お客様が静かに離れていく「自分を優秀に見せようとする人」が勘違いしていること

「自分を優秀に見せようとすると、お客様が離れていきます」

そう語るのはアメリカン・エキスプレスの元トップ営業である福島靖さん。世界的ホテルチェーンのリッツ・カールトンを経て、31歳でアメックスの法人営業になるも、当初は成績最下位に。そこで、身につけた営業スキルをすべて捨て、リッツ・カールトンで磨いた目の前の人の記憶に残る技術を実践したことで、わずか1年で紹介数・顧客満足度全国1位になりました。

その福島さんの初の著書が『記憶に残る人になる』です。ガツガツせずに信頼を得る方法が満載で、「人と向き合うすべての仕事に役立つ！」「とても共感した！」「営業が苦手な人に読んでもらいたい！」と話題。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、成果が出始めた頃に抱いた「勘違い」について紹介します。

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人は次第に、自分を偽りだしてしまう　

　よく「失敗できるのは、若手のうちだけ」なんて言われます。弱い姿を見せられるのは、まだ経験の少ない者の特権です。

　僕もアメックス入社当初は「全然アポが取れなくて……」と愚痴をこぼし、「電話でどんなトークをしてるんですか？」と気軽に相談していました。

　ですが月日が経つにつれて弱音を吐けなくなっていきます。そんなことを言ったら「そんなことも知らないんだ」「ダメな奴だな」と思われてしまうからです。

　次第に、

できない自分を隠すようになります。

　僕は自分をよく見せようとアポの数を多めに言ったり、成約確度が低いお客様でも「前向きに検討してくれています」と誇張したりと、嘘を重ねていきました。

周囲の期待がプレッシャーになる

　営業3年目にもなると成績も上がり始め、表彰式でも常連となりましたが、「自分をよく見せたい」という気持ちは変わっていませんでした。

　むしろ「もっと優秀な営業らしくしないと！」と強情になり、より高級なスーツや時計を身につけるなど、優秀に見せる努力をしていました。成果が出てもなお自分の弱みを隠し、「できる人」を演じ続けていたのです。

　そうでもしていなければ、周囲からの期待やプレッシャーのなかでメンタルを保てませんでした。

期待に応えなくてはいけない。

　優秀な営業であり続けなくてはいけない。

　そんな気持ちで心が押しつぶされそうでした。

「優秀でなくては価値がない」

その思い込みがお客様を遠ざける

　営業はとてもやりがいのある仕事です。成績が上がれば褒められるし、給与も上がります。やったらやった分だけ評価してもらえます。

　それは、逆もしかりです。成績が落ちれば誰からも見向きもされなくなります。

　だから、成果を出さなければ存在意義がない、優秀でなければ価値がない、いかなるときも弱みを見せてはいけないと、思い込んでしまいがちです。成長し、成果が出るようになると、今度は「できない自分を見せたくない」という気持ちが自分を苦しめ始めるのです。

　そして、自分を「優秀な人」として偽り始めてしまいます。

　自分の見え方ばかり気にして、姿を偽っている。

　弱さを隠し続けて、自分を偽っている。

　こんな人間が、お客様から信頼されるわけがありません。

　それに、そのままではやがて心が折れてしまいます。

　そうなる前に弱さと向き合い、認めてあげることが大切です。

（本稿は、『記憶に残る人になるートップ営業がやっている本物の信頼を得る12のルール』から一部抜粋した内容です。）

福島 靖（ふくしま・やすし）

「福島靖事務所」代表。経営・営業コンサルティング、事業開発、講演、セミナー等を請け負う。高校時代は友人が一人もおらず、18歳で逃げ出すように上京。居酒屋店員やバーテンダーなどフリーター生活を経て、24歳でザ・リッツ・カールトン東京に入社。31歳でアメリカン・エキスプレス・インターナショナル・インコーポレイテッドに入社し、法人営業を担当。当初は営業成績最下位だったが、お客様の「記憶に残る」ことを目指したことで1年で紹介数、顧客満足度、ともに全国1位に。その後、全営業の上位5％にあたるシニア・セールス・プロフェッショナルになる。38歳で株式会社OpenSkyに入社。40歳で独立し、個人事務所を設立。『記憶に残る人になる』が初の著書となる。