ギャンブル依存で借金まみれの毒親育ち「母みたいになりたくない」と思っていた私が200万円の借金を抱えるまで
Photo by Ryosuke Kamba
西村ゆかさんの著書『転んで起きて 毒親 夫婦 お金 仕事 夢 の答え』(徳間書店)が反響を呼んでいる。ギャンブル依存で借金漬けの両親、摂食障害の過去、そして夫・ひろゆきさんとの生活など、七転び八起きの半生を赤裸々に綴った自伝的エッセイだ。インタビューの第2回は「母親のようにはなりたくない」と思いながら、自らも200万円の借金を抱えてしまった20代を振り返る。(聞き手/ダイヤモンド・ライフ編集部副編集長 神庭亮介)
母親の金銭トラブルで親族がギスギス
――著書『転んで起きて』によれば、お母さんはギャンブル依存で金銭トラブルが絶えず、親族の間で孤立していた。男性関係にもだらしなかったそうですね。子ども心に何が一番つらかったですか。
お金というよりも、お金を介して家族の争いの板挟みにされたことが、自分のなかでは一番しんどかったですね。
みんな私には優しかったんですよ。母も私には優しいし、伯父さん・伯母さんも、祖父母も私には良くしてくるし、愛してくれる。
だけど、どうやらウチの家族は仲良くないらしい。その違和感にすごく心がモヤモヤしました。
「誰かがお母さんのことを悪く言ってた」とか「お母さんは伯母さんを悪く言ってた」とか。子どもって、全部そのまま受け取っちゃう。そういう言葉を真に受けて、傷ついて。
自分が原因じゃないところで家族がモメていて、その怒りの矛先が少し自分にぶつかって……みたいなことも子どもの頃はつらかったです。
母に摂食障害を告白したら…
西村ゆか『 転んで起きて 毒親 夫婦 お金 仕事 夢 の答え 』(徳間書店)
――お母さんのギャンブル依存についてはどう感じていたのでしょうか。
母親がギャンブル依存症ということは、25、26歳になるまで知りませんでした。
当時、私は摂食障害で、人間関係がうまくいかないとか、何かあると食べ物を大量に買い込んでいたんです。食べて、吐いて、スカッとして……。そうやって、ネガティブな状態を一時的にやり過ごしていました。
そのことを母親に伝えた時に、「自分も実はギャンブル依存症だった」と言われたんです。「私も大変なのよ」みたいな感じで。その時初めて、なんでウチにずっとお金がなかったのか合点がいきました。
――本には借金を無心してくるお母さんに反発を抱く様子が描かれています。ところが、ゆかさん自身も社会人になってすぐ、200万円もの借金を抱えてしまったそうですね。
私、金銭感覚に関しては絶対に母親みたいになりたくなくて。小さい額ですけど、社会人になる前から定期預金や積立預金をしていたんです。社会人になってからも、会社の持株会や投資信託みたいなものに地道に積立をしていました。
「母親みたいにはならないぞ」と思っていたのですが……。ストレスで摂食障害が悪化して、食費だけで月に15万円、20万円とかかるようになってしまいました。
加えて、嫌なことがあった時に服を衝動買いしたりもしていたので、気がついたら借金が200万円近くに膨らんでいました。
母親を反面教師にするつもりが、気が付けば自分も借金まみれ。母親と何も変わらないじゃないか、と思いました。
ドツボにハマって「200万円」借金生活
西村ゆか(にしむら・ゆか) 1978年、東京都生まれ。Webディレクター。インターキュー株式会社(現GMOインターネット株式会社)、ヤフー株式会社を経て独立。現在はフランス在住。著書に『転んで起きて 毒親 夫婦 お金 仕事 夢 の答え』や『だんな様はひろゆき』(原作・西村ゆか/漫画・wako)がある。
――社会人なりたてで200万円はなかなかの金額ですね。
消費者金融のカードをつくったり、丸井のカードでキャッシングしたり。そういうものの利子がすごく高いことも意識しないで借りていて。ひろゆき君にしゃべったら、「あ、バカがいる」みたいな目で私のことを見てましたけど。
本当にそういうことも全然考えてなかった。お給料はそこそこもらっていたので、月々の支払いはできるけど、借金は一生減らない。むしろ徐々に増えていく。ドツボにハマっていました。
――そこから、どうやって抜け出したのですか?
伯父さんに相談して、全部正直に話しました。伯父は「自分たちが立て替えてあげるから。月何万円って決めて、毎月ちゃんと返してくれればいいからね」と言ってくれました。
実は借金をつくりつつ、貯蓄もしていたので、借金と同じくらいの貯金がありました。それを全部崩せば即座にチャラにできたんですけど、伯父は「自分で貯めたものだから崩さなくていい。貯金はそのまま持っていなさい」と。
それで、私は伯父から150万円、祖母から50万円借りる形で200万円の借金を一括返済して。伯父と祖母に毎月10万円ずつ返していきました。
大体2年近くかけて全部返し終えた時に、祖母が「おばあちゃん、なでてあげる」って頭をなでてくれました。
「この人が本当のお父さんだったら」
Photo by Ryosuke Kamba
――伯父さん、素敵な方ですね。
この人が本当のお父さんだったら……と今でも思っているくらい大好きな伯父です。身内といっても、まったく血のつながりもないんですけど。
◇◇◇
伯父は私に、支援の代償としてなにかを要求することは一度もなかった。母や父から学費がないと言われ、大学受験をあきらめたときも、伯父が学費を出してくれると言ってくれた。
「大学に行かなくても、ちゃんと就職できるような方法を探す」と言う私に、「就職するためだけに大学に行くんじゃないんだよ。大学生という4年間で、勉強したり、友達と遊んだりしながら、将来どんな道に進みたいのか、どんなことが好きなのかを考える時間をゆかにあげたいんだ」と伯父は言った。
「そこまでしてもらうのは悪い」と私が言うと、伯父はこう言った。
「ゆかは、いてくれるだけでいいんだよ」
母も、父も、祖母も、伯母も、血のつながりのある人が誰も言ってくれなかったそのひと言を、いちばんつながりが遠いはずの伯父が言ってくれたのだ。
(『転んで起きて 毒親 夫婦 お金 仕事 夢 の答え』より)
◇◇◇
――「いてくれるだけでいいんだよ」という言葉は、機能不全の家庭で育ったゆかさんが一番求めていたものだったのでは。
そうですね。言われた時は衝撃でした。祖父や祖母も思っていてくれたのかもしれないんですけど、口に出して言われたことはなかったので。
「○○な自分だから許してくれる」とかではなくて、ただいるだけでいいの? そんなんでいいんですか?みたいな感じで、めちゃめちゃ衝撃的でしたね。
ひろゆきさん&西村ゆかさんの結婚式の様子(本人提供)
ラブラブなツーショット(本人提供)