中国の「領海」侵入で外国人を最長60日拘束可能に…フィリピンなど周辺国で警戒強まる
【北京=吉永亜希子、ハノイ=安田信介】中国政府は15日、中国が主張する管轄海域に侵入した外国人を海警局が最長60日拘束できる新たな規定を施行する。南シナ海を巡って領有権を争うフィリピンなど周辺国では、中国の一方的な領有権の主張に基づいて漁民や資源開発の関係者が拘束される恐れがあるとして警戒感が高まっている。
新たな規定は、沖縄県石垣市の尖閣諸島周辺や、比などと領有権を争う南シナ海の海域に適用されるとみられる。「管轄海域」の範囲は海警局の権限を定めた「海警法」にも明示されておらず、国連海洋法条約で認められた領海や排他的経済水域(EEZ)よりも広い範囲に「権限」を主張する可能性が指摘されている。
南シナ海では、比側が実効支配するアユンギン礁(中国名・仁愛礁)で中国船が比船に放水や衝突を繰り返している。比メディアによると、首都マニラ近郊の中国領事館前に11日、活動家ら数百人が集まり、中国の挑発行為に抗議した。
フィリピン側の関係者が拘束されると、両国の緊張はさらに高まる可能性がある。ただ、中国政府の内情に詳しい関係者によると、領有権を巡って対立がある海域では身柄を拘束せず、強制退去させるなどの措置が取られる方向という。
それでも、フィリピン大のジェイ・バトンバカル教授(海洋法)は、新たな規定について「中国の領海を超えた海域に自国の規則を不法に押しつける試みだ」と指摘。自国海域だと誇示するため、実際に拘束する可能性があると懸念した。