耳と体にドン、ドン、ドン 横浜環状南線桂台トンネル シールドマシン騒音・振動 沿線住民ら「我慢の限界」
耳と体にドン、ドン、ドン 横浜環状南線桂台トンネル シールドマシン騒音・振動 沿線住民ら「我慢の限界」
高速横浜環状南線の「桂台トンネル」建設工事が進む横浜市栄区の湘南桂台地区で、騒音と振動などに沿線住民が悩まされている。市民団体「横浜環状道路(圏央道)対策連絡協議会」(連協)は、大型シールドマシン(トンネル掘削機)が原因とみられると指摘。「生活に支障をきたすレベルで我慢の限界に来ている」と、事業者の国と東日本高速道路に対策を求めている。現地を訪れ、「被害」を体感してみた。(阿部博行)
高速横浜環状南線と桂台トンネル区間の概要図(大成建設など共同企業体のパンフレットより)
東日本高速道路によると、桂台トンネルは延長約1・3キロ。2021年1月に直径約15メートル、全長約12メートルのシールドマシンで掘進を開始した。その年の7月にマシンが故障したため、半年以上の中断を経て再開し、22年9月に上り線を完了。下り線は23年5月から着手し、現在は4割に当たる540メートルまで掘り進めた。
実際の音と振動はどの程度なのか。記者は今月6日、連協の比留間哲生会長(84)の紹介で沿線住民の後藤みゆきさん(63)宅を訪ねた。工事の現場は、歩道と車道を挟んだ場所の地下にある。進行状況を伝える告知板が設置されており、確認すると深度27・8メートル地点でマシンが稼働中だった。
1階のリビングに通されると「ドン、ドン、ドン」と、太鼓をたたくような重低音が床や壁、椅子を通じて耳と体に響いた。いつまでもやむ気配がなく、不快感が募る。「朝の7時台から夜10時まで、この調子なんですよ」と後藤さん。「何度も苦情を申し入れているが、改善されない。事業者は公共事業の担い手としての資質と責務が欠けている」と怒りを隠さない。
近所の主婦(88)にも話を聞くと、自宅で飼うメダカの水槽の水が揺れ続け、訪問客から「この不愉快な音は何?」と驚かれたことがあるという。「何日かたてば収まると思って我慢していたが、一向に静かにならない。毎日ベッドに横になっても眠れず困っています」とこぼした。
工事は大成建設とフジタ、銭高組の特定建設工事共同企業体(特定JV)が担当。取材中、現場の工事責任者が住民から詰問される場面に出くわしたが、「ご迷惑をおかけして申し訳ありません。上司や事業者に伝えます」とひたすら頭を下げるばかりだった。
連協は騒音・振動対策に加え、午前7時30分から午後10時までの作業時間のうち、夜は午後8時に切り上げるよう事業者に要望してきた。比留間会長は「実効性のある対策が取られない場合、工事の中止を求めるしかない」と訴える。
東日本高速道路関東支社は本紙の取材に、工事に伴い、振動や騒音が発生していることは認めた。当初は24時間の稼働を想定したが、住民意見を踏まえて作業時間を短縮したほか、「振動・騒音の低減が期待できる掘進速度の調整や滑剤を活用し、マシンの掘進を行っている」と説明。沿線の住民から個別にヒアリングを行い、「一時的な滞在場所としてビジネスホテルを準備するなど、地域と対話をしながら慎重に工事を進めていく」と話した。
工事現場でシールドマシンの現在位置と深度などを知らせる告知板
<高速横浜環状南線> 横浜市金沢区の横浜横須賀道路の釜利谷ジャンクション(JCT)と戸塚区汲沢町の国道1号を結ぶ延長約8・9キロの自動車専用道路(6車線)。途中、栄区の湘南桂台地区に桂台トンネルを設けるなど全線の7割が地下構造。横浜環状道路の南側区間であるとともに首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の一部を構成。整備中の横浜湘南道路(延長約7・5キロ)と栄区田谷町で接続し、横浜港から東名高速や中央道へのアクセスが向上するとされる。2022年12月時点で完成までの全体事業費は約8千億円と見込まれ、当初の約4倍。開通目標は25年度だったが、シールドマシンの故障による影響などで、現在は未定としている。
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