プロ注目!「四季報」徹底分析で分かった「増益&増配」に期待「低PBRの日本株」10銘柄
「四季報」から厳選
2024年に入って一時は4万円をつけた日経平均は、その後迷走を続けている。今後の相場についてはもちろん予測がつきにくいが、選別物色が強まっていくのではないだろうか。ターゲットとしては、株式投資の基本である好業績、割安、成長性といったところだろうか。
そしてこの時期、特殊な要因が重なる。一つは多くの上場企業で株主総会が開催されること。もう一つは6月中旬に『会社四季報 夏号』が刊行されたことだ。年4回発刊される「会社四季報」のなかでも、この夏号はことさら重要視されるのは3月決算企業の決算発表を受けて執筆された号だからだ。
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夏号では、あらたに3月決算企業の次期(2025年3月期)の業績予想が掲載される。また「会社四季報」独自の2期予想(2026年3月の会社四季報記者の予想)も付記される。個人投資家のみならず機関投資家といったプロも注目の『会社四季報 夏号』なのだ。
今回は2025年以降の好業績、割安、成長性、高配当をキーワードに銘柄を抽出してみた。まずPBR1倍以下、配当3%以上でスクリーニングにかける。その数、相当数で想定以上。次に「会社四季報」で一つひとつの銘柄をチェックし、連続増益、増配期待、事業の成長性を柱に10銘柄を厳選してみた。
世界シェア首位の企業
まず目についた銘柄がフェローテックホールディングス(6890)。パワー半導体基板など半導体装置関連銘柄だ。半導体関連はかつて相場テーマの中心として物色された銘柄群だ。好業績を維持しながら割安に放置されているので意外な掘り出しモノかもしれない。
世界シェア首位の真空シールを中心に業績は堅調。2025年3月期、2026年3月期と連続増益予想。予想配当利回りは3.71%、PBRは0.62倍(『会社四季報 夏号』より。以下同)。
株価は2023年7月に4000円まで迫りながら(3925円)、その後反落して調整を続けている。3000円を割り、いまなお2900円を割っている水準だ。株価上昇のきっかけをつかめば、高値更新も夢ではない。
高度な技術、市場シェアを大きく占有している企業は強い。計測機製造の共和電業(6853)はそんな企業だ。ひずみゲージや、関連する応用計測器で国内シェア40%を占める。自動車衝突試験装置の引き合いが強い。いま問題となっている自動車メーカーの性能試験で虚偽データが提出されたといった事件が、当社製品にどう影響が出るかまだ不明だが、追い風になる可能性もあるだろう。自動車向けが主柱だが、航空宇宙分野、洋上風力発電向けにも力を入れている。
業績も右肩上がり、2024年3月期、2025年3月期は連続して増収増益予想。予想配当利回りは3.65%、PBR 0.69倍。
業績好調を反映して株価も順調に上げている。2023年初頭は330円台だった株価は1年で100円以上値上げ。その後も上げ続け500円直前まで上げたところで調整、いまは450円付近でもみあっている。
自動車関連の「優良企業」
自動車向け製品では、コーティングの藤倉化成(4620)にも注目したい。自動車向けが主力事業だが、ほかにも建築用や住宅、電子機器向けなど。高機能、高付加価値の塗料や樹脂材料が他を圧倒する。財務内容も極めて優秀だ。
自動車向けコーティングが好調。「会社四季報 夏号」では2025年3月期は大幅増収増益予想。「会社四季報 春号」の2025年3月期の売上531億円、営業利益12.5億円予想から、売上570億円、営業利益19億円へと大幅増額となった。配当も16円配から18円配へと増配、予想配当利回りは3.53%。PBR 0.4倍。
株価はここ2ヵ月上昇を続け、460円台から600円目前まで急騰したものの現在550円前後で調整している。押し目買いのチャンスといえる局面だろうか。
自動車部品関連からもう1社、エイチワン(5989)を推したい。
自動車フレームを主製品として、9割近くがホンダ向け。北米は国内の自動車生産好調を受け、業績も増勢。2024年3月期こそ216億円の減損を出して営業赤字となったが、2025年からは営業黒字化。最終益も最高益を更新し、増配。
業績の回復を受け株価も急上昇、2022年は600円前後の動きだったが2023年になって右肩上がりとなり、今年は瞬間的に1000円台を付けた。それでも株価には割安感があり、PBR0.44倍、予想配当利回りも3%を超える。
大幅減益で株価が半値以下に
業績不振から急回復、しかしなお株価の回復が追い付いていない銘柄がOlympicグループ(8289)だ。食品スーパーや大型ホームセンターを首都圏中心に展開。買収や新規出店など積極姿勢で業績を伸ばす。
