欧州で野生イノシシから「法定許容量の5倍」の有害PFASが検出
欧州で野生イノシシから「法定許容量の5倍」の有害PFASが検出
欧州のイノシシ(学名:Sus scrofa)に、EU法で食用肉に許容されている量の5倍近い、有害なPFAS(有機フッ素化合物)が含まれていることが研究で明らかになった。このEUの規制は2023年に導入され、野菜、魚類、および肉類に含まれるPFASの濃度を監視している。狩猟肉も規制の対象であり、狩猟肉の内臓には最も高い濃度が許されている。
イノシシ肉の人気はEU内でも地域によって異なる。ドイツ、イタリア、およびフランスの人々が一般的に食べているほか、スペインや東欧の国々でも食べられている。
PFASは、ほぼ分解されないことから「永遠の化学物質」として知られている、1万2000種類以上の有機フッ素化合物の総称だ。住居、オフィス、衣服から食べ物にいたるまでほぼあらゆる場所に存在する。これらの人工の化学物質は極めて微量(濃度千兆分の1)でも有毒であり、がん、生殖能力問題、肝臓障害を含め人体の健康に重大なリスクをもたらす。
この最新研究は、チェコ共和国のボヘミアンフォレスト国立公園に住むイノシシを対象として実施された。ドイツ国境に接しバイエルンの森国立公園に近いその公園は、1963年以来保護区に指定されている。約400匹のイノシシの居住地であり、その個体数が毎年管理されていることから、研究者向けに肝臓の試料が提供されている。
イノシシ、特にその肝臓がこのPFAS研究の対象に選ばれたのは、環境におけるPFASのバックグラウンド濃度を表す優れた「生物指標(バイオインジケーター)」だからだ。これは、イノシシが食べ物を探して地面を掘り起こし、見つけたものは植物や動物、さらにはPFASの主要供給源である土壌まで、ほぼ何でも食べるためだ。
本研究では、イノシシの肝臓29個を30種類のPFASについて検査した。肝臓(PFASのような物質が生物濃縮されている)から検出された濃度の中央値は、1キログラム当たり230マイクログラムで、EU法において狩猟肉の内臓に許容されている最大濃度の5倍近い値だった。
「同国立公園に住むイノシシにおけるこのような汚染濃度は、懸念の原因になります」と本研究の共同筆頭著者で、現在ジェイムズ・ハットン研究所で博士研究員を務める分析生化学者のビクトリア・ミュラーは言った。ミュラーはグラーツ大学の大学院生だった時にこの研究を始めた。
「今やPFASはどこにでもありますが、濃度が食品中の人体摂取許容量を超えていること、そしてイノシシの肉と内臓が人間によって消費されていることを踏まえると懸念すべきことです」とミュラーは説明した。
ドイツ北東部の農村地帯に住むイノシシから採取された別の体内組織を調べた過去の複数の研究と比べて、ボヘミアンフォレスト国立公園のイノシシは2倍のPFASを含んでいた。しかし、なぜこのイノシシたちはそれほど濃厚に汚染されたのだろうか?
「同公園内の濃度が高かった理由を正確に突き止めるにはより大規模な研究が必要です」とミュラーは答えた。
「同公園で見つかったタイプのPFASのプロファイルは、一般的な『バックグラウンドレベル』のものと一致していることから、大気降下、たとえば雨や風によるものであることが示唆されます。しかし、私たちが発見した濃度の高さは、より深い調査が必要であることを示しています」
出典:Till Schröder, Viktoria Müller, Marc Preihs, Jan Borovička, Raquel Gonzalez de Vega, Andrew Kindness, and Jörg Feldmann (2024). Fluorine mass balance analysis in wild boar organs from the Bohemian Forest National Park, Science of The Total Environment 922:171187 | doi:10.1016/j.scitotenv.2024.171187
(forbes.com 原文)