「見切り発車」の会社設立、金銭管理に苦闘 元日ハム斎藤佑樹さんが語るセカンドキャリア
セカンドキャリアについて持論を語った元日本ハムの斎藤佑樹さん=東京都内(浅野英介撮影)
プロ野球日本ハムの元投手で、現在は会社経営などを行っている斎藤佑樹さん(36)が、アスリートのセカンドキャリアに関する理想と現実を巡り、東京都内で行われたトークイベントに参加して持論を展開した。高校時代に全国制覇を達成した経験を持つ斎藤さんは「人とは違う注目のされ方をしてきたし、野球界へ僕なりの恩返しがしたい」と決意を示し、現在検討を進めている低学年向けの子供らを対象にした球場建設などの夢も語った。
現役時代の斎藤佑樹さん=札幌ドーム(三浦幸太郎撮影)
「競技に集中」の現役時代
斎藤さんは高校時代、早稲田実のエースとして平成18年の夏の甲子園で全国制覇を達成。ハンカチで汗を拭う姿が話題を呼び、「ハンカチ王子」として一大ブームを巻き起こした。早大進学後も六大学野球リーグで通算31勝を挙げるなど活躍。22年のドラフト会議では4球団の競合の末、日本ハムに1位指名されて入団した。だが、日本ハムでは度重なる故障もあり、令和3年に現役を引退した。
斎藤さんは、マイナビなどが企画した27日のトークイベントに参加。「元プロ野球選手と元Jリーガーが見た〝アスリートのキャリア〟の現実」をテーマに、元Jリーガーの磯村亮太さん、鹿山拓真さんとともに自らの体験を語った。
斎藤さんは「多くのアスリートも体力の限界は絶対来る。野球選手だったら、30歳までやったら素晴らしいこと。40歳までやれば、本当にすごい。いつか(次のキャリアを)考えなきゃいけないけど、競技にはちゃんと集中しようっていう考えでずっといた」と現役当時を振り返る。
野球界への恩返しは「使命感」
斎藤さんは引退後、「株式会社斎藤佑樹」を設立。また、野球やサッカーなどのスポーツ情報のサービスを提供している「シーソーゲーム」の取締役も務めるなど多方面で活躍している。
斎藤さんは、自らの名前を冠した会社を設立したことについて「見切り発車で自分の会社を立ち上げた。何をやるかも決まっていなくて、まずは1人で歩いている姿を見せることによって何かが生まれるんじゃないか。それだけでしかなかった」という。
それでも「『斎藤佑樹』じゃないとできない野球界への恩返しをしたかった。『あいつ、中身なんてないじゃん』って(周囲から)思われる可能性も当然ある。でも、人とは違う注目のされ方もしてきたし、僕なりの野球界の恩返しがあるのではないかと、自分の中で勝手に使命感を感じていた」とセカンドキャリアに対する思いを語った。
子供たちに「ダイヤモンド1周を」
斎藤さんが現在描いている夢が、低学年向けの子供たちを対象にした球場建設だという。「ダイヤモンドを1周して(ホームに)返ってくるっていう経験を、子供たちにも味わってほしい」と話す言葉には力がこもった。
ただ、「経理、事務周りなど、会社をやるとそういうこともやらないといけないが、それがすごく大変。今はいろいろと苦闘しています」と、経営者としての苦労の一端ものぞかせた。
「最近、自分が元プロ野球選手であることを忘れてしまう。テレビを見ていると、こんなすごい人たちがやっている中で、自分はその世界にいたんだと思うときがある」という斎藤さん。セカンドキャリアと向き合うアスリートに対して「競技のその後の不安というのは、やっぱり(セカンドキャリアに関する情報を)知らないことにあるのかなと思う。(情報を)知ることでまず自分自身への不安を消し、自分自身がどういうことをやりたいのかを決めていくことが大事だ」とメッセージを送った。(浅野英介)