。私の出演シーンでは、この俳優さんとの絡みなのでちょっと緊張します。
夜の19時からスタートした撮影は、休憩を挟む間もなく夜明けまで続きました。売れっ子で忙しい俳優さんでも夜明けまで何度も何度も同じシーンを繰り返し撮影します。ドラマの撮影は3人称の小説と同じです。A B Cの3人で話すシーンなら、A視点、B視点、C視点、それぞれの視点で同じシーンを撮影します。Aのみが写るシーンも、正面、斜め前、後、斜め後ろ、遠くから、場合によっては頭上から、それぞれの方角から撮影します。
こうして各シーンを撮影してから編集し作品になっていきます。完成時、わずか1分のシーンでも色々な角度からたくさんのカットを撮影します。手の込んだシーンなら1分の場面に数時間も費やすのです。1時間ドラマに費やされる時間やスタッフ、コストは想像を超えるものです。1時間のドラマを観る視聴者は1時間しか費やしません。ドラマ制作の現場に立ち会うようになってからは、その制作に費やされた情熱や努力を考えるようになりました。わずか1分のシーンに出演する俳優も、そのために数時間を費やしています。
昨夜は死体役の3人の役者さんがいました。下着姿で地面に倒れた死体の役です。死体ですからもちろんセリフもありません。他の俳優らが演技をしている時にも微動だにせず地面に伏していました。撮影シーンが変わる時の休憩はありましたが、19時から夜明けまで何時間も地面に倒れているのです。夜中になると気温も低くなったのでかなり冷えたでしょう。下着姿で何時間も地面に伏せていたシーンも、放送されるのは数分です。みなさんも、これからドラマや映画を観る時には、こうした未立たないプロの役者さんの演技も楽しんでください。
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次回は6月30日(日)です。専属アナリスト中沢氏による「今週の相場見通し」をお送りします。サポートメンバー(有料購読者)の皆様にのみ配信となりますので事前にご登録をお願いいたします。ぜひ先週配信記事で今週の相場の振り返りを行ってみてください。
今週の相場見通し | NEKO TIMES