岡田監督とコーチ陣の“信頼関係”は大丈夫なのだろうか…不振を打開できない打撃コーチ、本塁突入を躊躇する三塁コーチ、ついに投手コーチまで『やり玉』に
岡田監督
◇コラム「田所龍一の岡田監督『アレやコレ』」
イヤーな負けである。30日のヤクルト戦(神宮)、阪神は5-1のリードを守れず、8回に5点を取られての逆転負け。貯金はなくなり4位に転落だ。試合後の岡田監督の怒りは爆発した。
「信じられへんわ。ゲラ行くぞ―いうたら、漆原しか投げてません―やて。なんで準備させてへんの。ほんま、信じられへん」
“魔の8回”を返ってみる。この回、3番手で投げていた桐敷が2死一、二塁から村上に中前タイムリーを打たれ5-2。なおも一、二塁で打者はサンタナ。ここで岡田監督は「ゲラ行くで」と投手コーチに指示。ところが、ブルペンでは「漆原しか投げてません」という。
「なんで準備せぇへんのやろなぁ。ゲームなんか何が起こるか分かれへんやん。あの場面で漆原も酷やで」
心配通り漆原はサンタナに四球を与えて満塁とすると、続く長岡に走者一掃の二塁打を浴びて5-5。そして急きょ、マウンドに上がった岩崎が代打・山田に決勝の左前タイムリーを打たれてまさかの逆転劇。
それでも阪神は9回2死から意地を見せた。前川が四球で出塁すると続く佐藤輝が左翼へ二塁打。代走の植田が一気にホームを突く。だが、ヤクルトの見事な中継プレーに本塁タッチアウト。
「負けてんねやで、信じられんわ! 何でも行け―やないやろ。状況判断やんか、当たり前やろ。こんな狭い球場やねんから。ビックリしたわ。先攻で1点負けてて、二塁、三塁でええんちゃう? 次はきょう2本タイムリー打ってるバッター(梅野)やで」
ここしばらく岡田監督の「怒り」はいつもコーチ陣に向けられていた。今季の打撃不振を打開できない打撃コーチ。本塁突入を躊躇する三塁ベースコーチ。そしてこの日、ついに投手コーチまでやり玉にあがった。岡田監督とコーチ陣の“信頼関係”は大丈夫なのだろうか…。
その昔、星野監督は打線が打てなくなると「お前は何を教えとるんじゃい!」とベンチで田淵ヘッドコーチを怒鳴り、お尻を蹴り上げた。その怒りの凄さに選手たちは震えあがったという。阪神退団後、田淵氏に「腹が立たなかったの?」と尋ねると田淵氏はこう答えた。
「怒鳴られ蹴られるのがボクの仕事。口には出さなかったけれど、『ブチ、いつもすまないな…』という仙ちゃんの気持ちは伝わってきたよ」
岡田監督とコーチ陣の関係もそうであってほしい。
▼田所龍一(たどころ・りゅういち) 1956(昭和31)年3月6日生まれ、大阪府池田市出身の68歳。大阪芸術大学芸術学部文芸学科卒。79年にサンケイスポーツ入社。同年12月から虎番記者に。85年の「日本一」など10年にわたって担当。その後、産経新聞社運動部長、京都、中部総局長など歴任。産経新聞夕刊で『虎番疾風録』『勇者の物語』『小林繁伝』を執筆。