【米国株ウォッチ】アップル、生成AIの発表で株価は300ドルを目指すか?
【米国株ウォッチ】アップル、生成AIの発表で株価は300ドルを目指すか?
アップル(ティッカーシンボル:AAPL)は、iPhone、iPad、Mac向けに独自で開発した人工知能(AI)のApple Intelligenceを発表した。それを受け、同社の株価は米国時間6月11日の取引で7%近く上昇した。
マイクロソフトやフェイスブックといったライバル企業とは異なり、アップルは過去1年間、AIに関して大きな発表を避けてきたが、アップルが提供する新しい生成AIは、音声アシスタントSiriのアップグレード、文章作成支援ツール、電卓、画像処理ツールなど、非常によく実装されており、アップル製デバイスの買い替え需要を促進する可能性がある。では、この新たなAIはアップルの株価をどれほど押し上げるのだろうか?
生成AIがデバイスの買い替え需要を促進
現状、アップルはこの新しいAI機能をハイエンド・デバイスにのみ提供している。これは、機能の提供のためにより高性能なオンデバイスの処理能力を必要とするためと思われる。例えば、iPadとMacではM1以降のチップを搭載したデバイスでのみ動作する。iPhoneでは、A17 Proチップを搭載したiPhone 15 ProとPro Maxのみだ。参考までに、その条件に当てはまる最も安いiPad(訳注:第3世代のiPad Pro)の価格は約600ドル(訳注:日本では約9万4000円で販売されている)で、A17 Proチップを搭載したiPhone 15 Proは1000ドル(訳注:日本では15万9800円~)に跳ね上がる。
アップルが今後発売する多くの新しいデバイスにAIを搭載する可能性は非常に高いと思われるが、アップルの消費者、特にiPhoneユーザーの大半は、AI機能を利用するためにはデバイスを買い替える必要があると考えていいだろう。対応するiPhoneの機種は、世に出回るiPhoneの10%をはるかに下回る可能性が高い。それを踏まえると、AI機能の登場により、近年低迷するiPhoneとiPadのビジネスが活性化される可能性は大いにある。ちなみに、iPhoneの販売台数は22年度に約7%増加したが、23年度は2.5%減少し、今年度も若干減少すると見られている。iPadは3年連続の減収となりそうだ。アップルの新型iPhoneは今秋に発売されると見られており、iPadは最近ラインナップを一新したばかりだ。
設備投資の面で優位性を持つアップルの戦略
アップルの利益率も、生成AIの発表から恩恵を受ける可能性がある。より収益性の高いハイエンド・デバイスの販売に貢献するだけでなく、最終的にはAIに特化したサブスクリプション・サービスを提供することで、サービス事業の売上を増加させることができるだろう。
さらに、生成AIのサービスを提供するために、大規模なクラウド・インフラを構築し、GPUにも数十億ドル規模の投資が必要な他の大手とは異なり、多くのタスクをオンデバイスで処理するというアップルの戦略により、比較的、設備投資額を削減できる可能性がある。アップルは現在、業界でも最高水準のモバイル向けプロセッサーを有しており、よりパーソナライズされたエンドポイントAIにおいて優位性を発揮する。
株価パフォーマンス
AAPLは2021年1月初旬の130ドル台から現在205ドル前後まで60%の力強い上昇を見せている。同期間におけるS&P500種株価指数の上昇率は約45%だ。しかし、AAPLの上昇は一貫しているとは言い難い。2021年のリターンは35%、2022年はマイナス26%、2023年は49%だった。
バリュエーション
私たちはAAPLの目標株価を約202ドルとしており、これは現在の市場価格とほぼ一致している。AAPLは24年度の純利益の約31倍で取引されており、これは過去の水準よりやや高い。しかし、アップルは来期以降、生成AIのトレンドに牽引され、収益成長が回復するはずだ。また、ハイエンド・デバイスに偏った製品ミックスの改善、サービス売上、部品コストの低下により、利益率も改善する可能性が高いだろう。
(forbes.com原文)