発達障害グレーゾーン、子どもが特別支援学級に入る基準は? 親の悩みに専門家が回答
発達障害またはグレーゾーンの子の学校生活において、どの程度の支援が必要になってくるのか、親としては気になるところです。支援級や中学校の進路について、臨床発達心理士の吉野加容子さん、埼玉学園大学教授の藤枝静暁先生が読者の悩みに答えてくれました。子育て情報誌「AERA with Kids」から紹介します。
■支援級(特別支援学級)に入る基準は?
学校の先生から生活面でできないこと、ついていけないことについて指摘を受けますが、具体的なアドバイスはなく、親の私もどう対処したらいいのかわかりません。診断は受けましたが、グレーゾーンでした。学校側は支援級に入ることをすすめるわけでもなく、「希望すれば入れるかも」というスタンス。支援級に通う目安があれば教えてください。 (小4女子の母)
支援級の支援内容や方針をしっかり確認して
学習面で困りごとがあるなら、支援級を考えたほうがいいですが、生活・行動面での困りごとなら、迷う気持ちもわかります。子どもが通っている学校の支援級の中身が教科学習をどのくらいしっかりやるのか、交流級はどのくらいあるのか、確認されたほうがいいと思います。
後者だとグレーゾーンの子には少々もの足りなく感じるかもしれません。通常級に戻す前提の支援級もあります。見学する際には、わが子と発達レベルは似ているか、なじめそうか見ましょう。環境が変わるのが嫌な子が多いので、子どもにどうしたいか聞く際には慎重に。(吉野さん)
学校にどんな支援をしてほしいのかまずは親子で相談する
学校での授業や生活で困っていることはないのか、学校側に求めるサポートはあるのか、親子で話しておくことが大切。学習面で困っているなら個別に対応してくれる支援級も選択肢に入れて、学校に相談してみましょう。
通常級と支援級ではやる量やスピードが異なります。現在の通常級で「自分だけプリントが終わらない」などの恥ずかしさを抱えている場合、支援級を見て「これならできそう」と思えることもあります。支援級の見学や体験をしてから決めるのがオススメ。年齢的にも本人の気持ちや自尊心に配慮しながら進めていきましょう。(藤枝先生)
■中学校の進路は?
グレーゾーンの子の進学先に悩んでいます。学力にものすごい遅れがあるわけではないですが、理解するのに時間がかかるタイプです。小学校と比べてサポート体制も心配です。グレーゾーンで勉強が苦手な子の進学先について、どのように考えていけばいいのでしょうか。(小6女子の母)
公立なら学校の規模を、私立なら環境や校風も本人に合うか確認
進学先を心配する声をよく聞きます。まず、公立の中学校で学区外も選択できる場合、学校の規模を見たほうがいいでしょう。マンモス校だと先生同士の連携が取りづらくなる傾向があるので、選べるなら小規模のほうがいいでしょう。
次に、私立の中学校も選択肢に入れる場合、学校の規模以外に校舎などの環境、校風がポイントになります。例えば、エアコン完備で夏のイライラを減らせるか、制服の素材がチクチクしないか、自学重視で考えを尊重してくれるか、宗教行事があれば音はどんな感じか、など。本人の特性に合った環境を選びましょう。(吉野さん)
中学校ではこまやかなサポートが減る 気になることは入学後すぐ面談を
学力に顕著な遅れがないとのこと、通常級に進む前提でお答えしますね。子どもの成長に合わせ、幼稚園・保育園から小学校、小学校から中学校の2ステップで支援は減ります。小学校では一人の先生が担任だったのに対して、中学校では教科担任になり、どうしても目が行き届きにくくなりがちです。部活や生活指導などで先生が小学校のときよりも厳しく思える場合もあります。
学校間で伝達事項が直接あったとしても、気になることがあれば入学後に面談をして担任の先生に伝えておいたほうが安心です。また、自治体によってサポート体制が異なるため、あらかじめ確認しておきましょう。(藤枝先生)
(取材・文/AERA with Kids 編集部)
〇藤枝静暁/埼玉学園大学人間学部心理学科 教授。博士(心理学)、公認心理師、臨床心理士、学校心理士。専門は教育心理学、発達心理学。公立小中学校、適応指導教室などの教育現場を経験。幼稚園での子育て相談にものっている。近著に『心理学でよくわかる友だち関係 あの子のきもち わたしのきもち』(高橋書店)ほか著書多数。
〇吉野加容子/臨床発達心理士。発達科学コミュニケーション代表。発達支援プログラム「発達科学コミュニケーション」を開発。発達に悩む多くの親子を支援。著書に『発達障害・グレーゾーンの育てにくい子が3ヶ月で変わる 非常識なおうち発達支援』(パステル出版)や『【発達障害とグレーゾーン】子どもの未来を変えるお母さんの教室』(青春出版社)など。