息子への偏見の言葉。葛藤する母の「願い」とは? 自閉スペクトラム症の息子と家族の愛を描いたマンガ
まゆんさんは、看護師でありシングルマザー。自閉スペクトラム症があり特別支援学級に在籍する小学6年生の息子・太郎くんの子育てに奮闘しています。まゆんさんと太郎くんが、さまざまな出来事を一緒に乗り越えていく姿を漫画『自閉スペクトラム症の太郎とやさしい世界』で紹介。まゆんさん一家の何気ない日常には、愛や優しさであふれ、共感できるエピソードがたくさんあります。本稿のテーマは太郎くんに投げられた心ない言葉。当時のまゆんさんの気持ちを訊いてみました。
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心無い言葉の真意を理解できない様子に胸が苦しくなった
――この話を聞いたとき、まゆんさんはどのような感情を抱きましたか?
まゆんさん(以下、まゆん) 太郎はいつもとまったく変わらず、楽しげに食事をしていました。一方で私の心の中は怒りが湧きました。ダメとは分かっていますが、正直に言うと、相手に同じことを言ってどんな気持ちになるか伝えたいと思いました。しかし、そういうことをしても何も解決しないことは人生経験の中でわかってること。特別支援級を選んだ時点で、今回のようなことが起こることは自分の中では想定内でもあったので、冷静に対応できたのかと思います。(できてたのかな...?)
――太郎くん本人も傷ついていましたか?
まゆん 太郎本人は「顔が変」を言葉通りに解釈したようで、帰ってくるなり鏡で自分の顔を凝視していました。この時の太郎はまだ「特別支援級」や「顔が変」の意味を理解できていなかったのではと思います。報告されたときも「どういうこと?」みたいな表情で、太郎自身は感情も何もクエスチョンのみでした...。そういうこともあって、私は余計に胸が苦しくなったんです。
普段は"愛されキャラ"で楽しく過ごしている太郎くん
――その後、太郎くんから同じような体験の報告はありましたか?
まゆん それ以降、太郎から似たような体験の報告はなく、学校の先生方からも周りとのトラブルがあったという話も聞きません。実際はあるのかもしれませんが、目に見える範囲や報告だけで言えば、似たような体験はせずにすんでいるように思えます。
――お家以外での太郎くんはどんな様子なのでしょうか?
まゆん 学校や放課後のデイサービスからの報告でも「太郎ちゃんは愛されキャラ」「周りの人達も温かい」と言ってもらえています。親としてはうれしく思うようなことの方が多いんです。周囲の温かさを感じることもよくあります。
一瞬の感情のためだけに「顔が変」という偏見にあふれた言葉を投げた上級生。一方でその言葉を投げられた側は、怒りと絶望的な現実の間で苦しむことになります。このような不条理を意識することが、偏見のない優しい世界への第一歩かもしれませんね。