へバーデン結節、慢性上咽頭炎、緑内障。意外と身近な「不調」3つ
手の痛みやしびれ、のどの違和感、そして失明のリスクは深刻な問題です。記事では、「へバーデン結節」や「慢性上咽頭炎」、そして「緑内障」という3つの体の不調に焦点を当て、その原因と対処法を医師に3名に教えてもらいました。早めの対処で、健康を守りましょう。
第一関節で起こる痛みやしびれは「へバーデン結節」の可能性が高い
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更年期頃に感じる手の痛みやしびれ…「へバーデン結節」かも?
「ペットボトルのフタをあけるのが大変」「朝、手がこわばってうまく動かせない」…など、この手指の痛みやしびれは「へバーデン結節(けっせつ)」というやっかいな病気である可能性があります。
そこで、今回は日本で初めて「へバーデン結節外来」を開設した富永喜代先生に、今すぐできる対処法を教えてもらいました。
へバーデン結節とは?進行性の病気で5年で手指が変形
更年期に差しかかった女性の多くが悩む身体症状のひとつに、手指の痛みやしびれ、変形があります。しかし、医療機関では「加齢のせいです、なるべく手指を使わないようにしてください」といわれ、ないがしろにされてしまうことも…。
第一関節(指先から1つ目)で起こる痛みやしびれは「へバーデン結節」という手指の病気であることが多く、症状を放置していると、およそ5年でだんだんと手指に節ができたように変形してしまうのです。
はじめのうちは、「ペットボトルのフタが痛くてあけづらい」「力を込めたグーが握れない」「レジ袋の持ち手が手指にくい込んで持てない」の症状。放置しているうちに、手指の第一関節にジンジンとしびれるような違和感が出はじめ、関節にコブ(結節)や、水ぶくれのようなぷっくりとした腫れができることもあります。
そしてひどくなると関節がごつごつと変形して動かしづらくなり、やがてちょっとした刺激でも激痛を感じるようになります。
この手指の痛みやしびれは「へバーデン結節」というやっかいな病気である可能性が高く、症状を放置していると、だんだん手指が変形していってしまいます。しかも、一度変形してしまうと、手術以外の方法で変形を治すことができないのです。
今すぐできる“10秒神経マッサージ”
自宅でも簡単にできるのが、富永先生考案のした“10秒神経マッサージ”。痛む手指そのものに沿って行うため、刺激する場所もわかりやすく、高いマッサージ効果があります。
押す場所は手指の第一関節の横ジワのわきにあるゴリッとした部分。親指か人さし指の爪を立てて、上下1cmの長さを目安に片側ずつ縦方向に10秒間こするようにイタ気持ちいい強さで刺激を与えます。
【ルール1】爪を立てて行う
指の腹ではなく、爪を立てて体表近くにある「神経ポイント」を直接刺激します。爪が長い人は、強く押すことで皮膚を傷つけないように注意してください。
【ルール2】イタ気持ちいい強さで
ほどよい圧をかけて、刺激を脳に送ることが重要です。「どちらかといえば痛いけれど、気持ちよさも感じる」ほどの強さをキープすること。また、神経ポイントへの刺激でないと効果がないため、確実に位置を捉えましょう。
【ルール3】10秒を守る
長すぎると過剰な刺激となって、かえって体を緊張させてしまうこともあります。刺激する時間は長すぎず、短すぎず1か所10秒を守り、朝と夜の1日2回行うようにしてください。
【NGポイント】両側から一度に刺激しない
指の関節の両側に行いますが、指を挟み込むようにして一度に両側を刺激するのはNG。左右いっぺんに行っても効果的に刺激を与えることができないため、片側10秒ずつ順番に行うのがコツです。
へバーデン結節は進行性の病気なので、変形し始める前の予防がなにより重要になります。日頃からこのマッサージをすることで、指先の痛みやしびれをやわらげましょう。
その不調、「慢性上咽頭炎」が原因かも?
