ドジャースが夏のトレードで狙う「大物」は? ベッツ&山本離脱も補強には“慎重論”も
今年のメジャーリーグもトレード期限(現地7月30日)まで約1カ月となった。
選手の入れ替わりが活発なメジャーリーグだけに今シーズンも大物を含め、大量の選手が移籍するのは間違いないが、大谷翔平が所属するドジャースは動くのだろうか。現状どのような選手が獲得候補になっているのか、現地の報道から探ってみたい。
オフに大型補強を敢行したドジャースは前評判通りの強さを発揮し、ナ・リーグ西地区で2位パドレスに8.5ゲーム差をつけて首位を快走(現地6月26日時点)。早くもポストシーズンへ向けての戦いも視野に入るほどの強さを披露している。
だが、ここに来て“不安要素”も出てきた。
大黒柱のムーキー・ベッツ遊撃手が6月16日の試合で左手に死球を受けて骨折。また、大谷とともに今季からドジャースでプレーする山本由伸も6月15日の登板を右腕の張りで緊急降板した。ともにIL(故障者リスト)入りし、ベッツは6~8週間、山本は7月に復帰の見通しとされているが、いずれの選手も場合によっては離脱が長引くこともあり得るだろう。
とはいえ、巨大戦力を誇るチームなだけに投打の主力として欠かせないベッツと山本が抜けても戦力は揃っている。加えて独走モードに入っていることから、大きな動きに出ることに関しては“慎重論”も少なくない。
野球解説者を務める殿堂入り投手のジョン・スモルツ氏も「ナ・リーグ西地区のいずれかのチームが絶好調にならない限り、ドジャースが地区優勝をするのは間違いないでしょう。なので今は状況を静観して、必要な選手だけ獲れるという状況にある」と語り、「必死に(補強に)動く必要はない」と米『FOXスポーツ』のウェブサイトでコメントしている。
デーブ・ロバーツ監督も投手については「(新たな戦力は)必要ない」と現有戦力で回せるとコメント。また、ブランドン・ゴメスGMもベッツと山本が離脱したがチームのプランに「大きな変化はない」と語っている。
しかし、ポストシーズンは昨年まで11年連続で出場しているものの、ワールドシリーズを制したのはコロナ禍の影響で試合数が大幅に短縮となった2020年のみ。通常のシーズンでの世界一へ向け万全の状態にしておきたいのは間違いなく、現地メディアも“大物”の獲得に動く可能性に言及している。
特に先発陣は先日、長年エースとして活躍し、復帰を目指していた左腕のクレイトン・カーショウが左肩痛を再発してリハビリを中断。さらに、トミー・ジョン手術から復帰したウォーカー・ビューラーも右股関節炎症で離脱している。現状ローテーションで勝ち頭となっているタイラー・グラスノー(8勝5敗)、ジェームズ・パクストン(7勝1敗)も怪我の多い選手と知られ、他にも力のある若手もいるが心もとない印象は否めない。
そこで現地メディアが獲得候補として挙げているのが、ア・リーグ中地区で大苦戦しているホワイトソックスで今季ブレイクを果たした左腕ギャレット・クロシェだ。
今季から先発に転向したクロシェはここまで17試合に先発して、勝利数こそチームの不振もあり6勝(6敗)と伸びていないが、防御率は3.05。奪三振能力も非常に高く、ここまで規定投球に達している投手の中では両リーグトップの奪三振率(12.40)を記録している。調子も5月以降にグッと上げてきており、6月24日のドジャース戦では大谷から2三振を奪うなど快投を見せた。
年齢もまだ25歳になったばかりと若く、順調にいってもFAとなるのは2026年シーズンのオフ。パドレスも興味を示していると報道されており、米スポーツ専門メディア『ブリーチャー・リポート』は今夏のトレード市場で“最も価値のある先発投手”として評価をしている。メジャーリーグ公式サイト『MLB.com』も、今季の市場で「唯一ドジャースの基準を満たせる先発の柱を担える投手」と分析。リーグの勢力図を変えられるだけの力があるだけに、ドジャースが獲れば大きな戦力、パドレスに行けば厄介なライバルになるだろう。
そのほか、野手では昨季38本塁打を放ったルイス・ロバート外野手(ホワイトソックス)、内外野をこなせ、潜在能力は抜群のジャズ・チザム(マーリンズ)、強打の遊撃手であるポール・デヨング(ホワイトソックス)、投手では今シーズン好調を維持する先発左腕のタイラー・アンダーソン(エンゼルス)、33試合で防御率1.59と安定感抜群のリリーフ左腕タナー・スコット(マーリンズ)らが挙がっている。
なお、ドジャースが近年大きく動いたのは3年前のシーズン。その時は通算3度のサイ・ヤング賞を誇るマックス・シャーザー、球宴2度選出のトレイ・ターナー遊撃手をナショナルズから獲得している(見返りとしてプロスペクトのキーバート・ルイーズ捕手、ジョサイア・グレイ投手らを放出)。
現状プロスペクトも多くトレード補強を敢行できる状態ではあるドジャースだが、判断が難しくもある。パドレスら同地区のライバル含め、今後の各チームの動きにも注目したい。