マルチビタミンを毎日摂取しても死亡率は下がらない 研究結果
マルチビタミンを毎日摂取しても死亡率は下がらない 研究結果
マルチビタミンのサプリメントを毎日摂取しても死亡率は下がらないことが、医学誌「米医師会紀要(JAMA)」に26日掲載された論文から明らかになった。
米国立がん研究所が今回行った研究では、年齢中央値61.5歳で、慢性疾患の既往歴がなく全般的に健康な39万人以上の被験者の健康記録を20年以上にわたって追跡した。一般的に、健康的な生活習慣を心掛けている人や疾患を持つ人はマルチビタミンを摂取する機会が多い傾向にあるため、研究ではこれを考慮に入れ、結果に影響を与えないようにした。
それによると、マルチビタミンを毎日摂取していた参加者は、大卒の割合がやや高く、毎日摂取していなかった群より肥満の指標となる体格指数(BMI)が低く、睡眠の質も高かった。他方で、マルチビタミンを毎日摂取している人は、がんや心臓病のほか、脳卒中や動脈瘤(りゅう)などの脳血管疾患による死亡率に差はなかったものの、すべての死因による死亡率が4%高いことも判明した。
研究者らは、食品から栄養を摂取することで、サプリメントでは得られない死亡率改善効果が得られる可能性があると説明。野菜、果物、豆類、穀類は、長寿が顕著な地域の主要な食品だと述べた。さらに、今回の研究の対象者は一般的に健康な成人に限られていたため、栄養欠乏症のような他のグループを対象に含めることや、マルチビタミンの定期的な摂取が加齢に伴う健康状態に与え得る影響を評価するために、さらなる研究を行う必要があると指摘した。
マルチビタミンに健康効果があるという証拠はあるのか?
米国では19歳以上の成人の31%超がマルチビタミンを摂取しているが、同サプリメントの効果についてはこれまで長い間議論の的となってきた。JAMAに過去に掲載された研究では、マルチビタミンを毎日摂取している男性はがんの発症率が8%低く、白内障の発症率も低い傾向があることが明らかになった。
マルチビタミンが高齢者の記憶力を改善することも、複数の研究からわかっている。マルチビタミンは気分障害のある人にも効果がある。医学誌「人間精神薬理学」に発表された研究では、8週間にわたってマルチビタミンを摂取した高齢男性のグループが、偽薬(プラセボ)を投与した群と比較して、抑うつ症状や不安症状が有意に減少したことが示された。
実際に効果のありそうなビタミンは?
マルチビタミンではなく必要なビタミンを個別に摂取することで、何らかの効果が得られるかもしれない。米エール大学医学部は、ビタミンD欠乏症などの患者、特に乳糖不耐症や牛乳アレルギー、脂肪吸収に問題を抱えている場合や皮膚の色が濃くメラニンが多い患者に対し、医師はサプリメントの摂取を推奨していると述べている。ビタミンは妊娠中にも有効だ。非営利医療機関の米メヨクリニックによれば、ビタミンDとカルシウムを含む妊婦用のビタミンを摂取することで、胎児の歯と骨の形成を助けることができるとしている。
マルチビタミンは保健当局に規制されているのか?
米国では、食品医薬品局(FDA)がマルチビタミンやハーブ、ミネラルといった栄養補助食品を規制しているものの、承認しているわけではない。規制の多くは商品が店頭に並んだ後に行われるため、多くの企業はFDAに届け出ることなくマルチビタミンを製造・販売しているのが現状だ。
米市場調査会社グランドビュー・リサーチによると、栄養補助食品産業の昨年の売上は、世界全体で約1775億ドル(約28兆5600億円)に上った。この数字は2024~30年にかけて9%増加すると予想されている。
米予防医療専門委員会(USPSTF)が2021年に行った研究では、マルチビタミンを摂取しても、がんや心臓病の発症率が下がらないことが示された。同研究では、多くのマルチビタミンに含まれている鉄のサプリメントを摂取すると鉄過剰症になりやすく、糖尿病や認知症、心臓病の発症率が高まる恐れがあることも明らかになった。同委員会は翌年、ビタミンやミネラルのサプリメントには「ほとんど有益性がない」と結論付け、心血管疾患やがんの予防を目的としてベータカロチンやビタミンEのサプリメントを摂取しないよう勧告している。
(forbes.com 原文)