ベテラン記者コラム 韓国フィギュアスケート界に激震 世界選手権銀の李海仁が３年間の資格停止処分に

世界選手権での李海仁（イ・ヘイン）の演技＝２０２３年３月２４日、さいたまスーパーアリーナ

フィギュアスケートは７月１日から新シーズンに入る。ところが、若いスケーターの躍進が著しい韓国から残念なニュースが飛び込んできた。

韓国での報道によると、５月下旬にイタリア北部のバレーゼで行われていた韓国代表チームの合宿中、飲酒したうえ、女子宿舎を訪れた後輩の男子選手にセクハラ行為をしたとして、大韓スケート連盟は６月２０日、女子シングルの選手に３年間の資格停止という重い処分を科した。その選手と一緒に飲酒し、セクハラ行為の写真を撮影したという女子シングルの選手も１年間の資格停止となった。

２７日になって、１９歳の李海仁（イ・ヘイン）が韓国のテレビ局ＹＴＮのインタビューを受け、３年間の資格停止処分を受けた選手であることを公表。「セクハラと報じられてつらく、苦しい」と話した。同日、インスタグラムに真っ黒の画像とともにメッセージを投稿した。

李海仁は１７歳だった２０２２－２３年シーズンに四大陸選手権で優勝し、世界選手権で銀メダルを獲得。金妍児（キム・ヨナ）の後継者として、２０２６年ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪での活躍が期待されていた選手だ。長い手足を生かした美しい演技が魅力で、エキシビションではＫ－ＰＯＰのアイドルの楽曲で滑ることも多く、日本にもファンが多い。

インスタグラムに投稿したメッセージでは、応援してくれていたファンに謝罪し、合宿中の飲酒については「絶対にやってはいけないことだった」と反省の意を示した一方、指摘されたセクハラ行為については「真実ではない」と否定。相手の選手は「高校のときの元恋人で、両親の反対で別れたが、また付き合うことになった」と明かし、「恋人同士の愛情表現だった」と説明している。李海仁は大韓体育会に処分が不当だと訴えたており、セクハラ行為について釈明する方針だという。

処分が覆らなかった場合、３年間の資格停止ということは、２０２６年ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪への出場が断たれたことを意味する。今季のグランプリシリーズは第１戦スケートアメリカと第４戦ＮＨＫ杯にエントリーしていたが、当然これも出場できなくなる。１年間の資格停止処分を受けたとされる選手も、トリプルアクセルを跳び、２０２２年北京冬季五輪で上位入賞した実力者だ。韓国フィギュアスケート界は２人の有力選手を事実上失うことになり、大激震となっている。

世界選手権での李海仁（イ・ヘイン）の演技＝２０２３年３月２４日、さいたまスーパーアリーナ

イタリアのバレーゼはミラノまで車で４０分ほど。日本代表もミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪での練習拠点としており、８月に全日本合宿を行う予定だ。五輪のプレシーズンがいよいよ本格化する。（牧慈）