オーダーカット廃止・値上げ…変化を続ける「いきなり!ステーキ」に愛好家たちの反応 「ごちそう感がなくなった」「面倒くささが解消」様々な声
メニュー改定とともに“オーダーカット”が廃止された「いきなり!ステーキ」
ステーキチェーンの「いきなり!ステーキ」が今年4月、客が注文するグラム数を指定できる“オーダーカット”のシステムを廃止するとともに、一部メニューの値上げを行った。同チェーンの看板とも言えるオーダーカットをやめるという大きな決断だが、“変化を続けるいきなり!ステーキ”を、愛好家たちはどのように感じているのか。
【写真】いきなり!ステーキの「ワイルドステーキ150g」は1390円。「サラダ&スープセット」は追加390円
2013年12月、東京・銀座に第1号店をオープンしたいきなり!ステーキ。当初は立ってステーキを食べる立ち食いスタイルで、客の目の前で希望のグラム数に肉をカットし、それを提供するシステムだった。その後、全国的に店舗数が増加するとともに、座って食べるスタイルの店も増加。ピーク時の2019年ごろには約500店舗にまで拡大、メディアでも多数取り上げられ、一種のブームとなっていった。
しかし、そのブームも過ぎ去り、2024年5月現在の国内店舗数は181店舗にまで減っている。外食チェーンに詳しいライターの小浦大生氏はこう説明する。
「メディアでの盛り上がりに呼応するように新規店舗を次々と展開していったいきなり!ステーキですが、店舗数が増えすぎたことで、チェーン内で競合してしまうケースも少なくなかったようです。また、店舗数の拡大のペースが速すぎたこともあり、人員が足りなくなったり、店員の教育が追いつかなかったりした部分も指摘されています。
個人的な体験ですが、ブームのピーク時のいきなり!ステーキでは、行列に並んでやっと店に通されて注文したのに、なかなか料理が出てこないということもありました。明らかに来店するたくさんのお客さんを捌ききれていない様子で、そういったことも“客離れ”を招いた一因となったのではないでしょうか」
値上げによって目減りした“お得感”
過剰なペースでの出店展開が仇となり、結果的に店舗数を減らしていくこととなったいきなり!ステーキだが、さらに原材料費、エネルギー価格、人件費などの上昇もあり、値上げを余儀なくされてしまう。
「いきなり!ステーキでは、コロナ禍以降、年に1回ほどのペースで値上げをしています。メニューによっては、2013年の開業当初に比べて約2倍ほどの価格になっているものもあり、“割安感”が薄れているのも事実です。いきなり!ステーキの最大の魅力は、“安い価格でステーキを食べられること”でしたが、現状ではそのメリットがそこまで大きく感じられなくなってしまったわけです」(小浦氏)
実際に、かつてはいきなり!ステーキに足繁く通っていたものの、最近はほとんど行かなくなったという“元愛好家”も少なくない。都内に住む会社員のAさん(40代男性)はこう話す。
「2017年から2019年くらいまでは本当によく行っていました。当時は『リブロースステーキ』を頼むことが多くて、価格は300gで2000円程度だったと思います。決して安くはないけど、ボリュームもあるし、満足感は十分。1週間に1回くらいのペースで通っていました。
でも、コロナ禍になったくらいから値上げが続き、お得感が目減りして、徐々に行かなくなりました。あと、いまのいきなり!ステーキは、リブロースステーキよりも安価な『ワイルドステーキ』が看板メニューになっています。個人的にはせっかくステーキを食べるなら、多少は“ごちそう感”がほしいんですが、そういう意味でワイルドステーキは物足りない」
4月のメニュー改定で、「リブロースステーキ」はアメリカ産からオーストラリア産に変更し、価格は150g=1800円、200g=2400円、300g=3600円、400g=4800円(路面・ロードサイド店、以下同)。一方の『ワイルドステーキ』は、150g=1390円、200g=1790円、300g=2390円、450g=3190円だ。
「安い価格帯で提供していたころのいきなり!ステーキを知っているので、いまの価格はどうしても割高に思えてしまう。あらゆるものが値上げしているので仕方ないとしても、やっぱり足が遠のいてしまいます」(Aさん)
“ごちそう感”がなくなってしまった
この4月のメニュー改定では、サーロインステーキが終売となったが、そういったメニューの変化をネガティブに捉える“元愛好家”もいる。神奈川県に住む会社員のBさん(50代男性)は言う。
「いきなり!ステーキというと、リーズナブルなステーキを楽しめるお店というイメージもありますが、個人的には“それなりにいいお肉を安くいただけるお店”という感覚だったんです。だから、ワイルドステーキやリブロースステーキよりも高い『サーロインステーキ』をよく頼んでいました。期間限定で国産肉のステーキなども提供されていて、それを頼むこともありました。
でも、いまのいきなり!ステーキでは、そういった選択肢があまりない。お肉の質としてはそこまで“ごちそう感”がないのに、以前に比べて価格が上がっている。そう思うと、ちょっと残念ですね。高くてもいいから、多少は高級なステーキを食べたいと思ってしまいます」
券売機導入で面倒くささが解消された
オーダーカットの廃止のほか、券売機を導入する店舗が増えるなど、省力化も行っている。グラム数を申告して注文するなど、いきなり!ステーキならではの独自のシステムも注目を集めたが、最近ではそのほかの飲食チェーンに近いものとなっており、だからこそ、利用しやすくなったとの声もある。千葉県に住む会社員のCさん(30代女性)は、最近になっていきなり!ステーキの利用頻度が上がっているという。
「結構前ですが、初めていきなり!ステーキに行ったとき、その店では店内の“カット場”にいって、そこで注文するグラム数を申告するシステムでした。それが分かりづらくて、ちょっとハードルが高いなと感じてしまったことがあります。
結局、それからいきなり!ステーキには全然行ってなかったんですが、オーダーカットではなくなって、券売機も導入されたと聞いて行ってみたら、すごく簡単で利用しやすいなと思いました。それまでの“面倒くさいシステム”というイメージがなくなって、気軽に利用できるお店。いまでは月に1回くらいは通っています」
また“とにかく手軽にステーキを食べたい”というときには、いきなり!ステーキが最適だという声も根強い。埼玉県の自営業Dさん(30代男性)はこう話す。
「“なんとなくステーキが食べたい”というときは、結局いきなり!ステーキがいちばん。値上げしたといっても、専門店などに比べれば安い。テーブルに常備してあるソースや調味料が充実しているのもいい。たとえばファミレスだと、おろしにんにくの追加とかわさびの追加とかできないけど、いきなり!ステーキなら自分好みの調味料を好きなだけ使えますから。
あと、一時期の大ブームだったときは、混んでいて待たされることもありましたが、いまはそんなに混んでいないのもポジティブ要素です。店の前を歩いていて空いているのを見ると、思わずフラッと入ることもあります」
価格やメニュー、システムを変えながら、営業を続けるいきなり!ステーキ。離れてしまったかつての愛好家もいれば、いまのシステムこそを快適に思う愛好家もいる。今後も少しずつ変化しながら、最適解を探していくこととなりそうだ。(了)