「ジョンソン」「オド×ハラ」打ち切りに驚きなし TBSとフジができなかったある程度の我慢
2023年10月からレギュラー放送されていた『ジョンソン』(TBS系)と『オドオド×ハラハラ』(フジテレビ系)が、この秋で終了することが明らかになった。このニュースが出たとき、おそらく私を含むお笑いファンの多くはそれほど驚かなかったのではないだろうか。
お笑い好きの間では、SNSなどを通じて一種の世論が形成されていて、面白い番組の情報などはそこで共有されているような感覚がある。ここ数カ月の間、その中でこの2つの番組が話題にのぼることはほとんどなかった。率直に言って、お笑い好きの間ではずいぶん前から「アツい番組」ではなくなっていたのだ。
どちらも始まったときの期待はそれなりに大きかった。かまいたち、モグライダー、見取り図、ニューヨークがレギュラー出演する『ジョンソン』と、オードリー、ハライチがレギュラー出演する『オドオド×ハラハラ』。どちらも芸人を軸にした本格志向のお笑い番組になるのではないかと思われていた。
『ジョンソン』は、ダウンタウンなどが出演していた『リンカーン』の後継番組と位置づけられていたし、『オドオド×ハラハラ』は今をときめく有名テレビマンの佐久間宣行氏が総合演出・プロデューサーを務めていた。どちらも鳴り物入りで始まった話題の番組だったのだ。
■それなりに話題の番組だった
実際、始まったばかりの頃にはそれなりに話題になっていた。『ジョンソン』の初回放送の企画は、芸人が大勢出演する大運動会だった。『オドオド×ハラハラ』も初期の頃には「芸能人 言わない一言GP」などの大喜利の要素を取り入れたお笑い志向の企画が行われていた。
しかし、どちらも視聴率を取れずに苦戦していたように見受けられた。手を替え品を替え、さまざまな企画が行われるが、どれもなかなか定着しなかった。『ジョンソン』は特番などで放送されない週も多くなってきたし、『オドオド×ハラハラ』は途中で放送時間が1時間繰り下がった。そして、どちらも放送開始1年で力尽きることになった。
一昔前のテレビでは、このような複数の芸人が出演するお笑い番組が人気を博していた。特に、フジテレビには『オレたちひょうきん族』以来の伝統があり、『めちゃ×2イケてるッ!』『はねるのトびら』『ピカルの定理』をはじめとして、数多くの芸人バラエティが放送されてきた。
この手の番組の特徴は、企画よりも出演者ありきで番組が始まっているということだ。クイズ番組ならクイズをやればいいし、料理番組なら料理をやればいい。でも、芸人バラエティでは、集めた芸人たちに何をやらせるのか、というところからスタートすることになる。
企画の大枠が決まっていないので、番組の内容は流動的なものになり、中身がどんどん入れ替わっていく。いろいろな企画を試していって、その中からヒット企画が出るのを待ちながら、試行錯誤を続けることになる。
■番組を育てるのには時間がかかる
つまり、この手の芸人バラエティでは番組を育てるのに時間がかかる。企画が固まっていないので、当たりが出るまでくじを引き続けるしかない。数字が取れなくても、番組の評判が悪くても、ある程度は我慢する期間が必要なのだ。
だが、今のテレビ局にはそんな余裕はないのだろう。TBSもフジテレビも当たりを引くのを待つことができないまま、幕を引くことになった。
オードリーの若林正恭は『オドオド×ハラハラ』が始まったときの取材で「ゴールデンのバラエティーは得意ではない意識はあるんですけど、最後の挑戦にしたいと思っています。これでできなかったらあきらめようかな」と語っていた。
出演する芸人にとっても、テレビ局にとっても、今のテレビで本格的な芸人バラエティを始めることは大きな挑戦である。挑戦を繰り返した結果、『有吉の壁』や『新しいカギ』のように生き残っている番組もある。
ゴールデンタイムやプライムタイムに芸人バラエティをやるのは難しい時代になった。でも、テレビ局が挑戦することをあきらめない限り、芸人バラエティの灯が消えることはないだろう。(お笑い評論家・ラリー遠田)