英空母クイーン・エリザベス、NATOの演習から撤退…主力艦船の故障が示すイギリス海軍の混迷

2023年11月3日、イギリスのポーツマス港を出港するイギリス海軍の空母クイーン・エリザベス。

• イギリスの空母に故障が続いており、1隻は2024年2月4日にNATOの演習から撤退した。
• 報告書によると、長年にわたる資金不足によりイギリス海軍は疲弊した状態に陥っているという。
• この事態はイギリスが世界的な脅威に対抗するために海軍力を拡大している中で起こった。

2024年2月4日に起きたイギリスの主力空母クイーンエリザベスの故障は、イギリスが世界の一流海軍に追いつくのにいかに苦戦しているかを示している。

37億ドル（約5500億円）を投じて建造されたイギリス海軍の航空母艦クイーン・エリザベス（HMS Queen Elizabeth）は、プロペラに不具合が発見され、2024年2月4日に冷戦後最大の北大西洋条約機構（NATO）の海軍演習から撤退せざるを得なくなった。

イギリス海軍はX（旧ツイッター）に、「空母の右舷プロペラのシャフト（回転軸）のカップリングに問題があった」と投稿した。

今回のクイーン・エリザベスの演習撤退は、2022年8月に姉妹艦であるプリンス・オブ・ウェールズ（HMS Prince of Wales）が同様のトラブルで故障し、アメリカ海軍との演習から撤退してから1年半後に起こった。

イエメンのフーシ派反乱軍が攻撃しようとしている紅海の船舶を保護するため、イギリスが海軍力を拡大しようとしているときに、この問題が露呈した。また、東アジアにおける中国の侵略や、ロシアとウクライナの戦争で黒海でのロシアの侵略に対しても防衛態勢も整えているところだった。

イギリスのタイムズ紙（The Times）で、元イギリス海軍司令官のトム・シャープ（Tom Sharpe）が、この故障はイギリスが紅海に空母を派遣しなくなることを意味すると語っている。

空母が故障した同じ日、イギリス庶民院の国防委員会は、軍は人員に対する「容赦ない圧力」によって「一貫して過剰な負担」を強いられていると述べた。その報告はいくつかの戦争に対する準備態勢に疑問を呈し、軍の「空洞化」がイギリスの軍事力を弱体化させたと伝えている。

「ホートン卿は、利用できる艦艇の不足を指摘し、さらに、運用できない艦艇の割合が高いことを『非常に憂慮すべき事態だ』と指摘した」 と元イギリス軍統合作戦部長の言葉を引用して報告書で述べている。

イギリス国防省（Ministry of Defence）はこれを受けて、「軍は約束を果たしている」と述べた。

「我が軍は常にイギリスを守り抜く準備ができている。あらゆるNATOの任務への参加、ウクライナへの支援、紅海におけるフーシ派の船舶攻撃への対処など、すべての作戦上の約束を引き続き履行する」と国防省の報道官は述べた。