もしかしたらその不調…「慢性上咽頭炎」が原因かも…?(『その不調の原因は慢性上咽頭炎にあった』(扶桑社刊より、以下同)
頭痛、後鼻漏、アトピー、肩こり、めまい、掌蹠膿疱症、潰瘍性大腸炎、咳ぜんそく、月経異常…。一見、関連がない症状にみえますが、じつは大元の原因は「慢性上咽頭炎(まんせいじょういんとうえん)」にあるかもしれません。
今回は、慢性上咽頭炎治療の第一人者であり、4000人以上の患者さんを診てきた医師・堀田修先生に慢性上咽頭炎と、セルフケア「かにゆで体操」を教えてもらいました。
「上咽頭」は、異物と接する最初の場所
上咽頭とは鼻の奥にあり、鼻から吸い込まれた空気中のホコリやダニ、細菌やウイルスといった、“異物”を入れないための「関所」の役割をしています。
アーンと口をあけた奥が「中咽頭」、その上の口蓋垂(のどちんこ)の裏側あたりが「上咽頭」です。そこに慢性的な炎症が起きた状態を「慢性上咽頭炎」と呼び、冒頭で挙げたような症状を引き起こしてしまうのです。
まずは、下記のチェックリストをお試しください。
<チェックリスト>
- 朝起きると、のどがイガイガする、痰がからむ
- 鼻水がのどを流れ落ちてくる
- 咳がいつまでも続いている
- 疲れ、頭痛、肩こりがとれない
- しょっちゅう風邪をひく
- 口を閉じると、あごに梅干しのようなしわができる
- 唇がいつも乾燥している
- 耳の下(胸鎖乳突筋)を触ると痛みがある
- 睡眠中、いびきや歯ぎしりがある
- すっぱいものがこみ上げることがある
- 舌の側面に歯形がついている
- 煙草を吸っている
2つ以上当てはまる場合は、慢性上咽頭炎の可能性があります。
口呼吸を予防する「かにゆで体操」
慢性上咽頭炎には現在、処方できる薬はありません。治療するには、医療機関で有効な治療法「EAT」(イート・上咽頭擦過療法)を受けるのがベストですが、痛みを伴うことや、正しい知識を持つ医師でないと行えないという側面もあります。
そこで、慢性上咽頭炎を予防し、症状の悪化を防ぐのにおすすめのセルフケア、「かにゆで体操」を紹介します。
体操
立ったまま「かにゆで」と発声
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(1)<か>舌先を上あごに当てるようにする
(2)<に>口角を左右に思い切り広げる
(3)<ゆ>唇の先を突き出す
(4)<で>下あごを上にあげ、舌をとがらせてまっすぐ上に向かって突き出す
下あごや頬のたるみの改善効果も期待できますよ。
「かにゆで体操」は口の周りの筋肉(口輪筋)をやわらかくして、舌の位置を正常化し、自然と鼻呼吸を促します。口呼吸は慢性上咽頭炎の一因となるので、普段から鼻呼吸を意識することが大切です。
緑内障は気がつかないうちに進行する
日本の失明原因の1位にもなっている「緑内障」。緑内障というと高齢者がかかるものと思われがちですが、じつは40~50代でも十分に注意が必要。
緑内障専門医である真鍋眼科・真鍋婦人科院長の真鍋佑介先生が緑内障の病状、悪化の原因となる眼圧が高くならない対処法を教えてくれました。
「緑内障」はどんな病気?
『専門名医が教える!緑内障に効くたった2つの習慣』(扶桑社刊)より
「緑内障」は目の視神経に障害が起き、無治療のままでいると視野が狭くなっていってしまい、最終的には失明してしまう病気。
「緑内障は気づかぬうちに視野欠損が進行する病気で、『見えづらい』という自覚症状を覚えるのは、末期になってからです。
似たような病名に「白内障」がありますが、病気としてはまったく別物です。白内障は水晶体というレンズが白く濁る加齢現象によって起こることがほとんどで、手術によって回復することが可能な疾患です。
対して緑内障は、目の奥の視神経がダメージを受ける神経の疾患なので、現在のところは回復できないのです。国内の緑内障患者が治療を続けていくうちに失明する確率は、片眼失明の場合10年で5.8%、20年で9.9%、両眼失明では10年で0.3%、20年で1.4%程度といわれています」(真鍋先生、以下同じ)
『専門名医が教える!緑内障に効くたった2つの習慣』(扶桑社刊)より
「緑内障の危険度チェックシート」を確認して1つでもチェックがあったら、眼科検診を受けるようにしましょう。
寝るときは「仰向け+枕」で眼圧が高くならない工夫を
健康診断で検査するくらいで、普段あまり意識していない人が多い「眼圧」。しかし、眼圧の高い、低いが、緑内障と関係があります。
「眼圧は1日の中でも6mmHgほど変動するといい、就寝前~朝が高くて、夕方に低くなることが知られています。この眼圧の変動幅が大きいほど、視野障害が進行しやすいことも報告されています。視野障害が進行していくと、それが緑内障になる原因になります」
でも、なぜ夜に眼圧が高くなるのでしょうか?
「それは体位(頭の位置)と関係があります。眼圧は重力の影響を受けますので、座っているときや立っているときの眼圧がいちばん低いのです。そして、少しずつ体を傾けて頭が下になっていくと、眼圧は上昇していきます。つまり、寝ているときは眼圧が上がるのです」
それでは、寝ているときに眼圧を上昇するのをなるべく避けるには、どうしたらいいのでしょうか。
「仰向けで寝て頭の位置を高くするといいです。枕をして寝ると少し角度がつくので眼圧は上がりにくくなります。無理に高い枕をする必要はありませんが、低い枕よりは少し高めの枕がいいかもしれません。仰向けで寝やすいようにオーダーメイドで枕をつくることもできますので、自分に合う枕をつくるのもおすすめです」