2024年2月期の売上909億円、営業利益1.9億円に対し、2025年2月期の業績予想は売上1040億円、営業利益は20億円。営業利益にいたっては10倍増だ。予想配当利回りは3.93%、PBRは0.45倍。
2020年には1000円をゆうに超えていた株価はその後下落を続け、現在半値以下の水準。これは2023年2月期、2024年2月期の大幅減益が影響している。株価は2025年の業績急回復をまだ折り込んでいない。仕込むにはいいタイミングだろう。
原油価格と円安を追い風に業績を伸ばしてきたINPEX(1605)。国内のほかオーストラリアや中東で原油・ガス開発を行なう。業績は順調で、株主還元として年内に上限4000万株、500億円の自己株買いを行なう。
業績も順調で、連続増配。配当利回りも3.18%、PBRは0.66。株価は春先まで上昇し続け、4月15日に2628円に高値をつけたあと調整に転じている。2300円台の株価はまだ割安といえる水準で、魅力がある。
絶好の仕込み時
当初の業績予想より下振れしたため株価が低迷したのが日揮ホールディングス(1963)だ。総合エンジニアリングで国内トップの同社は、海外ではLNGプラントや発電プラントも手掛ける。
再生エネルギー関連や水素エネルギー関連など将来性ある分野にも注力中だ。それでもなお株価が低迷したのは、2024年3月期の業績が、営業利益ベースで事前の会社予想を大きく下回ったことによる。
また直近では6月18日にはSMBC日興証券が投資評価を「1(アウトパフォーム)」から「2(中立)」に引き下げ、目標株価を2600円から1500円に引き下げたのも株価押し下げの要因になっている。
それでも2025年3月期、2026年3月期と増収増益と成長路線に戻ることを考えれば株価は割安水準だ。株価は2023年8月に2291円をつけたものの、その後低迷、1200円割れ寸前まで落ち込んでいる。予想配当利回り3.12%、PBR0.8倍。絶好の仕込み時ではないだろうか。
セラミックス総合メーカーの美濃窯業(5356)も挙げておきたい。耐火れんがが主力でプラント、建材・舗装用材、電子部品向けも扱う。半導体業界向けの設備が上向き、設備投資旺盛な鉄道向けも業績をけん引している。
業績は好調。2024年3月期は期初の予想を上回る数値を叩きだした。さらに2025年3月期も増収増益を予想。好調な業績を反映して株価も上昇を続けている。
2023年年初は500円以下だった株価水準は年末には765円の高値をつけ年明けには870円まで上がり続けた(現在は800円台前半まで調整)。それでも株価は割安。予想配当利回りは3.99%、PBR0.61倍。
建設業の2024年問題が「追い風」に
建設業の2024年問題がむしろ「追い風」になりそうな銘柄が、ナレルグループ(9163)。主力事業は建設業界向け技術者派遣で、IT技術者派遣にも業容広げる。建設現場での人手不足は深刻で需要は高く、2024年10月期、2025年10月期ともに増収増益の勢い。増配もあり予想配当利回りは4.29%。PBRは1.82倍にもなるがあえて成長性に注目して推してみた。
株価は2024年に入ってから2ヵ月で4000円直前まで急騰したあと、今度は急落した。2500円を割るかと思われたところから反発したが、まだ株価3000円も回復していない。いずれ4000円を目指した動きになるだろう。
同じ建設関連でもコンサルに特化したのが人・夢・技術グループ(9248)だ。長大橋で高技術を持つ長大を子会社に持つ。老朽化するインフラ整備、国策である国土強靭化が追い風。スマートシティ事業部を立ち上げ、田園都市構想に注力している。
今期(2024年9月期)、来期ともに増収増益。予想配当利回りは4%を超え、PBRも0.71倍と割安。株価は2022年10月に2791円の高値をつけたあと3ヵ月で株価半減するまで急落。現在1700円近辺で低迷した状況だ。いずれ水準訂正があってもおかしくない。
今後の株式市場についての見通しは、(いつの時代でもそうだが)強気と弱気に分かれている。とりわけ米国市場の利下げ問題がどうなるか不透明な状況で、株式市場も為替動向に敏感になっている。
日本の株式市場はいま、「気迷い」状態だ。年内、株価が急騰する・急落するその二つのシナリオはどちらも十分にありえそうだ。
今回挙げた10の銘柄は、どちらのシナリオにも耐えられるのではないだろうか。これから選別物色されるようになれば、物色の対象になりやすい銘柄群だと考えている。
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